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第3回 | ホンダの最新車デザイン・性能情報をお届け

これがホンダの答え──ラゲッド・オープンエアビークル

「ファン・ドライビング」とは何か? その問いに対する北米ホンダの答えが『ラゲッド・オープンエアビークル・コンセプト』だ。ピックアップトラックの『リッジライン』と全天候型のオフロードビークル『パイオニア1000』を組み合わせて作った一台で、シートはホットハッチの『シビック タイプR』のものを使用。ビジュアルのインパクトも大きく、まさに荒野が似合う究極のオフローダーといった趣なのである。

ピックアップトラック『リッジライン』をベースにしたアグレッシブなオフローダー

カスタムカーのイベントといえば、日本では東京オートサロンがよく知られているが、アメリカにもSEMAショーという世界最大規模の見本市がある。毎年秋に行われ、今年はちょうどハロウィンと重なる10月末にネバダ州ラスベガスで開幕した。

そこで北米ホンダが発表したのが、「Honda Rugged Open Air Vehicle Concept(ホンダによる頑丈なオープンエア車)」と題したコンセプトカーである。ベースはピックアップトラックの『リッジライン』とのことだが、そのスタイリングはあまりにも攻撃的で、まるでアタックバギーかATV(All Terrain Vehicle=全地形対応車)のようだ。

アメリカの自動車市場ではピックアップトラックの人気が根強く、その販売台数はセダンを上回るほど。製品単価が高いこともあってメーカーも開発に力を入れおり、ベストセラーのフォード『Fシリーズ』を筆頭に、トヨタの『タコマ』『タンドラ』、日産の『タイタン』『フロンティア』、GMCの『キャニオン』、シボレーの『コロラド』『シルバラード』といった多数のモデルが存在する。北米自動車市場の激戦区といってもいい。

そのなかにあって、ホンダはピックアップトラックのイメージが弱かった。そこで2016年に2代目モデルに刷新した『リッジライン』のイメージを一新するため、バハ1000やバハ500などのデザートレースに積極的に参加。優秀な成績を収めたこともあって、狙い通りに販売台数を引き上げることに成功した。同時に、ホンダは、アメリカではいまなおモータースポーツでの成績が販売に強い影響を与えることを明らかにしたことになる。

オープンエアスタイルやパーツは、ホンダのATV『パイオニア1000』から受け継ぐ

ホンダがSEMAショーで公開したコンセプトカーを仮に『ラゲッド』と呼ぼう。『リッジライン』をベースにしながら上部はルーフを取り払ってパイプケージのみ。長いサスペンションとフロントの大きなスキッドプレートが目を引く。ヘッドライト周りにはわずかに『リッジライン』の面影を残しているが、もはやまったくの別物だ。

スペックは公表されていないが、『リッジライン』の3.5L V6エンジンをそのまま搭載していると予想されている。V8のシボレーやGMCと比べると非力といわれるが、『ラゲッド』に見た目どおりの軽量化がなされていれば十分な動力性能を発揮するだろう。

基本構成は『リッジライン』と同じだが、コンセプトやいくつかのパーツはATVの『パイオニア1000』から受け継いでいる。ATVは林業や牧場など使われる実用車かオフロードレース用モデルが多く、いずれにせよ一般的なピックアップトラックよりもハードでスポーティなイメージだ。『ラゲッド』が採用するオープンエアのスタイルも、間違いなく『パイオニア1000』に由来しているはずである。

4人乗りのシートは、『シビック タイプR』のバケットシートに『パイオニア1000』の防水性の高い表皮を合わせたもの。ダッシュボードからは、本来そこにあるディスプレイが取り外され、よく見ると「RAM MOUNT」のロゴが入ったスマートフォンホルダーが装着されている。ステアリングホイールやドアも『パイオニア1000』からそのまま流用。荷台はそれほど広くないが、リアゲートを倒せばバイクも積むことができそうだ。

オフロード大国アメリカの人々に残る、サンドバギー『FL オデッセイ』のイメージ

じつは、ATVの分野ではホンダは先駆的存在で、1970年代から80年代にかけてバルーンタイヤを履かせたオフロード用三輪バギーの『ATCシリーズ』や四輪の『FL250オデッセイ』『FL350オデッセイ』(北米のみ)を販売していた。

アメリカの人々には、いまだにそのイメージが強烈に残っている。それゆえ『ラゲッド』についても「イメージは当時のオデッセイそのもの」と評する人が多いようだ。その後、「オデッセイ」の名がホンダのプレミアムミニバンに受け継がれているのも面白い。

オープンエアではシートに貴重品を置き忘れるのは厳禁だが、アメリカにはいまだにオフロードモデルを愉しめる広大なフィールドが残されている。ATVを購入したユーザーが実際にどれほどオフロードに走りにいくかはわからない。しかし、アメリカでは、間違いなくセキュリティより「ファン・ドライブが大切」と考える人のほうが多数派なのだ。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Honda Motor
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第5回 | ホンダの最新車デザイン・性能情報をお届け

ホンダの電動化戦略に注目──Honda e、ついにデビュー

2017年の東京モーターショー。ホンダのブースでひときわ注目を集めたのが『Honda Urban EV Concept(ホンダ アーバン イーブイ コンセプト)』だ。可愛らしくて親しみやすく、どこか懐かしい感じがするのだが、なぜか近未来的な雰囲気を持ち合わせた一台だった。この『Urban EV Concept』を進化させた新型EVが『Honda e』。市販化を念頭に置いたプロトタイプとして、3月のジュネーブモーターショーで初お披露目となった。

『Honda e』は懐かしいのに新しい。ホンダが培ってきたスモールカーの知見を凝縮

なんとも愛らしいフォルムだ。それでいて、新しさも感じさせる。『Honda e』は、ホンダが初めてヨーロッパで販売するEVだ。プロトタイプではあるが、ほぼこのままの形で販売されることが予想される。

エクステリアでは、親しみやすさをシンプルかつクリーンに表現。ホンダがスモールカーで作り上げてきた走りの愉しさと愛着が伝わる。

フロントドアハンドルは欧州車に最近よく見られるポップアップ式。走行時はドアに収納されている。リアドアハンドルは、すぐには見つけられないかもしれない。よく見ると、ピラー内に埋め込まれており、なんともスタイリッシュだ。サイドミラーも廃し、カメラを利用した「サイドカメラミラーシステム」が採用された。これらの意匠により、全体に“塊感”のある雰囲気。ホンダいわく「シームレスなボディーデザイン」である。

インテリアには上質な素材を使用し、ラウンジのような心地良い空間を作り出した。インパネ周りはかなりスッキリとした印象を受ける。中央には直感的かつマルチタスクの操作が可能な大型ディスプレーが鎮座。コネクテッドサービスをはじめとする、さまざまな機能が使える。そして左右には、サイドカメラの映像が映し出されるモニターを設置している。後席には特筆すべき点はないが、シートベルトから想像すると2人がけだろう。

走行距離は200km、30分で80%の急速充電。都市で使いやすいEVコミューター

プラットフォームはEV専用に新開発された。その外観から、コンパクトなボディながらロングホイールであることがわかる。おそらく、街中での走りやすさを担保しつつ、高速道路などではしっかりとした直進安定性を実現することだろう。言い慣れた言葉を使えば、「取り回しの良さと走行性能が両立されたクルマ」といったところだ。

ユニークなのはリア駆動であること。モーターの設置場所は発表されていないが、フォルムから想像するとリア側の可能性が高い。そうなるとRR(リアエンジン・後輪駆動)となるわけだ。コンパクトモデルではかなりめずらしく、すぐに思い浮かぶのは第三世代のルノー『トゥインゴ』くらい。心なしか、フォルムも少し似ているような気がする。

モーターの出力やバッテリー容量も現時点では未発表だが、EVとしての性能は、走行距離200km以上を達成と発表されている。30分で80%までの充電が可能な急速充電にも対応しており、都市型コミューターとしての使い勝手に考慮した性能となっているようだ。

『Honda e』は今年夏に欧州の一部で販売開始。2020年には日本でも販売される?

ホンダが発表した「2019年ジュネーブモーターショー発信骨子」によると、「欧州における電動化をさらに加速させるため、2025年までに欧州で販売する四輪商品のすべてをハイブリッド、バッテリーEVなどの電動車両に置き換えることを目指す」という。

ハイブリッド車では、すでに今年初めに販売を開始した『CR-V HYBRID』があるが、EVでは『Honda e』が初となる。夏には欧州の一部の国で販売を開始するという。ホンダのEV戦略の尖兵になることは間違いないだろう。2020年に日本での販売も決定しているという一部報道もあり、日産『リーフ』一択の日本のEV市場が活性化するかもしれない。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Honda Motor Europe
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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