1950〜60年代のスパイダーに敬意を表した世界に一台だけのフェラーリV12モデル
『SP3JC』のベースは、2015年に発表された世界限定799台のスペチアーレ『F12 tdf(ツール・ド・フランス)』。顧客の望みは、このスペチアーレのシャシーとランニング・ギアによる妥協のない純粋なロードスターモデル。その贅沢すぎるオーダーを叶えた唯一無二のフェラーリだ。
モチーフは1950〜60年代に活躍したV12エンジン搭載のスパイダーモデル。オープンエアドライブを極め、一時代を築いたあの頃に立ち返る一台である。
1950年代のスパイダーには、『342 AMERIC』『250GT Cabriolet』『250 CALIFORNIA』があり、1960年代にも『275 GTS』『365 California』『330 GTS』『365 GTS4』といった名だたるモデルが名を連ねている。これらはフェラーリの公式サイトにある過去の車種から見ることができるので、気になる人はぜひチェックして欲しい。
フェラーリ・スタイリング・センターがデザインした『SP3JC』の独特なスタイルは、顧客との密な連携によって決められ、最終的に2年以上の歳月を費やしたという。
『F12tdf』よりもワイドな印象。ポップアートへの情熱を鮮やかグラフィックで表現
目を引くのは、なんといってもブルー、ホワイト、イエローが組み合わされた目が覚めるようなボディーカラーだろう。もう少し正確に記すと、この色はメインカラーの「Bianco Italia(ホワイト)」に「Azzurro Met(ブルー)」と「Giallo Modena(イエロー)」の2色を組み合わせたものだ。『SP3JC』をオーダーした顧客はポップアートに強い関心をもつらしく、その情熱をパワフルなグラフィックスとして表したものだという。
フロントフェイスは『F12 tdf』をベースとしてはいるが、グリルの細部やエアインテークの追加により、さらに特徴的な形状へと進化した。リアでは、パネルに『F12 tdf』にはなかった水平スリットが入り、車輌のワイドなスタンスを創出している。
ボディ側面では、ダイナミックなエアアウトレットによって、フロントエンジンであることをアピールするとともに、力感溢れるフォルムを強調。『F12 tdf』のボディラインが現代的だったの対し、より1960〜50年代のフェラーリに近いスタイリングとなった。
ボンネットから透けて見えるフェラーリの魂、ワンオフだからこそ可能なこだわり
ボンネットは、さすが「ワンオフ」と唸ってしまう。スプリットグラス・インサートを採用し、最高出力780馬力のV12エンジンを眺めることができる。コックピット後方では、一体型カーボンファイバー・ロールバーと、これとつながった整流板、ヘアライン仕上げのアルミニウム製燃料キャップなどがこのモデル特有のスポーツ性を際立たせる。
内装では、エクステリアと同じブルーを基調とし、ダッシュボード下部までブルーレザーを採用。シートもレザートリムで、ホワイトラインのインサートをアクセントとして入る。さらに、トリムにもコントラスト・ステッチカラーとしてブルーが使われている。
公式リリースにスペックは記されていなかったが、出力780馬力のV12エンジンは『F12 tdf』と同じ。だとすると、0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速7.9秒、最高速340km/hオーバーという、驚異的なパフォーマンスを発揮する可能性が高い。
世界に一台だけの自分だけに向けられたフェラーリ。もし叶うなら、読者諸兄はどのモデルをベースに、どういったエクステリア、インテリアで彩りたいと思うだろうか。『SP3JC』を見ながらそんな想像をするだけでも心が躍ってしまう。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)