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第15回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

新型プリウス──ハイブリッド車の代名詞は巻き返せるか

トヨタ『プリウス』は、1997年に発売された世界初の量産ハイブリッド乗用車である。車名はラテン語で「〜に先駆けて」の意味をもち、登場時のキャッチコピーは「21世紀に間に合いました」。以降、幾度かのモデルチェンジを重ね、2015年9月に第四世代がデビューした。そのハイブリッド技術はさらに進化しており、現在もハイブリッド車の代名詞であり続けている。しかし、現行の4代目はフロントマスクなどのデザインがユーザーの不評を買い、販売台数が伸び悩んでいたのも事実。そこでトヨタが投入したのが、ビッグマイナーチェンジというべき改良を施した2019年モデルである。

デザインが不評を買った4代目『プリウス』。日本でもアメリカでも売れ行きが低迷

2019年モデルの発表の舞台となったのは、2018年11月のLAオートショー。現行の第四世代がお披露目されたのも同じアメリカのラスベガスだ。なぜ発表の場がアメリカなのか。その理由は明確。『プリウス』のメイン市場が北米だからだ。『プリウス』の海外の販売台数は18万6000台だが、そのうち15万台余りを北米で販売している。

しかし、その北米市場でも、プラグインハイブリッドの『プリウスPHEV』を除くと現行型の売れ行きは芳しくなく、特に日本国内の販売台数は先代に比べて落ち込んでいる。

低迷の原因として指摘されたのがデザインだ。なかでも、三方にヘッドライトが飛び散るようなフロントマスクは「歌舞伎顔」とも揶揄され、年齢層が高めのユーザーに敬遠されがちだった。その点、販売が好調な『プリウスPHEV』はフロントとリヤにオリジナルデザインを採用しながら、現行型のような奇抜さはなく、むしろシャープな印象だ。

したがって今回のマイナーチェンジでは、フロントマスクをはじめとするエクステリアの変更が最大のポイントとなる。さっそく2019年モデルのデザインを見てみよう。

不評だったフロントマスクを刷新してスッキリ顔に。まさにビッグマイナーチェンジ

賛否のあったエクステリアはより万人受けする方向へと変更された。一部が垂れ下がるようなデザインだったバイビームLEDヘッドランプは水平基調のシンプルな形状となり、バンパーも変更。それにより顔つきがスッキリとして洗練度が高まっている。

リヤも、現行型では縦方向に長かったLEDテールランプが横方向に踏ん張りの効いたデザインへとあらためられ、ボディが少しワイドになった印象だ。リヤバンパーも変更されている。その結果、エクステリアは全体的に『プリウスPHEV』ともまた違うイメージへと一新された。やはりライトの変更はクルマ全体の雰囲気に大きな影響を与える。

マイナーチェンジでこれほど大きくデザインが変更されるのは歴代『プリウス』で初めてのこと。思い切ったリデザインが施されたことで、いままで「ちょっと奇抜すぎるかな」と敬遠していた大人のユーザーも「これなら乗れる」と感じるのではないだろうか。

ボディカラーには新色がラインナップされた。青系は「ブルーメタリック」、赤系は「エモーショナルレッドⅡ」と、いずれも従来よりも鮮やかなカラーとなった。「ブルーメタリック」は2019年モデルのカタログのイメージカラーにも採用されている。そのほかのカラーは現行型を受け継ぎ、全9色から選べるところもそのままだ。

ホイールは2種類。17インチアルミホイールは『プリウス』特有の樹脂加飾部品をダークなチタン調に変更し、15インチホイールも新しいツインスポーク形状とした。

通信モジュールを全車に標準装備。専任オペレーターが口頭で情報を検索してくれる

インテリアでは、新デザインのステアリングホイールを採用し、アイボリーホワイトだったインパネ・コンソールトレイやステアリング加飾はブラックに変更された。

「A」以上の上級グレードには「おくだけ充電」もオプションで用意される。ワイヤレス充電規格「Qi(チー)」に対応するスマートフォンは、コンソールボックス内に設置した充電エリアに置くだけで簡単に端末のバッテリーを満たすことができる。

また、ディーラーオプションとして設定されている「T-Connectナビ」を購入時にビルトインすれば、全車標準装備となっている「DCM(Data Communication Module=専用通信機)と組み合わせてコネクティッドサービスも利用可能だ。「T-Connect」の最大の利点は、運転中でスマホを使えないときなどでも、専任のオペレーターに口頭で情報の検索を依頼できること。たとえば、目的地の天気や駐車場の案内、旅先のホテルの予約、事故や故障が発生した際の救援車両の手配まで、24時間365日、いつでもドライバーをサポートしてくれる。新しい『プリウス』には3年間の無料期間が付与されるという。

カーナビは、7インチと9インチの2DINが用意されているが、上級グレードには『プリウスPHEV』にも搭載される縦型の大型11.6インチタッチディスプレイが引き続き設定された。地図が見やすく、直感的な操作によりナビ機能だけではなく室内環境の操作も可能。これは4代目以降に採用される『プリウス』の変わらない魅力のひとつだ。

新型『プリウス』は9万円アップの251万円から。装備を考えると実質値下げに近い

グレードの設定は、マイナーチェンジ前と変わっていない。エントリーグレードの「E」、より装備を充実させた「S」とそのスポーツグレードの「Sツーリングセレクション」、そして高級グレードの「A」とスポーツグレードの「Aツーリングセレクション」、さらに最上級グレードとなる「Aプレミアム」と、そのスポーツグレードで専用装備が追加された「Aプレミアム ツーリングセレクション」の7モデルというラインアップだ。

快適装備を重視するならおすすめは「A」以上だろう。しかし、先進安全機能の「Toyota Safety Sense」は全車に標準装備。これは大きなトピックといえる。プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム、レーダークルーズコントロールといった基本的な運転支援システムの有無で迷わなくて済むからだ。

ベース価格は、「E」が251万8560円、「S」が256万5000円、「Sツーリングセレクション」が273万2400円、「A」が284万2560円、「Aツーリングセレクション」が300万6720円、「Aプレミアム」が317万5200円、「Aプレミアム ツーリングセレクション」が328万4280円。このうち「E」の価格をマイナーチェンジ前と比較すると、8万9542円のアップとなっている。しかし今回標準装備された「Toyota Safety Sense」は、マイナーチェンジ前はオプションで、その価格は8万6400円。しかも「DCM」も標準化されていることを考えれば、実質値下げといってもよさそうだ。

フェイスリフトを行い、安全性能も向上したハイブリッド乗用車のアイコンは、日本でも2018年12月17日から販売を開始した。最良の『プリウス』が平成最後の冬に「間に合いました」といえるが、はたして巻き返すことができるのか。要注目だ。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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プリウス テレビCM「あなたに答えを」篇
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第17回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

超屈強なフルサイズSUV──トヨタ セコイアTRDプロ

日本の自動車メーカーが作るクルマには「日本では買えない海外専用モデル」というものが存在する。とくにSUVやピックアップトラックには、北米専用モデルが多い。ホンダなら『パイロット』『リッジライン』、日産なら『タイタン』にインフィニティ『QX70』。トヨタのフルサイズSUV『セコイア』も、そのうちの一台だ。この巨大な北米専用SUVに、モータスポーツ直系のチューニングを施した「TRDプロ」が加わった。日本では見ることもその性能を堪能することもできない、アメリカならではフルサイズSUVである。

全長5mの巨大なボディに豪華な装備。トヨタ『セコイア』は北米市場で人気のSUV

アメリカでは、フルサイズSUVを持つことがひとつのステータスになっている。多用途的とは言いがたいスポーツカーと違い、日常からレジャーまで幅広く利用でき、グレードによっては高級セダンに匹敵する乗り心地を実現し、さらに頑丈な車体は回避安全の意味でも頼りがいがあるためだ。VIPやセレブレティも移動にフルサイズSUVを使うことが多い。

フルサイズに明確な基準があるわけではないが、SUVをボディサイズでセグメントしたとき、もっとも大きなクラスを指し、コンパクトやミドルに対して「ラージサイズ」とも呼ばれる。全長は5m以上、全幅は2m以上かそれに近い車両がフルサイズにあたる。

トヨタの北米市場専用モデル『セコイア(Sequoia)』も、『ランドクルーザー200』以上の巨体をもつフルサイズSUVだ。トヨタ・インディアナ工場で製造され、初代は2000年にデビュー。その後、2008年と2018年にフルモデルチェンジを受けた。SUVを名乗っているが、どちらかというと『セコイア』は4WDとしてのヘビーさよりもオンロードでの快適性や利便性を重視したクルマで、充実したインテリアによってプレミアム感を演出している。それがユーザーの嗜好を捉えているのは、好調なセールスを見れば明らかだ。

フルサイズSUVで唯一セカンドシートにスライド機構をもち、じつのところ、それも人気を支えている要素になっている。さらにサードシートのリクライニングやフルフラットも電動(オプション)なので、家族の評判が高くなるのは道理なのだ。このほか、初代から運転席の8ウェイのパワーチルトやスライド式ムーンルーフを標準装備。トライゾーン・オートエアコンも備え、Apple CarPlay、Android Auto、Amazon Alexaにも対応する。もちろんBluetoothハンズフリー電話機能とミュージックストリーミングも可能だ。

しかし、2月にシカゴでお披露目された『セコイアTRDプロ』は、標準仕様とはかなり趣が異なる。その名のとおり、これは「TRD」のバッジを冠するモデルだからだ。

FOX製のショックアブソーバーを搭載。『セコイアTRDプロ』はTRDの最新モデル

TRDは「トヨタ・レーシング・ディベロップメント(Toyota Racing Development)の頭文字だ。トヨタのワークスファクトリースチームとしてレーシングカーを開発し、そこで培った経験や技術を生かしてトヨタ車用にチューニングパーツの製作と販売を行っている。国内外の多くのレースに参戦しているが、近年では『ヴィッツ』(輸出名『ヤリス』)をベースにしたマシンでWRC(世界ラリー選手権)に参戦して注目を集めた。前身は1970年代にさかのぼり、モータースポーツマニアならずともTRDの知名度は非常に高い。

「TRDプロ」は、2014年から北米でトヨタのオフロードモデルにラインナップされているシリーズで、ピックアップトラックの『TUNDRA(タンドラ)』と『TACOMA(タコマ)』、そして日本では『ハイラックスサーフ』としておなじみのSUV『4 Runner(フォー・ランナー)』に設定されている。このTRDプロの最新作が『セコイアTRDプロ』だ。

5.7L V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、トランスミッションは6速AT。55.4kg-mという図太いトルクを発揮し、しかもそのトルクの90%をわずか2200rpmという回転数で得ることができる。加えて、マルチモードの4WDシステム(ほかのグレードではオプション)やロッカブル・トルセン・リミテッド・センターデフ(トルク分配式デフ)を搭載したことで、従来の『セコイア』になかった高い走破性をもつのが特徴のひとつだ。

しかし、もっとも重要なチューニングポイントはサスペンションだろう。オフロード用のショックユニットメーカーとして知られるFOX社のアブソーバーは、アルミ製の本体にインターナル・バイパスを装備し、外力の大きさによって異なる減衰機構が働く。日常の走りでは柔軟に動き、ストローク量に応じて減衰力が高まるのでボトムしにくいのだ。数多くのオフロードコンペで優れた実績を残したメカニズムで、むろん専用にチューニングされている。しかもTRDの厳しい要求に応えるため、前後で異なるユニットが採用された。

「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しむSUV

外観で目立つのは、P275/55R20タイヤを装着した20インチx8インチのBBSブラック鍛造アルミホイールと、フィニッシュがブラッククローム仕上げの単管エキゾーストだ。誇らしげに「TRD」のロゴが入れられたフロント下部のスキッドプレートは、もちろんトレイル走行中にフロントサスペンションとオイルパンを保護するのに役立つもの。また、フロントグリルも「TOYOTA」のロゴを配した専用デザインとなっている。

面白いのは、TRDのエンジニアが乗員に配慮し、キャビンの音質を改善するために周波数調整したサウンドキャンセルデバイスを採用したこと。これによって低く心地よいエキゾーストノートを提供するという。走りとは関係ないものの、ぜひ体験したい機能だ。

かつての四輪駆動車愛好者は、それ以外の自動車ユーザーと求めるデザインや装備、機能が明らかに違っていたが、技術の進歩とセンスの変遷はさまざまな境界を取り払おうとしていると感じる。「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しもう、というのが『セコイアTRDプロ』の隠れたコンセプトなのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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