「実質的負担」と「不公平感による不満」。家事をめぐる妻の苛立ち原因はふたつある
家事の課題は家庭によってさまざまだ。家事分担の前にまず課題を洗い出しておかないと、「家事をシェアしても、結局は失敗する場合が多い」と三木さんは指摘する。
「妻が抱える家事のイライラの原因は二つあります。料理や掃除の手間がかかるという『負担』と、自分ばかりがやっているという不公平感からくる『不満』です。家事をシェアする場合も、ただ負担を分けただけでは不満は解消されません。まずは夫婦で話し合って、家事の課題を明確にしてから先に進みましょう」(三木さん、以下同)
家事の分担に目がいくと、どうしても妻の「実質的な負担」ばかりにとらわれる。しかし、同時に妻が抱える「不満」も解消しなくてはならないと三木さんは言う。
妻から指示を受ける「トップダウン型」と夫もリーダー役となる「プロジェクト型」
妻が抱える不公平感という「不満」も考慮したうえで、どのように夫婦間で家事をシェアすべきなのか。三木さんによれば、家事のシェアスタイルには大きく分けて「トップダウン型」と「プロジェクト型」の二つの方法があるという。
「『トップダウン型』は多くの家庭が採用している分担法で、妻がマネージャー役、夫がサポーター役になります。マネージャーの妻が担当を振り分け、サポーターの夫はその指示通りに料理や掃除などの自分に任された家事を行うのです。もうひとつの『プロジェクト型』は、料理、掃除、洗濯などのプロジェクト=家事の種類ごとにリーダーを据え、そのリーダーが責任を持ってプロジェクトを回すというもの。しかし、どちらの型が正解ということはなく、それぞれの家庭のライフスタイルに合わせて選んでも問題ありません」
そのうえで、あえて三木さんがおすすめするのがプロジェクト型のシェア法だ。
「プロジェクト型は妻の指示待ちにならず、夫の自主性も高まるというメリットがあります。とはいえ、本格的な家事の経験が少ない男性は、いきなりプロジェクト型のリーダーになるのはハードルが高いと感じるかもしれません。その場合、まずはトップダウン型で家事をシェアし、家事スキルが向上してからプロジェクト型に移行するのもアリです」
しかし、そうなれば仕事が忙しいという言いわけは通用しなくなる。リーダーになったら仕事と家事の負担を一気に背負うことになるのでは、と心配する人もいることだろう。
「プロジェクトのリーダーになったからといって、担当家事をひとりで遂行しなければならないわけではありません。たとえば、子どもの塾の迎えが夫の担当だとしても、残業が決まったときには『今日は遅くなるからよろしく』と妻に代打を頼んでもいいのです。プロジェクトリーダーは、あくまで上手くプロジェクトが回る方法を考えるポジション。そう考えれば、精神的にも肉体的にも負担は軽くなると思います」
家事の分担がうまくいけば夫婦がお互いを必要な存在と認め合い、チーム感が高まる
じつは、夫婦間の家事シェアにはさまざまメリットがあるという。「家事分担が適切になされると、夫婦の『チーム感』が高まる効果もあります」と三木さんは話す。
「家事シェアに失敗すると、不公平感による不満から、妻は『夫が帰ってこなければいいのに』と思い始め、円満な家庭を築くのが難しくなります。一方、シェアに成功している家庭の妻は、夫が帰ってきてくれると助かるので『早く帰ってきてほしい』と思うようになる。お互いが必要な存在と認め合えれば、夫婦のチーム感も高まっていくはずです」
ミドル男性のなかには「夫婦はチーム」という発想がなかった人もいるかもしれない。しかし、妻の負担を軽減して円満な家庭を築くという目的を考えれば、この発想にはとても腹落ち感がある。善は急げだ。さっそく家事シェアを取り入れてみてはどうだろうか。
最後にアドバイザーからひと言
「家庭の状況は常に変わっていきます。一度決めた夫婦間の家事・育児の分担も、定期的に見直していきましょう」
Text by Yoshiaki Murata(Seidansha)
Edit by Miki Ohnuki(Seidansha)