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第45回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

アイコンはどう進化したのか──All-Newポルシェ911

「901」「930」「964」「993」「996」「997」「991」。カーガイなら、この暗号めいた数字の順列がなにを示すか、すぐに理解することだろう。歴代『911』の型式だ。ポルシェのフラッグシップにしてアイコンたるこのクルマは、型式で呼ばれるクルマの代表格である。「911」のあとに続く数字は「992」。1964年のデビューから数えて8世代目となる新型『911(992型)』が、晩秋のロサンゼルスでアンベールされた。

新型『911』は流麗なスタイリングを継承しながら大型化してマッシブな印象に変貌

北米はポルシェにとって重要な市場だ。2017年は5万5420台を北米で販売。そのうち7802台は『911』だった。マーケットとしては中国に次ぐ規模で、カリフォルニア州だけでも、ポルシェが販売される世界各国と比較すると5番目の売れ行きとなるという。

そう考えると、旗艦モデルの『911』がLAオートショーの前夜に、ポルシェの北米拠点であるポルシェ・エクスペリエンスセンターで初お披露目されたのも合点がいく。

では、実際にベールを脱いだ実車を見ていこう。新型ではあるが、継承されるべきDNAはしっかりと守られている。つまり水平対向エンジン、5連メーター、2+2シート、そして流麗なスタイリングだ。

スタイリングはより力強い印象となった。その理由は、ボディの大型化だ。従来は後輪駆動モデルと四輪駆動モデルのボディサイズが異なっていたが、新型はすべて共通。後輪駆動モデルは横幅がワイドになり、またリアのタイヤサイズが21インチと大径化され、それに伴いリアフェンダーの幅も拡大。重心が低く地を這うようなイメージを与える。

フロントフェイスを注意深く見れば、ヘッドライトの形状変更に気づくはずだ。前世代の「911型」よりもわずかに円状に近づいており、往年のポルシェモデルをほうふつさせる。リアでは、「PORSCHE」のロゴと一体化した左右連結のテールライトが印象的だ。

室内にはオールド『911』への回帰を思わせる意匠。もちろん5連メーターは健在だ

インテリアでは、ダッシュボードに水平基調の直線デザインを採用。996型以降の『911』で採用されていたタテ型コンソールから大転換をはたしたが、言い方を変えれば、初代以降の往年のモデルをイメージして回帰したとも捉えることができる。古くからのファンにとっては、うれしい限りだろう。

『911』のDNAといえば、インパネの形状も忘れてはならない。中央にレヴカウンター(タコメーター)を配置した5連メーターだ。むろん新型にも採用された。もっとも、アナログメーターなのはレヴカウンターだけ。その左右には7インチモニターのデジタルメーターパネルが配され、ドライバーに必要な情報を適時表示してくれる。伝統を受け継ぎつつ、最新の技術で最良を実現する『911』らしさを感じさせる。

センタースクリーンには、10.9インチパネルを採用。「PCM」(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム)に対応しており、さまざまな機能にスピーディなアクセスができる。スクリーンの下には5個のスイッチ。これを押すことで使用頻度が高い車両機能に直接アクセスが可能になった。

伝統の水平対向6気筒ターボエンジンは、30psアップとなる最高出力450psを発揮

「最新のポルシェが最良のポルシェ」。それだけに気になるのは、やはり動力性能だろう。心臓部はもちろん水平対向6気筒ターボだ。最高出力は前モデルよりも22kW(30ps)アップした331kW(450ps)で、パドルシフト式8速PDKが組み合わされる。

0-100km/h加速は『911 カレラS』が3.7秒、『911 カレラ4S』は3.6秒。最高速度は『911カレラS』が308km/h、『911 カレラ4S』は306km/hに達する。残念ながら、現在発表されている車種とスペックはこれだけだ。今後の発表が待たれる。

走行性能で実力を試したいのが、新しく採用された「ウェットモード」だ。濡れた路面を検知し、コントロールシステムを調整することで安定して走れるようにするという。そのほかの安全機能では、「ナイトビジョンアシスト」や「アダプティブクルーズコントロール」、「エマージェンーブレーキ」などがオプションで準備された。

ドイツ本国では注文の受け付けを開始。当初は『カレラS』『カレラ4S』のみを発売

実際の発売は2019年夏頃といわれているが、ドイツ本国ではすでに注文が可能となっている。それによれば、販売価格は『911 カレラS』が12万125ユーロ(約1518万円)から、『911 カレラ4S』が12万7979ユーロ(約1618万円)からとのことだ。

今後、ベースモデルとなる『カレラ』や『カブリオレ』なども続々と発表されることになるだろう。個人的には、ハイエンドモデルであり、公道レーシングカーというべき『911 GT3』がどれほどのモンスターマシンに仕上がってくるのか、楽しみでならない。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
The new Porsche 911 オフィシャル動画
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第53回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

ポルシェ カイエンクーペ──SUVクーペに真打ちが参戦

世界の自動車市場を席巻するプレミアムSUVというジャンルは、2002年にポルシェ初のSUVとしてデビューした『カイエン』から始まった。スーパーカー並の性能を有するランボルギーニ『ウルス』やベントレー『ベンテイガ』も、『カイエン』の存在がなければ登場はもっと後だったかもしれない。その高級SUVの祖に、これまでクーペボディをもつ派生車種がラインナップされていなかったのが不思議なくらいだ。今年4月、ポルシェは上海で『カイエン クーペ』を初公開した。まさしく、満を持してのデビューである。

より低くスポーティなルックスになった『カイエン』。ライバルは『GLEクーペ』?

プレミアムSUV市場には、すでにいくつかのSUVクーペが存在する。メルセデス・ベンツなら『GLCクーペ』『GLEクーペ』、BMWなら『X4』『X6』。高級車ブランドがこぞってSUVに注力した結果、市場は多様化し、多くの選択肢をユーザーに用意することが求められるようになった。そうしたなかで、元祖プレミアムSUVである『カイエン』にクーペモデルが加わるのは必然。むしろもっと早く市場に投入してもよかったかもしれない。

『カイエン クーペ』はその名のとおり、ボディ後部にいくほど傾斜していく流麗なルーフラインをもったクーペルックのSUVだ。横から見ると、フロントウィンドウとAピラーが通常モデルよりも低く、寝かされていることがわかる。ルーフエンドには、クーペスタイルを強調するかのようにルーフスポイラーが装着された。ボディサイズは全長4931×全幅1983×全高1676mm。通常モデルと比べて全長が13mm長くなり、全高は20mm低くなった。さらに、新設計の後部ドアとフェンダーにより形状が変わったことで、全幅も18mmワイドになっている。全体として、より低くスポーティになった印象だ。

ルーフは2種類。固定式パノラマガラスルーフが標準で、カーボンルーフをオプションで選択できる。0.92m2のガラスルーフはかつてない開放感を乗員に与え、統合されたローラーブラインドが直射日光や寒さを防いでくれる。カーボンルーフは『911 GT3 RS』と同様に中央に窪みを持つ形状で、いかにもスポーティカーといった雰囲気を醸し出す。

『カイエンターボ クーペ』は最高出力550馬力。0~100km/h加速はなんと3.9秒

クーペ化にともなって室内空間にも変更が加えられた。標準モデルとの大きな違いは、後席がそれぞれ独立して2座になり、4つのスポーツシートを備えるようになったことだ(ベンチシートもオプションで選べる)。とりわけ前席は、インテグレーテッドヘッドレストと8ウェイ電動調節を備えたスポーツシートを採用し、優れた快適性とホールド性でドライバーをサポートする。また、全高は低くなったものの、リアシートの着座位置を標準モデルより30mm低くしたことで、後席のヘッドスペースも十分な広さを確保した。

ラゲッジルームの容量は通常時で625L。後席を畳めば最大1540Lまで拡大することが可能だ(『カイエンターボ クーペ』では通常時600L、最大で1510Lとなる)。

パワーユニットはグレード別に2種類のガソリンエンジンが用意された。『カイエン クーペ』は3.0L V型6気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は340ps(250kW)、最大トルクは450N・m。0~100km/h加速は5.9秒(オプションの「軽量パッケージ」)、最高速度は243km/hだ。『カイエンターボ クーペ』は4.0L V型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力は550ps(404kW)、最大トルクは770N・m。こちらの動力性能はさらに強烈で、0~100km/h加速は3.9秒に短縮し、最高速度は286km/hに達する。

すでに日本国内で予約受注も開始。『ウルス』のエンジンを積む最強グレードも登場?

『カイエン クーペ』『カイエンターボ クーペ』ともに、すでに日本国内での予約受注を開始しているが、国内発売日はまだ未定。一方、ヨーロッパでは、この2台の中間グレードとなる『カイエンS クーペ』が5月15日に発表され、さらにランボルギーニ『ウルス』と同型のエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルが設定されるとの情報もある。実現すれば、最高出力640ps以上の最強モデルがシリーズに加わることになるだろう。

まさに、プレミアムSUVブームを牽引してきた『カイエン』による怒涛のニューモデル攻勢といった趣だ。高級SUV市場が今後ますます活性化していくのは間違いない。1000万円以上の高級SUVを買える裕福な人々にとっては、選択肢が広がるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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