「忙しいならやらなくていい」は絶対ダメ。妻は「あなたに言われたくない」と苛立つ
忙しそうな妻を気遣ったつもりなのに、なぜ逆に機嫌が悪くなるのか。三木さんは「妻たちは、当事者意識のない夫の姿勢に敏感に反応しているのです」と指摘する。
「『忙しいならやらなくていいよ』と言われると、妻は『(何もやっていない)あなたに言われたくない』と感じ、よけいに苛立ちます。また、『手伝う』という言葉からも家事への当事者意識の低さが伝わり、相手の怒りを買う可能性が高い。これらのNGワードを発すると、家族としての自覚がない夫だと見なされるでしょう」(三木さん、以下同)
「手伝うよ」は「俺がやっておく」に言い換える。家事のNGワードを言わない方法
では、妻の逆鱗に触れる家事の「NGワード」の具体例を見ていこう。三木さんは、夕飯時に「ご飯なにがいい?」と妻に聞かれたときの返答にも注意が必要とアドバイスする。
「『ご飯、何がいい?』と聞かれ、『簡単なものでいいよ』と答えるのはNGです。夫にすればわがままを言わないように配慮したつもりかもしれませんが、毎日献立を考える妻は『簡単な料理なんかないよ』と言いたくなるでしょう。この場合、自分で食事を用意しないなら、できるだけ具体的なメニューを伝えるのが得策です。また、『今日は僕が作るよ』と炊事を買って出たり、外食に誘うなどの提案をしたりすると、妻との口論を避けることができます」
料理を担当する妻は「メニューを考えること」が面倒なのであり、「簡単なものでいいよ」という返事ではなんの助けにもならない。むしろ、夫からメニューを提案すれば「考える」というプロセスが省略されるため、その分だけ妻の負担が減って喜ばれるわけだ。
「先ほどお話したように『手伝うよ』もイラッとされやすいNGワードです。こういうケースでは、『俺がやっておくよ』という当事者意識が感じられる言葉に言い換えるといいでしょう。その際は、“やってあげる感”が伝わってしまうドヤ顔にならないよう注意してください」
それでも、気をつけていたNGワードをつい口にしてしまうケースもあることだろう。そのときは「まず、妻がなぜ怒ったのかを理解する必要があります」と三木さんは言う。
「ケンカになると『そんなつもりはなかった』と自己弁護に走りがちですが、怒った妻に言いわけは通用しません。相手が自分の言葉のどこに引っかかり、どんな点にイライラしたのかについて耳を傾け、妻の気持ちを理解した上で謝罪しましょう。とりあえず謝るという姿勢では、『なんで私が怒っているのか本当にわかってる?』と怒りを増幅させる可能性があります」
日頃から家事育児に参加して「信頼貯金」を貯めれば、やがてNGワードはなくなる
NGワードは、妻との現在の関係性によっても変わってくるものだ。日頃から主体的に家事をしている夫に対しては、妻も「お前が言うな」という感覚にはならないという。
「家事に参加しようとせず、当事者意識も低い。そんな姿勢で耳障りのいい言葉だけをかけても、妻に響くはずがありません。『やらなくていいよ』という言葉自体が妻の逆鱗に触れるわけではなく、普段のあなたの積み重ねに対して怒っていると考えてください」
そもそも、ささいな言葉ひとつで妻を怒らせてしまうのは、お互いの信頼関係が崩れかけている証し。日頃から信頼関係が築けていれば、不要な口論は避けることができるという。
「私は『信頼貯金』と表現しているのですが、夫婦間の信頼は増えたり減ったりするもの。毎日の家事にしっかり参加し、信頼貯金を貯めておけば多少の失言ではケンカに発展しません」
そのうえで妻の信頼度を高めるコツがあるとするなら、それは「日頃の感謝の気持ちをきちんと言葉で伝え、妻をほめること」と三木さんはアドバイスする。
「もっとも効果的な言葉は『ありがとう』です。妻をほめる際は、できるだけ具体的な例を挙げてほめてください。自分で家事をしてみれば、妻が普段どれだけ要領よく家事をこなしているか、どんな工夫をしているのか、その大変さがわかるはず。実際に家事をして気づいたポイントを伝えてほめ、その場できちんと感謝の気持ちを伝えることが大切です」
NGワードは、家事・育児に参加してないからこそNGとなりうる。妻が「何に怒り」「何をがんばっているのか」。そこにちゃんと向き合えば信頼関係が深まるかもしれない。
最後にアドバイザーからひと言
「家事の大変さを理解し、感謝の気持ちを持つことで自然とNGワードも減っていきます!」
Text by Akeno Kataoka(Seidansha)
Edit by Miki Ohnuki(Seidansha)