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第58回 | BMWの最新車デザイン・性能情報をお届け

リベンジの狼煙を上げよ──復活したBMW 8 Seriesクーペ

『8』は、BMWでは耳慣れない数字である。それも当然だろう。『8シリーズ』は、じつに20年ぶりの復活なのだから。初代は1989年のフラクフルトモーターショーでデビュー。世界一美しいクーペとの呼び声が高い『6シリーズ』の後継として注目され、日本ではバブル真っ只中の1990年に販売が開始された。しかし、生産は1999年で終了。2003年に『6シリーズ』が復活したことで、『8』の名は廃れたかに思われた。色めき立ったのは2017年。イタリア・コモ湖畔で開催されたクラシックカーのイベントでの、復活宣言だ。その後、2018年のジュネーブモーターショーでコンセプトカーが、同年のル・マン24時間耐久レースで新型が発表。そしてついに、11月から日本での販売が始まった。

優雅でありながらスポーティ。次世代ラグジュアリークーペの強烈な存在感を見よ

『8シリーズ クーペ』は、BMWクーペの最上級モデル。日本国内では、現時点で『M850i xDrive』のみが発売される。

全長4855×全幅1900×全高1345mmの低く伸びやかな全体のシルエット、往年のレーシングモデルに採用されてきた特徴的なダブルバブルルーフラインを採用したルーフトップ、水平なラインと車両下部の中央に向かって収束する斜めのライン、そしてサイドに大きく張り出したLEDテールライトがゆったりとした存在感を演出するリアスタイル。そのすべてが、優雅でありながらスポーティな個性を際立たせ、次世代のラグジュアリークーペとしての強烈な存在感を醸し出す。

特に、フロントフェイスの印象は強烈。伝統のキドニーグリルは、ひとつのフレームで縁取ることで左右の一体感が増し、より洗練された雰囲気だ。BMWレーザーヘッドライトはフラットな形状ながら細部の曲線にいたるまで全体のシルエットと調和し、極めて強い存在感と高級感を主張している。

この優雅でスポーティーな外観を支える骨格は、「剛」と「軽」の二文字でまとめることができる。内部構造部材にカーボン素材、ボディとパネルにアルミ材などを効果的に使用することで、堅牢で高剛性なボディながら車両重量2000kgアンダーを実現。それにより、当然ながら高い走行性能を発揮する。

タッチパネル、iDriveコントローラー、音声。状況ごとに最適な手段で情報にアクセス

インテリアは、エクステリアと調和が取れた高級感のある洗練されたデザインだ。しかし、シートに身を委ねれば乗員の視線が自然と前方へ向かうようになっており、走りへの期待感が高まる。

ラグジュアリーモデルだけに、細部にもこだわりが満載だ。シフトノブは透明度が非常に高いクリスタルで、そのなかに数字の「8」が浮かび上がる。シートはベンチレーション付きの上質なメリノレザーを採用し、ハーマン・カードン製のオーディオやアンビエント・ライトを標準装備した。

操作系は「BMW オペレーティングシステム 7.0」を導入。カスタマイズ可能な10.25インチのタッチパネル式ディスプレイを採用し、さまざまな機能や設定にアクセスしやすくなっている。また、状況に応じて変化するコンテンツも装備。スポーツ走行時などに、コーナリング中の横方向加速力を表示させる設定も可能だ。

もちろん、BMWでお馴染みの「iDriveコントローラー」も健在。さらに、音声コントロールやジェスチャー・コントロールも備えており、状況に応じてドライバーがもっとも操作しやすい方法で必要な情報や設定にアクセスすることができる。

メーターパネルは12.3インチのフルデジタル。ディスプレイの中央にナビの地図の一部を表示可能で、改良されたヘッドアップ・ディスプレイと組み合わせることにより高い視認性を実現し、ドライバーは運転に集中しながらも必要な情報を入手可能だ。

心臓部は530馬力のV8ツインターボ。新テクノロジーで直線もコーナーも自由自在

クーペモデルだけに、スポーティーな走りにも期待が集まる。『8』の名を背負うフラッグシップなら、なおさらだ。その期待に応えるように、心臓部には『7シリーズ』と同じ新開発の4.4L V型8気筒エンジンを搭載。「M Performanceツインパワー・ターボ・テクノロジー」を採用しており、最高出力390 kW(530ps)/5500-6000rpm、最大トルク750 Nm/1800-4600rpmを発揮し、0-100km/hまでの加速は3.7秒を実現した。

トランスミッションは改良版のステップトロニック付き8速スポーツ・オートマチック。ギヤ比の幅が拡張され、油圧制御システムも最適化したことで、走行状況に応じたシフトタイミングがより正確かつ俊敏になり、快適性や燃費が向上している。

足回りでは、インテリジェント四輪駆動システム「BMW xDrive」が大幅に改良された。リヤホイールを重視して調整された駆動力配分によって、よりスポーティなドライブフィーリングを堪能できるのと同時に、ダイナミックな走行状況下では最適なトラクションと走行安定性で安定した走りをもたらす。また、リヤアクスルには電子制御式ディファレンシャル・ロックを標準装備。コーナーの内側と外側のリヤホイールの差動を制限することで、コーナー出口でのダイナミックな加速が可能となった。

足回りでは、サスペンションにも触れなければならない。搭載したのは「アダプティブMサスペンション・プロフェッショナル」。電子制御アクティブ・スタビライザーを装備することで、ロール特性を調整し、俊敏な高速コーナリングから快適なクルージングまで網羅する。

ライバルはメルセデス・ベンツ『Sクラス クーペ』。SLに後塵を拝したリベンジなるか

操作性能はどうだろう。ステアリングは、最小回転直径を抑え、取り回しの良さと俊敏性を高めた「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」。正確なハンドリングを実現することで、車線変更時と高速コーナリング時の走行安定性が高まっている。

フラッグシップらしく運転支援システムも最先端だ。おもな機能を挙げると、「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)」「レーン・チェンジ・ウォーニング(車線変更警告システム)」「レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)」「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」「サイド・コリジョン・プロテクション」「衝突回避・被害軽減ブレーキ(事故回避ステアリング付)」「クロス・トラフィック・ウォーニング」といった具合だ。数々の装備が万が一の事故リスクを軽減してくれる。

『M850i xDrive』の車両価格は1714万円(税込み)。欧州ではディーゼルモデルも販売されており、今後はカブリオレモデルも登場することが発表されている。

BMWのフラッグシップであるラグジュアリークーペとして、メルセデス・ベンツ『Sクラスクーペ』やアウディ『RS7 Sportback』といった強力なライバルと戦うことになる『8シリーズ』。先代には、ライバルであったメルセデス・ベンツ『SLシリーズ』の後塵を排した苦い記憶がある。あれから20年、復活した名車がみせる躍進が楽しみだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
The all-new BMW 8 Series Coupé オフィシャル動画
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第62回 | BMWの最新車デザイン・性能情報をお届け

最上級で贅沢なオープン──BMW 8シリーズ カブリオレ

初夏になると、クルマのルーフを開けてオープンエアを愉しみたくなる。しかし、この新型オープンモデルが似合う場所は、蒸し暑い日本の夏ではなく、地中海やマイアミの高級リゾート地なのかもしれない。それほどまでに、贅沢でエレガントなのである。昨年、じつに20年ぶりとなる復活を遂げたBMW『8シリーズ』。このフラッグシップクーペに今回、カブリオレが追加された。「最上級」という言葉がふさわしいオープントップモデルだ。

クーペの美しさと運動性能、オープンモデルならではの開放感や優雅さを兼ね備える

ヨーロッパの人々は太陽を浴びることが大好きだ。ほとんどのラグジュアリークーペには、当然のようにオープントップモデルが設定されている。昨年6月、ル・マン24時間レースにおいて、およそ20年ぶりに復活したBMW『8シリーズ』が発表されたときから、多くの自動車ファンはカブリオレの登場を予感していたことだろう。そもそも、BMWには開発当初からオープンモデルをラインナップに追加する前提があったに違いない。

BMW『8シリーズ カブリオレ』は、『6シリーズ カブリオレ』の実質的な後継となるオープントップモデルである。むろん、ベースは最上級クーペの『8シリーズ クーペ』。低く伸びやかなシルエット、美しいルーフライン、艶麗なリヤフェンダーの造形が醸し出す優雅さ。そうした官能的な個性が際立つ『8シリーズ クーペ』の美しいデザインと運動性能をそのまま受け継ぎながら、オープンモデルならではの開放感や優雅さを備える。

エクステリアでは、リヤホイールへの力感を表現するボディサイドのキャラクターラインが目を引く。さらに、キドニーグリルやデッキを取り囲むモールディングなどにクローム加飾をアクセントとして採用。専用の20インチ・マルチスポークホイールの繊細なデザインと相まって、クーペ以上に洗練されたラグジュアリーさを強く感じさせる佇まいだ。

滑らかな流線形を描く電動式ソフトトップ。シフトノブはなんとクリスタル仕立て!

ルーフは電動式のソフトトップで、エレガントなボディ造形にふさわしく、滑らかな流線形を描くように丸みを帯びたデザインとなっている。ルーフを閉じた状態でも、上質さや優雅さはまったく損なわれない。ルーフは時速50km/h以下なら走行中でも約15秒で開閉することが可能だ。ルーフオープン時もラゲッジルームは250Lの容量を確保する。

室内は、エクステリアと見事に調和した高級感をまといつつ、前後方向への意識を強調するように設計されているのが特徴だ。具体的には、乗員の視線が自然と前方へ向かい、走りへの期待感を煽るようなデザインとなっている。また、高い操作性を確保するためにスイッチ類をグループ分けし、ドライビングを妨げないポジションにわかりやすく配置した。

注目は非常に高い透明度のクリスタルで作られたシフトノブ。クラフテッド・クリスタル・フィニッシュを採用し、なかから数字の「8」が浮かび上がる仕様となっている。シートはベンチレーション付きの上質なメリノレザー。アンビエント・ライトを標準装備しているので、ラグジュアリーオープンモデルであることを乗るたびに感じさせてくれるだろう。

『8シリーズ カブリオレ』の加速性能はピュアスポーツカー並。価格は1838万円

搭載されるパワーユニットは、『8シリーズ クーペ』と同様の4.4L V型8気筒ガソリンエンジン。最高出力530ps/5500-6000rpm、最大トルク750Nm/1800-4600rpmを発生し、8速スポーツAT(ステップトロニック付き)を組み合わせる。0-100km/h加速は「8」の名にふさわしく、3.9秒を実現。これはピュアスポーツカーに匹敵する動力性能だ。

なお、ドイツ本国やヨーロッパでは上記のエンジンを積む「M850i xDrive」のほかに、経済的な3.0L直列6気筒ターボディーゼルエンジンを搭載する「840d xDrive Mスポーツ」も選べるが、日本国内で販売されるのは現時点で「M850i xDrive」のみとなっている。

価格は『8シリーズ クーペ』より124万円アップとなる1838万円。高価なうえに、これだけのラグジュアリーオープンが似合うロケーションは国内ではなかなか見当たらない。とはいえ、オープンエアの季節だけに、所有欲を強く刺激するのはたしかだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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