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第61回 | 大人ライダー向けのバイク

生まれ変わったボクサーエンジン──BMW R1250 GS/RT

BMWモトラッドのRシリーズは、BMWが初めて作ったオートバイである『R32』を祖とする息の長いモデルだ。パワーユニットは伝統のボクサーエンジン(水平対向2気筒)。しかし、2019年モデルの『R1250GS』と『R1250RT』は、スタイリングはほぼ変わらないものの、排気量を1250ccへ拡大し、大幅に改良された新しいボクサーエンジンを搭載する。このパワーユニットはいずれ、2019年以前と以降のモデルなどに区分されるようになるのだろう。それほどインパクトのある新型エンジンとなっているのだ。

『R1250GS』と『R1250RT』にBMWの量産二輪車として初採用された最新技術とは?

アドベンチャーの『R1250GS』とグランドツアラーの『R1250RT』ともに基本的なエンジン構成に変更はない。従来どおりの空水冷式4ストDOHC水平対向2気筒だが、排気量を1169ccから85ccアップして1254ccとし、モデル名の数字を超えることとなった。

しかし、注目してほしいのは、排気量アップによって「R1250シリーズ」となったことではない。むしろ新型ボクサーエンジンに投入されたBMWの最新テクノロジーだ。

二輪業界では昨年10月から11月にかけて、インターモトショー、ミラノショーとビッグイベントが続き、世界の各メーカーからニューモデルが一気に登場した。BMWもミラノで200馬力超えのスーパースポーツ、新型『S1000RR』を発表しているのだが、『R1250GS』と『R1250RT』の2モデルは、このスーパースポーツに搭載される新テクノロジー「BMW ShiftCam(シフトカム)」をBMWの量産二輪車として初めて採用しているのだ。

BMWシフトカムによってライダーがその違いを体感できるほど最高出力が大幅に向上

シフトカムと名付けられたこのシステムは、エンジン内の吸気バルブのタイミングと吸気量を可変制御することで、より効率的に駆動力を発生するテクノロジーだ。アクセルの開け具合やエンジン回転数が5000rpmになったことを境にシフトカムが作動し、低速側と高速側のいずれかのカムへと切り替わるというものだ。環境規制に対応したエンジンのように思えるが、排気量アップもあり、最大出力・最大トルクともに増すことになった。

現行モデルの『R1200GSアドベンチャー』と比較すると、『アドベンチャー』が最高出力92kW(125ps)/7750rpm、最大トルク125Nm/6500rpmであるのに対し、新型『R1250GS』は最高出力が100kW(136ps)/7750rpm、最大トルクは143Nm/6250rpmと、ライダーがその違いを体感できるほど大幅に向上している。

それでいて、燃費は最大4%向上しているというから驚きである。さらに、燃料品質の安定しない国や地域でも、ノッキングセンサーによって燃料噴射や点火タイミングを最適化してくれるので、世界中のどこを旅しても心配なく走り続けることができそうだ。

カムシャフトの駆動も従来のローラー・チェーンからサイレント・チェーンに変更し、静粛性が高められ、オイル供給システムの最適化もはかられている。ほかにも、ツイン・ジェット・インジェクター、官能的なサウンドを実現する新型エキゾーストシステムの採用など、改良点は多岐にわたる。まさにボクサー史上最強最速のエンジンとなっているのだ。

6.5インチのTFTカラー液晶ディスプレイを採用し、日本仕様はETC 2.0も標準装備

装備面もアップデートが施されている。メーターパネルは、『R1250GS』では6.5インチのTFTカラー液晶ディスプレイを採用。速度、回転数、ナビ、そのほかの車輌情報を表示する。天候や条件によって明るさや色を自動調整してくれる機能付きだ。

『R1250RT』はアナログメーターの上に5.7インチのTFTカラー液晶ディスプレイを配置。もちろんほかのBMWモデルと同様に、両車とも日本仕様はETC 2.0を標準装備している。また、いずれもLEDヘッドライト、トラクションを最適化して高い走行安全性を確保するダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)、坂道発進時にライダーを支援するヒル・スタート・コントロール(HSC)などを標準装備するという。

走行モードは、『R1250GS』が「ロード」「レイン」「ダイナミック」「エンデューロ」、『R1250RT』は「ロード」「レイン」「ダイナミック」という仕様になっている。

価格は『R1250GS』が251万円から。休日やバカンスが待ち遠しくなるオートバイ

カラーは、『R1250GS』が「ブラックストームメタリック」「コスミックブルーメタリック」「モータースポーツカラー」「ブラックストームメタリック×ナイトブラックマット」の4色を展開。『R1250RT』は、「カーボンブラックメタリック」「マーズレッドメタリック×ダークスレートメタリックマット」「アルパインホワイト」「ブループラネットメタリック」「スパークリングストームメタリック」の5色をラインアップする。

価格は『R1250GS』が251万円、『R1250RT』が284万9000円(いずれも税込み)。すでに2モデルとも日本へ上陸しており、昨年12月22日から発売中だ。新たに搭載されたテクノロジー「BMWシフトカム」により、オフロードはもちろん、ワインディングロードやフリーウェイで、これまで以上の“駆け抜ける歓び”をライダーに与えてくれることになった。休日やバカンスが待ち遠しくなる、そんなバイクはなかなか見当たらない。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
The new BMW R 1250 GS オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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