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第58回 | 大人ライダー向けのバイク

リバーストライクを愉しむ──Can-Amライカー、日本上陸

トライクと呼ばれる前一輪・後二論のオートバイは、カスタムビークルの一形態としてアメリカには古くから一定の愛好者がいて、日本でも近年はよく見かける。しかし、その多くは大型二輪のエンジンを用いたり、ビッグスクーターをカスタムしたりと、フルオーダーの車両が多く、存在としては色モノに近かった。そこへ一石を投じたのが、カナダのBRPが販売する前二輪・後一輪のCan-Am『スパイダー』だ。エンジンやフレームを含めたすべてが量産車として専用に設計され、その完成度の高さはトライクの概念を変えざるをえないほど。2019年春には、より手軽な『ライカー』が日本上陸をはたす。

ほかのどんなモビリティとも異なる、リバーストライクの唯一無二のライディング感覚

三論オートバイ(3Wheel motorcycle)とも呼ばれるトライクは、一般的にクルマよりもオートバイに近い乗り物と認識されている。それは乗り手の全身がオープンエアにあり、操縦者としての感覚がダイレクトに感じられるという点で似ているからだろう。

しかし、前二輪・後一論のいわゆるリバーストライクのライディング(ドライビング?)感覚は独特で、ほかのどんなモビリティとも異なる。前一輪・後二輪のトライクともまた違ったものだ。強いて言えば四輪のATVやスノーモビルが近いかもしれない。

なにしろ二輪車と違ってコーナリングでリーン(傾斜)せず、ハンドル操作のみで旋回するのだ。したがって、乗り手は遠心力でコーナーの外側に引っ張られることになり、開放感はオートバイと同様ながら、ライダーは車体に逆らうようにコーナーの内側に体を傾けなければならない。初めて乗る人は少々面食らうことだろう。

ただし、重心が低いこともあって全体の挙動としては安定性が高く、タイヤ位置も視界のなかにあるので車幅感覚にも不安がない。前一輪のトライクは急ブレーキーをかけると左右どちらかの前方に転倒することもあるが、リバーストライクではそれもない。

Can-Am『ライカー』は変速機なしのATを採用。トライク史上もっとも運転が簡単

Can-Am『ライカー』は、手軽さ(Accessible)、楽しさ(Fun)、カスタム性(Customizable)の3要素を開発コンセプトに置いている。手軽さとしては、『スパイダー』がセミATの6速だったのに対し、『ライカー』はCVT(Continuously Variable Transmission=連続可変トランスミッション)のオートマチック・トランスミッションを採用。ライダーが変速する必要がなくなったので、トライク史上もっとも運転が簡単な一台となった。

軽量化とスタビリティ(安定性)の向上によって走りの楽しさもランクアップ。さらにパッセンジャーシートや外装パーツを豊富に揃え、そのカスタム性によってオリジナリティも演出することもできる。パーツは簡単に交換できるように設計されているという。

少し気になるのはボディサイズだ。全長が2352mmと大型バイク並みに長く、車幅は1509mmで軽自動車とほぼ同じ。これに対して全高は1062mm、地上高は112mmとかり低い。スポーツカーでいえば、ケータハム『セブン』並の低重心だ。それでなくても注目されるトライクだが、未来的なデザインとの相乗効果で目立ち度はかなり高い。

エンジンはロータックス製の600ccと900ccの2種類があり、ダート走行を考慮してサスストロークを伸長し、ホイールが異なる「ラリーエディション」(900ccのみ)も兄弟車として設定した。ショックユニットは標準モデルがザックス製で、ラリーエディションはKYB(カヤバ)製を採用。面白いのはハンドルバーとフットレストの位置の調節ができること。乗り手の体格や好みで、あるいはロードとダートとの使い分けもできる。

Can-Amのリバーストライクはインパクト十分で、扱いやすさも二輪よりイージー

カナダのBRPといえば、スノーモービルの『Ski-Doo』やウォータークラフトの『Sea-Doo』といったプロダクトの生産で知られるが、かつてはモトクロスやエンデューロの世界選手権を席巻したオートバイメーカーだった。

親会社のボンバルディアは、中距離旅客機や鉄道車両、さらに航空宇宙産業にまで事業展開するコングロマリットで、このボンバルディア・グループからレジャービークルとその用品を扱う部門が独立したのがBPR(ボンバルディア・レクレーショナルプロダクツ)だ。「Can-Am」とは、トライクやATVをラインナップするブランド名である。Can-Amの三輪はそのスタイルだけで十二分なインパクトがあるが、それでいて扱いやすさは二輪よりもはるかにイージーだ。まだ日本ではなじみが薄いだけに、今後が注目される。

余談だが、アメリカ人が「Ryker(ライカー)」と聞くと、『新スタートレック(Star Trek: The Next Generation)』の主人公、ウイリアム・ライカーを思い出すらしい。もしかすると、未来的という共通項からイメージ作りに利用しているのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) BRP
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Can-Am Ryker オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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