『R1250GS』と『R1250RT』にBMWの量産二輪車として初採用された最新技術とは?
アドベンチャーの『R1250GS』とグランドツアラーの『R1250RT』ともに基本的なエンジン構成に変更はない。従来どおりの空水冷式4ストDOHC水平対向2気筒だが、排気量を1169ccから85ccアップして1254ccとし、モデル名の数字を超えることとなった。
しかし、注目してほしいのは、排気量アップによって「R1250シリーズ」となったことではない。むしろ新型ボクサーエンジンに投入されたBMWの最新テクノロジーだ。
二輪業界では昨年10月から11月にかけて、インターモトショー、ミラノショーとビッグイベントが続き、世界の各メーカーからニューモデルが一気に登場した。BMWもミラノで200馬力超えのスーパースポーツ、新型『S1000RR』を発表しているのだが、『R1250GS』と『R1250RT』の2モデルは、このスーパースポーツに搭載される新テクノロジー「BMW ShiftCam(シフトカム)」をBMWの量産二輪車として初めて採用しているのだ。
BMWシフトカムによってライダーがその違いを体感できるほど最高出力が大幅に向上
シフトカムと名付けられたこのシステムは、エンジン内の吸気バルブのタイミングと吸気量を可変制御することで、より効率的に駆動力を発生するテクノロジーだ。アクセルの開け具合やエンジン回転数が5000rpmになったことを境にシフトカムが作動し、低速側と高速側のいずれかのカムへと切り替わるというものだ。環境規制に対応したエンジンのように思えるが、排気量アップもあり、最大出力・最大トルクともに増すことになった。
現行モデルの『R1200GSアドベンチャー』と比較すると、『アドベンチャー』が最高出力92kW(125ps)/7750rpm、最大トルク125Nm/6500rpmであるのに対し、新型『R1250GS』は最高出力が100kW(136ps)/7750rpm、最大トルクは143Nm/6250rpmと、ライダーがその違いを体感できるほど大幅に向上している。
それでいて、燃費は最大4%向上しているというから驚きである。さらに、燃料品質の安定しない国や地域でも、ノッキングセンサーによって燃料噴射や点火タイミングを最適化してくれるので、世界中のどこを旅しても心配なく走り続けることができそうだ。
カムシャフトの駆動も従来のローラー・チェーンからサイレント・チェーンに変更し、静粛性が高められ、オイル供給システムの最適化もはかられている。ほかにも、ツイン・ジェット・インジェクター、官能的なサウンドを実現する新型エキゾーストシステムの採用など、改良点は多岐にわたる。まさにボクサー史上最強最速のエンジンとなっているのだ。
6.5インチのTFTカラー液晶ディスプレイを採用し、日本仕様はETC 2.0も標準装備
装備面もアップデートが施されている。メーターパネルは、『R1250GS』では6.5インチのTFTカラー液晶ディスプレイを採用。速度、回転数、ナビ、そのほかの車輌情報を表示する。天候や条件によって明るさや色を自動調整してくれる機能付きだ。
『R1250RT』はアナログメーターの上に5.7インチのTFTカラー液晶ディスプレイを配置。もちろんほかのBMWモデルと同様に、両車とも日本仕様はETC 2.0を標準装備している。また、いずれもLEDヘッドライト、トラクションを最適化して高い走行安全性を確保するダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)、坂道発進時にライダーを支援するヒル・スタート・コントロール(HSC)などを標準装備するという。
走行モードは、『R1250GS』が「ロード」「レイン」「ダイナミック」「エンデューロ」、『R1250RT』は「ロード」「レイン」「ダイナミック」という仕様になっている。
価格は『R1250GS』が251万円から。休日やバカンスが待ち遠しくなるオートバイ
カラーは、『R1250GS』が「ブラックストームメタリック」「コスミックブルーメタリック」「モータースポーツカラー」「ブラックストームメタリック×ナイトブラックマット」の4色を展開。『R1250RT』は、「カーボンブラックメタリック」「マーズレッドメタリック×ダークスレートメタリックマット」「アルパインホワイト」「ブループラネットメタリック」「スパークリングストームメタリック」の5色をラインアップする。
価格は『R1250GS』が251万円、『R1250RT』が284万9000円(いずれも税込み)。すでに2モデルとも日本へ上陸しており、昨年12月22日から発売中だ。新たに搭載されたテクノロジー「BMWシフトカム」により、オフロードはもちろん、ワインディングロードやフリーウェイで、これまで以上の“駆け抜ける歓び”をライダーに与えてくれることになった。休日やバカンスが待ち遠しくなる、そんなバイクはなかなか見当たらない。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)