コンパクトカジュアルSUV『Tクロス』は、2017年に登場した『Tロック』の弟分
VWのSUVは全車種の販売が好調だが、メインは『トゥアレグ』や『ティグアン』といったDセグメント以上のモデルだ。とりわけ『ティグアン』は大きな成功を収め、2017年に前年比40%増となる72万台を販売。ブランド成長の牽引役ともなっている。そこでVWが打ち出したのが、2025年までに全世界のSUVラインナップを30車種以上に拡大するという計画だ。今回発表された『Tクロス』はその尖兵となる。
VWのコンパクトSUVには、すでに2017年秋に販売を開始した『Tロック』がある(日本未導入)。『Tロック』は従来のモデルに見られたSUV然としたルックスと異なり、スポーティなハッチバックスタイルをもつ。こちらも販売は非常に好調で、「R」グレードやカブリオレモデルなどの派生車両もスタンバイしている。
『Tクロス』はコンパクトカジュアルSUVと謳われ、この『Tロック』の弟分となる。VWのSUVラインナップのエントリーモデルにも位置づけられるだろう。
新型『ポロ』とプラットフォームを共有するが、SUVらしくボデイはひと回り大きい
『Tクロス』は、2016年春に発表されたコンセプトモデル『Tクロス ブリーズ』の市販バージョンとなり、VW『ポロ』やアウディ『A1』と共通のプラットフォーム「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)AO」をベースに開発された。
ボディサイズは全長4107mm×全幅1760mm×全高1558mmと、『ポロ』よりそれぞれ54mm長く、10mm広く、97mm高い。モジュラープラットフォームは共通でも、SUVだけにボデイは『ポロ』からワンサイズ大きくなっている。とはいえ、兄貴分の『Tロック』に比べると全長は127mm短い。この兄弟車の関係は、「ポロとゴルフの関係」をそのままSUVに置き換えてイメージするとわかりやすいかもしれない。
パワーユニットも『ポロ』のものを引き継いだ。1.0L 3気筒ガソリンターボエンジン「TSI」は、最高出力95psと115psの2つの仕様を用意。そのほか、最高出力150psを発揮する1.5L 4気筒ガソリンターボエンジン「TSI」、さらに最高出力95psの1.6L 4気筒ディーゼルターボエンジン「TDI」もラインナップしている。
トランスミッションは、1.0Lガソリンエンジンの95ps仕様が5速MT、115ps仕様が6速MTと7速DSG(デュアルトランスミッション)。1.5Lガソリンエンジンと1.6Lディーゼルは7速DSGのみで、駆動方式は全モデルがFFで統一されている。
VW最小SUVと侮るなかれ。室内には5名が乗車でき、ラゲッジ容量は最大で1281L
エクステリアは、L字に光るLEDデイタイムランニングライトを備えたヘッドライトや一直線につながったフォグランプガーニッシュが特徴的。ヘッドライトは新型『ポロ』によく似ていて、全体のフォルムは『Tロック』より丸みを帯びた印象だ。しかし、サイドの直線的なキャラクターラインが最新のフォルクスワーゲンらしさを表している。
VW最小のコンパクトSUVながら、室内には5名が乗車できる十分な空間をもつ。ラゲッジルームも広く、容量は通常時で385~455L、14cmのスライド機構を備えるリアシートを倒せば、最大1281Lのフラットなスペースを作り出すことができる。これなら少人数のキャンプや、アクティビティ用のアイテムなどを積むときに重宝するだろう。オプションの折りたたみ式の助手席を倒せば、長尺物も積載することも可能だ。
インテリアでは、ナビゲーション画面を表示できるデジタルメーターを採用し、8インチの「アクティブ・インフォ・ディスプレイ」も装備。デジタル化されたコクピットは立体的な造形で、ドライバーは直感的に操作することができる。センターコンソールにはスマートフォン用のワイヤレス充電用パッドやUSBポートを4系統搭載した。
小さくても、先進安全運転支援システムは上級車ゆずりだ。フロントアシストエリアモニタリングシステム、車線逸脱警報システム、ブラインドスポット検出などの安全装備が標準装備され、オプションとなるが、アダプティブクルーズコントロールやパークアシスト、ライトアシストメインビームといった運転支援システムも用意されている。
『Tクロス』の日本上陸は2019年? 導入時の車両価格は250万円を切る可能性も
BセグメントのコンパクトSUVは、国内ではトヨタ『C-HR』やマツダ『CX-3』、日産『ジューク』などの個性的なモデルがひしめき合い、輸入車もアウディ『A2』、プジョー『2008』、ルノー『キャプチャー』、ミニ『クロスオーバー』と、まさしく飽和状態だ。コンパクトながらも、このクラスのユーザーには美意識に一家言ある人が多い。
しかし、『Tクロス』もそれらのクルマにけっして負けていない。クオリティは上級モデル顔負けで、最後発であることを生かしてライバルをじっくり研究し、VWらしく「勝ちにきた一台」という印象を受ける。国内で人気が爆発する可能性も十分あるだろう。
ドイツ本国での価格は約230万円から。日本導入時には250万円を切る価格も期待できるかもしれない。日本導入は2020年の予定だが、早ければ2019年中の可能性もある。カジュアルなコンパクトSUVに魅力を感じるなら、待っている価値はありそうだ。
Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Volkswagen AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)