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第59回 | 大人ライダー向けのバイク

ウラル エア──KGB仕様!? ドローンを積むサイドカー

サイドカーは、19世紀のヨーロッパで、オートバイでも自動車のように荷物や人を運びたいとの発想から生まれた乗り物だ。当時、自動車はまだ高価な代物だった。しかし自動車が大量生産されて安価になれば、サイドカーの存在意義も薄れていく。したがって、現在のサイドカーは非常に趣味性が高く、好事家のためのものとなっている。なかでもロシアのウラルモトが発表した『Air』は、その趣味性を極限まで高めたかのようなモデルだ。サイドの車両にドローンを搭載し、その発着スペースまで備えているのである。

世界的にもめずらしいサイドカー専門ブランドが送り出すドローン搭載の限定モデル

ロシアのUral Moto(ウラルモト)は、1939年にスターリンが軍用バイクの開発を命じたことに始まる世界的にもめずらしいサイドカー専門メーカーだ。最初期のベース車両となったのは、第二次世界大戦中にドイツ軍が使用していたBMW『R-71』だった。

そうした成り立ちのためか、ウラルのサイドカーには懐古趣味やミリタリー志向が色濃く漂う。近ごろは日本の街中でサイドカーを目にすることはほとんどなくなったが、その一方、じつはウラルを駆る大人のライダーはじわじわと増えている。

その筋ではマニアックで知られるウラル乗りだが、製造元のウラルモトにもマニアックなエンジニアがいるようだ。10月下旬、日本の一般ライダーはもちろん、ウラルのオーナーでさえ思わずのけぞるような限定モデルがウラルモトから発表された。

その名は『Ural Air(ウラルエア)』。なんとなんと、サイドカーでいう「カー」の前部が潜水艦のハッチのように開き、そこからドローンが飛び立つのだという。これはKGB仕様なのか、それともレッドオクトーバー(トム・クランシーの小説に登場するソ連のアルファ型原子力潜水艦)仕様か。ロシアの技術者が考えることはひと味違うようだ。

搭載するのは高性能小型ドローン「Spark」。ハイアングルにより鳥の視野も味わえる

最初にドローンについて説明しよう。搭載されるのは、安定した飛行性能で定評のあるDJI社の小型高性能ドローン「Spark(スパーク)」。これをカー(船ともいう)の前部をくり抜いて製作した区画に収納する。ドローンの離発着に使用されるハッチには「H」のマークが描かれており、カーに設置されたボタンを押すと、ガスダンパーの力によって自動的に開くようになっている。

「Spark」の機体前方の2軸ジンバルには1/2.3インチCMOSセンサーを採用する小型カメラを搭載し、動画や静止画を撮影することができる。撮影モードには「パノラマ」と背景をぼかし被写体を際立てて撮影できる「シャロー・フォーカス」が用意され、これまでのサイドカーツーリングでは見られなかった印象的な記録を残すことが可能となった。

さらに、カーに座るナビゲーターはRAMマウントによって固定されたコントローラーを操り、ハイアングルによる鳥の視野もモニターを通じて味わうことができる。

ドローンの対角寸法は170mmで、重量はたったの300g。そのためカーから取り出して手に持ち、波打ち際で飛ばすことも可能。ただし、ドローン飛行には数々の規制があり、国土交通省のサイトなどで確認が必要だ。空港付近の飛行は厳しい制限があり、特に米軍基地のそばでは絶対にドローンを飛ばしてはいけない。必ずMPが追いかけてくる。

ウラルエアの価格は243万円。ドローン仕様だけに、吹き流し付きの自撮り棒も搭載

車両本体は2019年モデルがベースで、ボディカラーはサテン仕上げの「スレートグレイ」。エンジン、ギアボックス、ファイナルドライブはブラックアウト仕様となっている。

749ccのOHV空冷「ボクサー」エンジンを搭載し、最高出力は41hp/5500rpmだ。推奨される最大巡航速度は110km/hで、切り替え式パートタイム2WDを標準装備する。オマケというわけでもないが、ドローン仕様であることから吹き流し付きの自撮り棒も搭載している。良好な風量でなければドローンの操作ができないから、ということだが、気分は満点だ。

価格243万円(税込み)。このリミテッドエディションは世界40台限定の販売で、日本には来年1月に10台が入荷予定。しかしすでに予約完売してしまったようだ。なんともメカ好きにはたまらない一台だけに、再登場を期待したい。それとも自作するか!?

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Ural Motorcycles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ural Air Limited Edition オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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