editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第60回 | 大人ライダー向けのバイク

Ducati MIG-RR──ドゥカティのe-MTBで山道を駆ける

40代以降の人なら、1980年代後半から90年代にかけて巻き起こったMTBブームを覚えていることだろう。さまざまな理由からブームは続かなかったが、休日に山道を駆け抜ける愉しさを多くの若者に知らしめた。あれからおよそ30年。いまや体力も脚力も衰え、バイクを車庫の奥にしまい込んでいる人も多いかもしれない。しかし、「e-MTB」なら電動アシスト付きなので、険しい上り坂も楽々と走ることが可能だ。2019年春には、あのドゥカティのラインアップにもe-MTBのニューモデルが加わる。

Thok E-bikesとコラボしたニューモデル。今度のドゥカティのe-MTBは本気度が違う

毎年7月に開催される「ツール・ド・フランス」は、世界最大の自転車の祭典だ。自転車にあまり興味がない人もその名前ぐらいは知っているだろう。テレビを通じて全世界で30億人が観戦するといわれ、サッカーのワールドカップに匹敵する高い人気を誇る。

このツール・ド・フランスを筆頭に、ヨーロッパでは日本と比べ物にならないほど数多くの自転車レースが開催される。なかでもエナジードリンクメーカーがスポンサーとなり、急速に人気を高めているのがe-MTB(電動アシスト付きマウンテンバイク)のレースだ。

その人気に刺激を受けたのかもしれない。2018年11月には、イタリアを代表するオートバイメーカーのドゥカティが新型e-MTBの『MIG-RR』を発表した。これはe-MTB専門ブランドの「Thok E-bikes」とのコラボレーションにより生まれたモデルだ。

じつは、ドゥカティは過去にもビアンキと組んでクロスバイクのe-BIKEをリリースしたことがあった。しかし今回発表されたe-MTBはその本気度がまったく違う。なにしろ、ドゥカティの本国公式サイトにも『MIG-RR』のページがあるくらいなのだから。

ベースはThok『MIG』シリーズ。荒れ地も急坂も難なくこなすパフォーマンスを実現

Thok社は、BMX(バイシクルモトクロス)の世界チャンピオンに輝いたこともあるイタリア人MTBライダー、ステファノ・ミグリオリーニが創立したe-MTBに特化したメーカーだ。『MIG-RR』は、このThok社がリリースする『MIG』シリーズをベースに開発されたモデルで、e-MTBレースに出場する選手も納得する仕様となっている。

そのひとつが、オリジナルモデルでは採用されていないホイール径だ。マヴィック製の「E-XA Drifter」ホイールは、フロント29インチ、リア27.5インチと、前後異径のセットアップで、MTBプロライダーのハートに火をつける。さらに、フォックス製「ファクトリー・シリーズ」のサスペンションは、フロント170mm、リヤ160mmのトラベル量を備えており、荒れ地も急坂も難なくこなせるパフォーマンスが期待できる。

見逃せないのは心臓部だろう。新しいジオメトリを備えたアルミニウム製フレームを装備し、そのダウンチューブ下に容量504Whのバッテリーを搭載。このデザイン処理がかなりカッコよく、ほかのメーカーが真似しそうなほどの出来栄えとなっている。とってつけた感がまったくないのだ。

このバッテリーから供給される電源をパワーとするモーターは、マウンテンバイク専用に開発されたシマノ製モーター「Steps E8000」システムで、最高出力250W、最大トルク70Nmを発生する。アシストモードは「エコ」「トレイル」「ブースト」の3種類。「トレイル」と「ブースト」は必要に応じてアシスト・レベルの強弱調整が可能だ。

電動アシストバイクは車両重量が重くなりがちだが、『MIG-RR』は22.5kgと肩に担げる重さを実現した。これはe-MTBライダーにとってうれしいポイントだろう。

バレンティーノ・ロッシのヘルメットを手がけたドゥルディのカラーリングは必見だ

カラーリングを手がけたのはアルド・ドゥルディが率いる「Drudi Performance(ドゥルディ・パフォーマンス)」。ドゥルディは史上最強のライダーと呼ばれるバレンティーノ・ロッシのヘルメットのデザインを手がけるなど、二輪の世界で超有名なイタリア人グラフィックデザイナーだ。スペースが限られた自転車のフレームのどこに、彼のセンスでドゥカティのレッドをあしらうか。登り上がるルートをイメージさせるグラフィックは必見である。

本体価格は6250ユーロ(約79万円)。ドゥカティのラインアップでいうと、400ccの『スクランブラーSixty2』(89万9000円、税込み)に迫る勢いだ。しかしe-MTBレーサーと考えれば、安いは言い過ぎにしても、お手頃ではないだろうか。

発売開始は2019年春の予定。ヨーロッパのドゥカティ・ディーラーにて販売されるが、日本導入は未定。そもそも、日本国内では道路交通法による電動アシストの基準(規制)があり、公道走行では時速10km/hを超えると徐々にアシスト率が下がって時速24km/hでアシストが効かなくなる。『MIG-RR』が日本国内で発売される際には、規制に合わせたプログラムの書き換えが必要だ。それとも純粋なレーサーとするか、悩ましいところだ。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati MIG-RR オフィシャル動画
ピックアップ
第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
ピックアップ

editeur

検索