ソリュシャンの横にはヤンとルークが、その前にはシャルティアとセバスが馬車の中にいる。ヤンはソリュシャンを抱き寄せルークは優雅にタバコを吸っている。
「兄ちゃんすげぇーぜ! 見て! ほら! 体が吸い込まれていく!」
「喧しいぞ、仕事前に何時も何時も喧しい。仕事は静かにクールにやるものだ」
ヤンはソリュシャンの胸の中に手を入れわしゃわしゃとかき回している、流石スライム。
必死に声を出すまいと堪えているソリュシャンだが息遣いが荒くなっていく。
「ルーク・バレンタイン様、ヤン・バレンタイン様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか」
「なんだセバス、言ってみろ」
「ありがとうございますルーク・バレンタイン様、なぜ至高の御方々がこのような場所に? 確かアインズ様からは外出禁止令が出ていたはず」
セバスの言葉を聞いたシャルティアは目を逸らし焦った様子になる。
「あ~… シャルティアがいいって言ったから同行した、アインズには内緒だぞ」
ルークの言葉でセバスはシャルティアを見るが既に目を逸らしている、やれやれといった感じでルークの方に目をやるとヤンが話しかけてきた。
「なぁセバス別にいいじゃんか減るもんでもねぇしよ、それに話を聞けばシャルティアだけでの任務らしいじゃん? 一人は危ないだろぉ? だったら護衛は必要じゃん?」
話しながらもソリュシャンで遊ぶヤン、ソリュシャンはそろそろ限界みたいだ。
「過ぎた事は仕方ありません、しかし次はありませんからね」
セバスが言う、途中から横に座っているシャルティアの方を向いて話している。シャルティアは冷や汗を流す。
それから直ぐに馬車が止められた、外に出てみると盗賊達が居る。盗賊の一人が何かを話していたが途中で言葉が途絶える、次の瞬間体がバラバラになりその場に崩れ落ちる。
「やかましいぞ」
いつの間にか盗賊達の後ろにいるルーク、手にはナイフが握られている。ルークに気がついた盗賊達は一斉にルーク目掛け武器を振り上げるがそのまま一人を除き先ほどの盗賊と同じ運命を辿る。
「お見事でございますルーク・バレンタイン様」
「いやなに、準備運動にすらならなかったさ」
残された盗賊はヤンが捕まえていた、盗賊の話では近くに拠点の洞窟がある事、そして今回の目的武技を使える者が居る事が分かった。
「おにいたま~、追加はいりま~す!」
ケタケタ笑いながら盗賊をルークへ目掛け投げるヤン、「へ?」と言う声を出すとそのまま盗賊と衝突し少し飛ばされる。盗賊は全身打撲により死亡、ルークは鼻血を出しながらヤンに殴りかかる。
「野郎オブクラッシャー!」
そんな二人を見てセバスとシャルティアは如何したら良いか解らず困惑する。因みにソリュシャンは遊ばれすぎて恍惚の笑みのまま気絶している。
あの後ルークとヤンの小競り合いが終わるとセバスとソリュシャンは王都へ向け馬車で移動を開始した、そして吸血鬼御一行は盗賊の拠点の洞窟にやってきた。
「上上ェ! 下下ァ! 左右左右ィイ! はぁ… こっちだけズルして無敵モードだもんなぁ~、最高に〇起モンだぜぇ! ヒャァッハッハッハッハッ!」
ヤンが先行して雑魚を蹴散らしていく、最初はシャルティアがやると言っていたのだがヤンが無理を言って現在に至る。
「兄貴ぃ、こいつら全然雑魚じゃん? 本当に武技使いなんて居るの?」
「なぁに直ぐに出てくるさ… ほら言ったそばから」
洞窟奥から一人の男が出てくる。名はブレイン・アングラウス、腰には刀を携え余裕たっぷりに言い放つ。
「こんな所に何しに来た、しかも女連れで。もしk」
「確保ぉおおおおおおおお!」
「うぉおおおおおおお!」
話している最中だと言うのにルークが声を上げる、それに反応してヤンが目にもとまらぬ速さでブレインを簀巻き状態にする。
「ぐっ… くそう!」
必死に抜け出そうともがくがブレインの上にヤンがドカッと座る。
「兄ちゃん、こいつ武技使えるってなんでわかったんだぁ?」
「… さぁ?」
「は? わかんないの?」
「聞けばわかるだろ、他の奴より強そうだしな」
ヤンもシャルティアもルークをこいつ大丈夫か?みたいな目で見る。ルークは気にせずブレインに近づき問いかける。
「お前、武技が使えるよな?」
「ぐっ、使えたとしたらどうするんだ?」
「まぁいい、とりあえず持って帰るか」
答えを聞き出す前にヤンごと投げ飛ばす、ヤンは見事に着地するがブレインはなすすべなく地面に激突し気絶する。
「おい犬の餌! さっきの仕返しか?」
またしても殴り合う兄弟。シャルティアはまたかといった様子で呆れる、もう慣れたらしい。自分の仕事である武技の使い手ブレインを転移でナザリックに送ったのだった。