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第25回 | フォルクスワーゲンの最新車デザイン・性能情報をお届け

VW Tクロス──この小型カジュアルSUVは日本でも売れる

フォルクスワーゲン(VW)は、年間の世界販売台数がグループ全体で1074万台に達する世界最大規模の自動車メーカーである。主力はSUVを含めたVWブランドの乗用車。しかし、VWのラインナップにも「穴」というべき空白地帯があった。それがBセグメントのカジュアルなコンパクトSUVだ。10月下旬、VWはその空白を埋めるべく新型のコンパクトSUV『Tクロス』を発表した。アムステルダム、上海、サンパウロの世界3カ所で同時に発表イベントを行うほどの力の入れようである。

コンパクトカジュアルSUV『Tクロス』は、2017年に登場した『Tロック』の弟分

VWのSUVは全車種の販売が好調だが、メインは『トゥアレグ』や『ティグアン』といったDセグメント以上のモデルだ。とりわけ『ティグアン』は大きな成功を収め、2017年に前年比40%増となる72万台を販売。ブランド成長の牽引役ともなっている。そこでVWが打ち出したのが、2025年までに全世界のSUVラインナップを30車種以上に拡大するという計画だ。今回発表された『Tクロス』はその尖兵となる。

VWのコンパクトSUVには、すでに2017年秋に販売を開始した『Tロック』がある(日本未導入)。『Tロック』は従来のモデルに見られたSUV然としたルックスと異なり、スポーティなハッチバックスタイルをもつ。こちらも販売は非常に好調で、「R」グレードやカブリオレモデルなどの派生車両もスタンバイしている。

『Tクロス』はコンパクトカジュアルSUVと謳われ、この『Tロック』の弟分となる。VWのSUVラインナップのエントリーモデルにも位置づけられるだろう。

新型『ポロ』とプラットフォームを共有するが、SUVらしくボデイはひと回り大きい

『Tクロス』は、2016年春に発表されたコンセプトモデル『Tクロス ブリーズ』の市販バージョンとなり、VW『ポロ』やアウディ『A1』と共通のプラットフォーム「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)AO」をベースに開発された。

ボディサイズは全長4107mm×全幅1760mm×全高1558mmと、『ポロ』よりそれぞれ54mm長く、10mm広く、97mm高い。モジュラープラットフォームは共通でも、SUVだけにボデイは『ポロ』からワンサイズ大きくなっている。とはいえ、兄貴分の『Tロック』に比べると全長は127mm短い。この兄弟車の関係は、「ポロとゴルフの関係」をそのままSUVに置き換えてイメージするとわかりやすいかもしれない。

パワーユニットも『ポロ』のものを引き継いだ。1.0L 3気筒ガソリンターボエンジン「TSI」は、最高出力95psと115psの2つの仕様を用意。そのほか、最高出力150psを発揮する1.5L 4気筒ガソリンターボエンジン「TSI」、さらに最高出力95psの1.6L 4気筒ディーゼルターボエンジン「TDI」もラインナップしている。

トランスミッションは、1.0Lガソリンエンジンの95ps仕様が5速MT、115ps仕様が6速MTと7速DSG(デュアルトランスミッション)。1.5Lガソリンエンジンと1.6Lディーゼルは7速DSGのみで、駆動方式は全モデルがFFで統一されている。

VW最小SUVと侮るなかれ。室内には5名が乗車でき、ラゲッジ容量は最大で1281L

エクステリアは、L字に光るLEDデイタイムランニングライトを備えたヘッドライトや一直線につながったフォグランプガーニッシュが特徴的。ヘッドライトは新型『ポロ』によく似ていて、全体のフォルムは『Tロック』より丸みを帯びた印象だ。しかし、サイドの直線的なキャラクターラインが最新のフォルクスワーゲンらしさを表している。

VW最小のコンパクトSUVながら、室内には5名が乗車できる十分な空間をもつ。ラゲッジルームも広く、容量は通常時で385~455L、14cmのスライド機構を備えるリアシートを倒せば、最大1281Lのフラットなスペースを作り出すことができる。これなら少人数のキャンプや、アクティビティ用のアイテムなどを積むときに重宝するだろう。オプションの折りたたみ式の助手席を倒せば、長尺物も積載することも可能だ。

インテリアでは、ナビゲーション画面を表示できるデジタルメーターを採用し、8インチの「アクティブ・インフォ・ディスプレイ」も装備。デジタル化されたコクピットは立体的な造形で、ドライバーは直感的に操作することができる。センターコンソールにはスマートフォン用のワイヤレス充電用パッドやUSBポートを4系統搭載した。

小さくても、先進安全運転支援システムは上級車ゆずりだ。フロントアシストエリアモニタリングシステム、車線逸脱警報システム、ブラインドスポット検出などの安全装備が標準装備され、オプションとなるが、アダプティブクルーズコントロールやパークアシスト、ライトアシストメインビームといった運転支援システムも用意されている。

『Tクロス』の日本上陸は2019年? 導入時の車両価格は250万円を切る可能性も

BセグメントのコンパクトSUVは、国内ではトヨタ『C-HR』やマツダ『CX-3』、日産『ジューク』などの個性的なモデルがひしめき合い、輸入車もアウディ『A2』、プジョー『2008』、ルノー『キャプチャー』、ミニ『クロスオーバー』と、まさしく飽和状態だ。コンパクトながらも、このクラスのユーザーには美意識に一家言ある人が多い。

しかし、『Tクロス』もそれらのクルマにけっして負けていない。クオリティは上級モデル顔負けで、最後発であることを生かしてライバルをじっくり研究し、VWらしく「勝ちにきた一台」という印象を受ける。国内で人気が爆発する可能性も十分あるだろう。

ドイツ本国での価格は約230万円から。日本導入時には250万円を切る価格も期待できるかもしれない。日本導入は2020年の予定だが、早ければ2019年中の可能性もある。カジュアルなコンパクトSUVに魅力を感じるなら、待っている価値はありそうだ。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Volkswagen AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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The all-new T-Cross オフィシャル動画
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第29回 | フォルクスワーゲンの最新車デザイン・性能情報をお届け

ゴルフ誕生45周年──史上もっとも成功した欧州車の秘話

フォルクスワーゲンは、アウディやポルシェなどを含めたグループ全体の販売台数がおよそ1083万台に上る世界最大の自動車メーカーだ。「Volkswagen」という社名は、ドイツ語で「国民車」を意味する。その業績を支えているのは、「世界一の小型車」といってもいい『ゴルフ』。デザイン、エンジン、走り、あらゆる部分で完成度が高く、ヨーロッパのCセグメントの頂点に君臨し続けている。その『ゴルフ』が誕生45周年を迎えた。

もっとも成功した欧州車。世界中で誰かが40秒に1台、『ゴルフ』を購入している!

初代『ゴルフ』がドイツ・ヴォルフスブルク工場で量産を開始したのは、1974年3月のことだ。以来、今日までに販売した台数は3500万台以上。この数字を計算すると、世界中で誰かが40秒に一台、『ゴルフ』を購入していることになるという。ゆえに、「史上もっとも成功した欧州車」とされている。日本国内でも依然、高い人気を集めている。

メイン写真が初代の『ゴルフI』。50代以上には、いまだにこの初代モデルのイメージが強い人もいるのではないか。下の写真は1991年に発表された3代目『ゴルフIII』だ。

ナチス政権による「国民車計画」で生まれた『ビートル』の後継モデルとして誕生

フォルクスワーゲンは、戦前にナチス政権による事実上の国策企業として設立された自動車メーカーだ。アドルフ・ヒトラーは「国民車(フォルクスワーゲン)」計画を提唱し、それに従い、かの有名なフェルディナント・ポルシェが先進的なメカニズムをもつ流線型の小型車を開発した。そのクルマがのちの『タイプ1』、つまり『ビートル』である。

『ゴルフ』は、この『ビートル』の後継として開発されたハッチバック型のコンパクトカーだ。デザインを担当したのは、あのジョルジェット・ジウジアーロ。しかし、当時は『ゴルフ』が生産台数で『ビートル』を凌ぐほどの人気モデルになるとは、誰も考えていなかったに違いない。下の写真は、1997年に発表された4代目、『ゴルフIV』だ。

フォルクスワーゲンが明かしたビッグニュース。今年10月に新型『ゴルフ』が登場

フォルクスワーゲンは、5月にドイツで開催した年次株主総会において、ビッグニュースを明らかにした。今年10月に、8代目となる新型『ゴルフ』を初公開すると発表したのだ。同社が公開したティザースケッチを見ると、外観上は現行モデルと大きく変わっていないが、次期モデルは新開発の48Vマイルドハイブリッドシステムが搭載されるという。

『ゴルフ』のキャッチフレーズは、「『ゴルフ』を超えるのは、いつも『ゴルフ』」。モデルチェンジをしても、きっと『ゴルフ』は「世界一の小型車」であり続けることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Volkswagen AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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