editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第14回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

世界ではカローラ並の人気──50周年を祝うハイラックス

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストシーン。主人公のマーティは過去が変わったことで、以前には乗ることができなかった憧れのピックアップトラックを手にする。それが『ハイラックス』だ。日本ではSUVである『ハイラックスサーフ』のほうが有名だが、そのベースとなったクルマでもある。8世代の歴史を重ねてきた名車で、グローバルでは、同じトヨタの『カローラ』と比肩する売り上げを誇る。今年は、初代の誕生から50周年。その記念として、特別仕様車『Z"Black Rally Edition"』が発売された。

トヨタ『ハイラックス』は無骨さとインテリジェンスを併せもつベストセラーモデル

『ハイラックス』が日本国内で販売されていたのは、2004年に生産が終了した6世代目まで。日本では需要が少ないピックアップトラックということもあり、SUVである『ハイラックスサーフ』に比べると馴染みが薄いかもしれない。復活したのは、2017年から販売されている現行型からだ。13年ぶりの復活、そしてタイから日本に輸入される初のトヨタ車であることから、大きな話題となった。

話題だけでなく、売れ行きも好調。それも、実力があってのことだ。『ハイラックス』には次のような特徴がある。可変ノズル式ターボチャージャーや空冷式インタークーラー、コモンレール式燃料噴射システムなどの採用により、低回転域から強大なトルクを実現した2.4Lディーゼルエンジン。ダイヤル操作で駆動方式を選択できるパートタイム4WDシステム。高強度のフレームや振動減衰を高めるサスペンションにより、悪路も苦にしない走行安定性と乗り心地。最新の安全運転支援技術。そして無骨でエモーショナル、男臭いデザイン。

たとえるなら、一見すると筋骨隆々の野趣あふれる人物が、じつはジェントルさとインテリジェンスを兼ね備えていたといったところだろうか。そういった意味で、『Z"Black Rally Edition"』は、都会的なスタイリッシュさも身につけた一台だ。

50周年記念モデルは、最上級グレード「Z」をベースに特別装備でスタイリッシュに

『Z"Black Rally Edition"』のベースは、その名のとおり最上級グレードの『Z』だ。これに黒をモチーフにしたさまざまな特別装備が搭載された。

フロントマスクでは、専用の意匠をまといブラックに塗装されたグリルとスキッドプレートを採用。足回りは、ブラックのオーバーフェンダーと通常の17インチから18インチにサイズアップしたタイヤが印象的だ。特にタイヤは、文字を白色で記した「ホワイトレター」。塗料によるペイントではなく、白いゴムを埋め込んだこだわりの成形だ。ブラックのアルミホイールと相まって、スポーティーな外観に仕上がっている。

ほかにも、ブラックメタリック塗装のドアミラーやドアハンドル、テールゲートハンドルなどが車体のアクセントとなっている。

内装では、ルーフヘッドライニングやピラーガーニッシュ、ルームパーテーション、バックパネルトリムなどをホワイトからブラックに変更。細部では、本革巻きステアリングやダッシュボード、シフトノブなどをはじめとして、さまざまな箇所にブラックメタリック加飾を施した。また、オプティトロンメーターは専用意匠へと変更されている。これらによって、全体的に標準モデルよりもクールな印象を醸し出すこととなった。

価格は約394万円。イギリスでも50台限定のアニバーサリーエディションが登場

『ハイラックス』は180の国と地域で販売され、累計世界販売台数は約1730万台と、世界中にファンが多いクルマだ。そういった理由もあるのだろう。日本だけでなく、イギリスでも50周年記念の限定車『50th Anniversary Limited Edition』が発売された(メイン写真と下の写真のモデル)。

こちらは50台限定で、おもに意匠や装備面で差別化した『Z"Black Rally Edition"』とは異なり、特別なエクステリアに加え、足回りもよりオフロード性能を高める方向でホイールやタイヤが選ばれたという。

UKモデルは限定50台だが、『Z “Black Rally Edition”』は販売期間や台数を定めていない。カタログモデルとして考えてもいいだろう。価格は394万7400円だ。

日本ではピックアップトラックは一般的ではないかもしれないが、それだけに、自らのライフスタルを強烈にアピールできる。アウトドア好きにはたまらない一台だろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Toyota Hilux 50 years in the making
ピックアップ
第17回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

超屈強なフルサイズSUV──トヨタ セコイアTRDプロ

日本の自動車メーカーが作るクルマには「日本では買えない海外専用モデル」というものが存在する。とくにSUVやピックアップトラックには、北米専用モデルが多い。ホンダなら『パイロット』『リッジライン』、日産なら『タイタン』にインフィニティ『QX70』。トヨタのフルサイズSUV『セコイア』も、そのうちの一台だ。この巨大な北米専用SUVに、モータスポーツ直系のチューニングを施した「TRDプロ」が加わった。日本では見ることもその性能を堪能することもできない、アメリカならではフルサイズSUVである。

全長5mの巨大なボディに豪華な装備。トヨタ『セコイア』は北米市場で人気のSUV

アメリカでは、フルサイズSUVを持つことがひとつのステータスになっている。多用途的とは言いがたいスポーツカーと違い、日常からレジャーまで幅広く利用でき、グレードによっては高級セダンに匹敵する乗り心地を実現し、さらに頑丈な車体は回避安全の意味でも頼りがいがあるためだ。VIPやセレブレティも移動にフルサイズSUVを使うことが多い。

フルサイズに明確な基準があるわけではないが、SUVをボディサイズでセグメントしたとき、もっとも大きなクラスを指し、コンパクトやミドルに対して「ラージサイズ」とも呼ばれる。全長は5m以上、全幅は2m以上かそれに近い車両がフルサイズにあたる。

トヨタの北米市場専用モデル『セコイア(Sequoia)』も、『ランドクルーザー200』以上の巨体をもつフルサイズSUVだ。トヨタ・インディアナ工場で製造され、初代は2000年にデビュー。その後、2008年と2018年にフルモデルチェンジを受けた。SUVを名乗っているが、どちらかというと『セコイア』は4WDとしてのヘビーさよりもオンロードでの快適性や利便性を重視したクルマで、充実したインテリアによってプレミアム感を演出している。それがユーザーの嗜好を捉えているのは、好調なセールスを見れば明らかだ。

フルサイズSUVで唯一セカンドシートにスライド機構をもち、じつのところ、それも人気を支えている要素になっている。さらにサードシートのリクライニングやフルフラットも電動(オプション)なので、家族の評判が高くなるのは道理なのだ。このほか、初代から運転席の8ウェイのパワーチルトやスライド式ムーンルーフを標準装備。トライゾーン・オートエアコンも備え、Apple CarPlay、Android Auto、Amazon Alexaにも対応する。もちろんBluetoothハンズフリー電話機能とミュージックストリーミングも可能だ。

しかし、2月にシカゴでお披露目された『セコイアTRDプロ』は、標準仕様とはかなり趣が異なる。その名のとおり、これは「TRD」のバッジを冠するモデルだからだ。

FOX製のショックアブソーバーを搭載。『セコイアTRDプロ』はTRDの最新モデル

TRDは「トヨタ・レーシング・ディベロップメント(Toyota Racing Development)の頭文字だ。トヨタのワークスファクトリースチームとしてレーシングカーを開発し、そこで培った経験や技術を生かしてトヨタ車用にチューニングパーツの製作と販売を行っている。国内外の多くのレースに参戦しているが、近年では『ヴィッツ』(輸出名『ヤリス』)をベースにしたマシンでWRC(世界ラリー選手権)に参戦して注目を集めた。前身は1970年代にさかのぼり、モータースポーツマニアならずともTRDの知名度は非常に高い。

「TRDプロ」は、2014年から北米でトヨタのオフロードモデルにラインナップされているシリーズで、ピックアップトラックの『TUNDRA(タンドラ)』と『TACOMA(タコマ)』、そして日本では『ハイラックスサーフ』としておなじみのSUV『4 Runner(フォー・ランナー)』に設定されている。このTRDプロの最新作が『セコイアTRDプロ』だ。

5.7L V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、トランスミッションは6速AT。55.4kg-mという図太いトルクを発揮し、しかもそのトルクの90%をわずか2200rpmという回転数で得ることができる。加えて、マルチモードの4WDシステム(ほかのグレードではオプション)やロッカブル・トルセン・リミテッド・センターデフ(トルク分配式デフ)を搭載したことで、従来の『セコイア』になかった高い走破性をもつのが特徴のひとつだ。

しかし、もっとも重要なチューニングポイントはサスペンションだろう。オフロード用のショックユニットメーカーとして知られるFOX社のアブソーバーは、アルミ製の本体にインターナル・バイパスを装備し、外力の大きさによって異なる減衰機構が働く。日常の走りでは柔軟に動き、ストローク量に応じて減衰力が高まるのでボトムしにくいのだ。数多くのオフロードコンペで優れた実績を残したメカニズムで、むろん専用にチューニングされている。しかもTRDの厳しい要求に応えるため、前後で異なるユニットが採用された。

「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しむSUV

外観で目立つのは、P275/55R20タイヤを装着した20インチx8インチのBBSブラック鍛造アルミホイールと、フィニッシュがブラッククローム仕上げの単管エキゾーストだ。誇らしげに「TRD」のロゴが入れられたフロント下部のスキッドプレートは、もちろんトレイル走行中にフロントサスペンションとオイルパンを保護するのに役立つもの。また、フロントグリルも「TOYOTA」のロゴを配した専用デザインとなっている。

面白いのは、TRDのエンジニアが乗員に配慮し、キャビンの音質を改善するために周波数調整したサウンドキャンセルデバイスを採用したこと。これによって低く心地よいエキゾーストノートを提供するという。走りとは関係ないものの、ぜひ体験したい機能だ。

かつての四輪駆動車愛好者は、それ以外の自動車ユーザーと求めるデザインや装備、機能が明らかに違っていたが、技術の進歩とセンスの変遷はさまざまな境界を取り払おうとしていると感じる。「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しもう、というのが『セコイアTRDプロ』の隠れたコンセプトなのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索