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第27回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

フェラーリSP3JC──ポップアート好きのワンオフモデル

世界に一台だけのフェラーリ。そんなフェラリスタ究極の夢を叶えるのが、顧客のオーダーに応じてワンオフカーを製作する「ワンオフ・プロジェクト」だ。『P4/5 ピニンファリーナ』『SP1』『P540 Superfast Aperta』『SUPER AMERICA 45』『SP12EC』『SP FFX』『F12 SP AMERICA』『F12 TRS』『458MM スペチアーレ』『SP38』と、数々の名車を生み出してきたが、新たな一台がこの歴史に刻まれた。『SP3JC』である。

1950〜60年代のスパイダーに敬意を表した世界に一台だけのフェラーリV12モデル

『SP3JC』のベースは、2015年に発表された世界限定799台のスペチアーレ『F12 tdf(ツール・ド・フランス)』。顧客の望みは、このスペチアーレのシャシーとランニング・ギアによる妥協のない純粋なロードスターモデル。その贅沢すぎるオーダーを叶えた唯一無二のフェラーリだ。

モチーフは1950〜60年代に活躍したV12エンジン搭載のスパイダーモデル。オープンエアドライブを極め、一時代を築いたあの頃に立ち返る一台である。

1950年代のスパイダーには、『342 AMERIC』『250GT Cabriolet』『250 CALIFORNIA』があり、1960年代にも『275 GTS』『365 California』『330 GTS』『365 GTS4』といった名だたるモデルが名を連ねている。これらはフェラーリの公式サイトにある過去の車種から見ることができるので、気になる人はぜひチェックして欲しい。

フェラーリ・スタイリング・センターがデザインした『SP3JC』の独特なスタイルは、顧客との密な連携によって決められ、最終的に2年以上の歳月を費やしたという。

『F12tdf』よりもワイドな印象。ポップアートへの情熱を鮮やかグラフィックで表現

目を引くのは、なんといってもブルー、ホワイト、イエローが組み合わされた目が覚めるようなボディーカラーだろう。もう少し正確に記すと、この色はメインカラーの「Bianco Italia(ホワイト)」に「Azzurro Met(ブルー)」と「Giallo Modena(イエロー)」の2色を組み合わせたものだ。『SP3JC』をオーダーした顧客はポップアートに強い関心をもつらしく、その情熱をパワフルなグラフィックスとして表したものだという。

フロントフェイスは『F12 tdf』をベースとしてはいるが、グリルの細部やエアインテークの追加により、さらに特徴的な形状へと進化した。リアでは、パネルに『F12 tdf』にはなかった水平スリットが入り、車輌のワイドなスタンスを創出している。

ボディ側面では、ダイナミックなエアアウトレットによって、フロントエンジンであることをアピールするとともに、力感溢れるフォルムを強調。『F12 tdf』のボディラインが現代的だったの対し、より1960〜50年代のフェラーリに近いスタイリングとなった。

ボンネットから透けて見えるフェラーリの魂、ワンオフだからこそ可能なこだわり

ボンネットは、さすが「ワンオフ」と唸ってしまう。スプリットグラス・インサートを採用し、最高出力780馬力のV12エンジンを眺めることができる。コックピット後方では、一体型カーボンファイバー・ロールバーと、これとつながった整流板、ヘアライン仕上げのアルミニウム製燃料キャップなどがこのモデル特有のスポーツ性を際立たせる。

内装では、エクステリアと同じブルーを基調とし、ダッシュボード下部までブルーレザーを採用。シートもレザートリムで、ホワイトラインのインサートをアクセントとして入る。さらに、トリムにもコントラスト・ステッチカラーとしてブルーが使われている。

公式リリースにスペックは記されていなかったが、出力780馬力のV12エンジンは『F12 tdf』と同じ。だとすると、0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速7.9秒、最高速340km/hオーバーという、驚異的なパフォーマンスを発揮する可能性が高い。

世界に一台だけの自分だけに向けられたフェラーリ。もし叶うなら、読者諸兄はどのモデルをベースに、どういったエクステリア、インテリアで彩りたいと思うだろうか。『SP3JC』を見ながらそんな想像をするだけでも心が躍ってしまう。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第29回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

フェラーリP80/C──特注のサーキット専用スーパーカー

世界に一台だけのフェラーリを作るのは、コレクターにとって究極の夢だろう。それを叶えてくれるのが「フェラーリ・ワンオフ・プログラム」だ。元映画監督の自動車愛好家、ジェームス・グリッケンハウスが製作を依頼した『P4/5ピニンファリーナ』に始まり、フェラーリクラブ・ジャパン元会長がオーダーした『SP1』など、現在までに十数台のワンオフ・フェラーリが誕生している。そして先日、また一台、フェラリスタ垂涎のワンオフモデルが完成した。車名は『P80/C』。約4年の月日をかけて開発されたサーキット専用車だ。

依頼主はフェラーリ・コレクター。60年代のプロトタイプレーシングカーをオマージュ

『P80/C』をオーダーしたのは、フェラーリのエンスージアストの家に生まれ、自身も跳ね馬に対する深い知識と見識をもつフェラーリ・コレクターだ。オーナーの素性はそれ以外明かされていない。しかし、並外れた財力をもつ人物であることは間違いないだろう。

オーナーからの注文内容は、概ねこういうものだ。1966年の『330P3』、1967年の『330P4』、そして1966年の『ディーノ206 S』。これらのフェラーリから着想を得た現代版のスポーツプロトタイプを創造すること。つまり、伝説のプロトタイプレーシングカーをオマージュした、最先端で究極の性能をもったサーキット専用車を作るということである。

開発を担当したのは、チーフのフラビオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリングセンターと、エンジニアリングとエアロダイナミクス部門からなるチームだ。彼らが互いに協力し、オーナーと価値観を共有することで、世界に一台だけのフェラーリを作り上げた。製作期間は、じつに約4年間。これはワンオフ・フェラーリのなかで最長だという。

ベースモデルはレース車両の『488GT3』。自由な発想で作られたサーキット専用車

『P80/C』はガレージで鑑賞することを目的としたクルマではない。前述したとおり、往年のプロトタイプレーシングカーをモチーフにしたサーキット専用車だ。そのため、ヘッドライドは取り払われ、サーキット走行に必要なテールランプもリアセクションと一体化した独特の形状となっている。フェラーリの市販車は通常、丸型のテールランプをもつ。

ベースとなったのは、レース用車両である『488GT3』。エアロダイナミクスはベースモデルを踏襲しているが、『488GT3』のように「グループGT3」のレギュレーションに準拠する必要がないので、車体の各所に自由な発想が盛り込まれている。たとえば、なんとも大胆なリアの形状は2017年シーズンのF1マシンに採用された「T字ウイング」にヒントを得たもの。フロントリップスポイラーやリアのディフューザーなども『P80/C』のために専用設計された。それらにより、『488GT3』より空力効率がおよそ5%向上している。

エンジンフードのアルミ製ルーバーと凹型のリアウィンドウは、『330P3』『330P4』『ディーノ206 S』といったプロトタイプレーシングカーへのオマージュ。これらはひと目で『P80/C』とわかる特徴的なエクステリアだ。筋肉質なフェンダーが目を引くボディはカーボンファイバーで、フェラーリらしく「Rosso Vero」と呼ばれる赤で塗装された。

まるで戦闘機のコクピット。ロールケージ、6点式シートベルトを備えるインテリア

戦闘機のコクピットを思わせる室内にはロールケージが組み込まれ、インパネやステアリングには『488GT3』の面影を色濃く残している。しかし、ダッシュボードのサイド部分は専用デザインだ。バケットシートは鮮やかなブルー。素材については発表されていないが、アルカンターラと思われる。2座にはそれぞれ6点式シートベルトが装備された。

たったひとりのフェラーリ・コレクターのための作られたモデルなので、エンジンパワーなどのスペックは公表されていない。むろん価格もしかり。実車を目にする機会があるかどうかも定かではないが、どこかのコンクール・デレガンスでお披露目される可能性はある。いずれにせよ、間違いなくフェラーリの歴史に名を残す特別な一台となることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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