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第67回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデス・ベンツGLE──ミニバンにも使える中核SUV

メルセデス・ベンツでは、今も昔も「C」「E」「S」の3つのクラスがセダンのラインナップの中心となっている。これはSUVも同じだ。『Gクラス』を除けば、『GLC』『GLE』『GLS』と、頭に「GL」のつく「C」「E」「S」の3つのクラスが存在する。このうち中核を担うのが『GLE』である。道路環境の狭い日本では比較的コンパクトな『GLC』が売れ筋となっているが、グローバルで見れば『GLE』のほうが人気は高い。10月初め、フルモデルチェンジした新型『GLE』がパリサロン2018でワールドプレミアされた。

『Mクラス』に始まったGLシリーズの『Eクラス』が7年ぶりフルモデルチェンジ

『GLE』は、これまでに4世代、累計200万台以上が販売されてきた人気モデルだ。1997年に『Mクラス』としてデビューし、二度のフルモデルチェンジを経て、2015年からGL
シリーズの『Eクラス』を意味する現在の『GLE』という名称に改められた。

このクルマが登場する以前のメルセデス・ベンツのSUVには、堅牢なクロスカントリーカーである『Gクラス』しかラインナップされていなかったが、『Mクラス』はより乗用車的で、カジュアルなSUVとして人気を集めた。日本でも『ML 320』や『ML 55 AMG』などのモデルが販売されていたので、覚えている人も多いだろう。2016年にはクーペスタイルの『GLEクーペ』もラインナップに加えている。

パリサロンで発表された新型『GLE』は、名称変更前の3代目『ML』から数えると7年ぶりのフルモデルチェンジ。次世代SUVをリードする存在として、『Sクラス』にも採用されていないテクノロジーを採用するなど気合十分のニューモデルとなっている。

スマートなデザインの『GLC』に対し、新型『GLE』はSUVらしい力強さで差別化

エクステリアは、『CLS』から採用されるメルセデス・ベンツの次世代デザイン哲学「Sensual Purity(官能的な純粋さ)」に則ったもの。八角形の直立したグリル、ボンネットの2つのパワードーム、クロムメッキのアンダーガードがSUVらしい力強さを醸し出し、どちらかというとスマートなデザインの『GLC』との差別化をはかっている。

もっとも、先代モデルとの一番の違いは、むしろたくましくなったフェンダーまわりかもしれない。筋肉質と表現したくなるほど“踏ん張り”を感じさせる形状となり、樹脂製のフェンダーフレアも装備された。ここに収まるホイールは18~22インチだ。

無駄なプレスラインを極力省き、よりスタイリッシュになったボディは空力性能にも優れており、Cd値(空気抵抗係数)は先代モデルの0.32から0.29へと大幅に向上した。これはセダン並の数値で、もちろんクラス最高レベルとなる。

3列シートの7人乗り仕様も選べる。『GLE』はミニバン的な使い方も可能になった

インテリアは、サルーンのようなラグジュアリーさとSUVらしいスポーティさとが融合している。『GLC』などでは丸型だったエアベントが角型となっている点や、アシストグリップを兼ねたデザインとなるワイドなセンターコンソールが目新しい。

12.3インチの大型ディスプレイを2つ備えるインフォテイメントシステムには、むろん「Hey メルセデス!」と話しかけて操作する話題の音声インターフェイス「MBUX」を搭載する。オーバーヘッドコンソールにはカメラが内蔵され、ディスプレイに近づけた手を検知することにより、ジェスチャーで操作することも可能だ。720×240ピクセルの解像度をもつ約45×15cmのヘッドアップディスプレイも新たに採用された。

新しいといえば、3列目のシートを備えた7人乗りが選択できるようになった点も見逃せない。ランドローバー『ディスカバリー』やマツダ『CX-8』など、3列シートを備えるSUVはミニバン的な使い方ができるので日本でも人気が高い。これまでのメルセデス・ベンツにはなかったラインナップだけに、ここに魅力に感じる人もいるだろう。

48Vによるエアサスペンションを採用し、「ハイテクSUV」へと進化した新型『GLE』

発売当初のパワートレインは、3.0L 直6ツインターボに48Vマイルドハイブリッド「EQブースト」を組み合わせた「GLE 450 4MATIC」のみ。追ってディーゼルエンジンやプラグインハイブリッドも追加されるという。トランスミッションは9速ATの「9Gトロニック」で、「4MATIC」の名が表すように四輪駆動システムが組み合わされる。

メカニズムで注目したいのは、アクティブサスペンションの一種である「Eアクティブ・ボディ・コントロール」の採用だ。ひと言でいえば、48Vシステムによって四輪のエアスプリングとダンパーを独立して制御する電子制御エアサスペンションシステムだが、ユニークな「カーブ傾斜機能」を採用する。フロントガラスに搭載されたステレオカメラが路面をスキャニングし、なんとボディを内側に傾かせる制御を行うという。それによりコーナーリング時に乗員は遠心力を感じることがなくなり、スポーティな走りを実現する。

「アクティブストップアンドアシスト機能」「アクティブステアリングアシスト」といった運転支援システムは、もはやプレミアムSUVには当たり前に装備されるものだ。『GLE』では、さらに渋滞を検知すると自動的に減速し、0~60km/hまでの速度域で前車に追従する「アクティブ・テールバック・アシスト」を新採用。後方から緊急車両がきた場合に、自動的に退避場所を検知し、ステアリングを操作して道を譲る機能も備える。

ライバルはアウディ『Q5』やBMW『X5』。3列シートの採用で市場に一石を投じる

すでに日本では、『GLC』と『GLS』、そして現行の『GLE』、さらに『GLCクーペ』『GLEクーペ』『Gクラス』と、メルセデス・ベンツのすべてのSUVモデルがラインナップされている。7年ぶりにフルモデルチェンジされた新型『GLE』が販売されることは既定路線だ。拡大されたボディが都市部ではややネックになるかもしれないが、3列シートを備えるプレミアムSUVの次世代型として市場に一石を投じることは間違いない。

日本導入時期や価格は未定。ライバルとなるのは、アウディ『Q5』、BMW『X5』、ジャガー『Fペイス』、ランドローバー『レンジローバー スポーツ』だ。多くの車種がひしめく激戦区だが、ミッドクラスSUVの新たな選択肢として魅力的な一台となりそうだ。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Mercedes-Benz GLE オフィシャル動画
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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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