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第36回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

上級化したコンパクトSUV──オールニューアウディQ3

『Q3』はアウディのSUVシリーズの末っ子として2011年に発表されたプレミアムコンパクトSUVだ。しかし「Q」ファミリーにはその後、よりコンパクトな『Q2』が登場。その棲み分けがどうなるのかが気になっていた人もいたことだろう。アウディの答えは「上級化」である。もともとアウディ車は質感の高さに定評があるが、フルモデルチェンジした新型『Q3』は、小型SUVながらアッパークラス並の高級感を与えられている。

『Q2』の登場によって立ち位置が変化。『Q3』が選んだ道は高級感をまとった上級化

アウディ『Q3』はデビュー時と現在とで置かれている立場がまったく異なる。初代が登場した2012年当時、SUVは今のように流行していなかった。コンパクトSUVにライバルはほとんど存在せず、『Q3』はアウディのエントリーSUVであればよかったのだ。

しかしコンパクトSUVは今もっとも売れ筋の車種となり、特にここ数年は各社がスタイリッシュなコンパクトSUVを続々と発売している。BMW『X2』やジャガー『Eペイス』、ボルボ『XC40』は、『Q3』と真っ向勝負となるライバルだ。また、同じアウディの『Q2』をはじめ、よりコンパクトなSUVも増えてきた。各社が小型化によって車両価格をできるだけ低く抑え、新たな顧客となる若いユーザーを獲得しようとしているのである。

こうした下位モデルが登場すれば当然、『Q3』の居場所も変わってくる。アウディのエントリーSUVが『Q2』へと移行するなら、『Q3』はどのような立ち位置になるのか? そう考えると、『Q3』の刷新がどのような目的で行われたかは想像がつくだろう。

ひと言でいえば、それは「上級化」だ。フルモデルチェンジした『Q3』は、兄貴分の『Q5』や『Q7』と同じ高級感を身にまとっている。単なる正常進化ではないのだ。

明らかにワンランク上のサイズへと大型化。『Q3』のデザインモチーフは新型『Q8』

ボディサイズは、全長4485mm×全幅1856mm×全高1585mm。先代モデルに比べて97mm長く、25mmワイドになり、5mm高い。特に全長はクラス最長だ。『Q2』との違いを明確にすべく、明らかにワンクラス上のサイズへと大型化された。

デザインには8月からヨーロッパで販売が開始された最上級SUV『Q8』の影響が強く感じられる。アウディ伝統のシングルフレームグリルは大型化され、8角形の枠にシルバーラインが縦に8本並ぶ。左右の大胆なバンパーダクトと相まって力強さを印象づける。

よりシャープになったヘッドライトには最新のLEDテクノロジーを採用。最上位モデルにはマトリクスLEDヘッドライトが用意された。マトリクスLEDヘッドライトはアダプティブハイビーム機能を搭載しており、対向車を認識して自動で配光する。

リアは傾斜のついたガラスによって流麗なラインを描き、『A4アヴァント』などにも通ずるデザインとなった。全体的に伸びやかなボディシェイプだが、色分けされたホイールアーチがSUVであることをしっかりアピールしている。全体的に、そのスタイリングがどことなくベントレー『ベンテイガ』を彷彿とさせるのは気のせいだろうか。

家族そろっての旅行も快適な『Q3』の広い室内。ラゲッジは最大1525Lに大容量化

ボディが大型化したことで、室内空間も拡大した。室内長やヘッドルームはライバルを凌ぐ広さを実現し、ひざ周りや頭上のゆとりが増している。先代モデルの弱点だった後席も大きく改善され、前後に150mmスライドする「40:20:40」の分割可倒式を採用。さらに7段階のリクライニングが可能となった。後席には最大3名が乗車できる。

また、ラゲッジルームも大幅に拡大された。先代モデルが460Lから最大1365Lだったのに対し、新型『Q3』は530Lから最大1525Lへと大容量化。ラゲッジルームのフロアボードは3段階の調整ができ、パーセルシェルフはフロア下へと収納可能だ。オプションとなるが、バンパー下に足をかざすとゲートが開く電気式テールゲートも備える。

コネクティビティも充実しており、最新の「バーチャルコクピット」、大型の「MMIタッチレスポンス」、8.8インチの「MMIタッチディスプレイ」を設定。これらに加え、上級グレードは「MMIナビゲーション」も備える。上級グレードのインフォテインメントシステムにはSIMカードを装備し、LTEの高速通信規格でデータをやり取りして「アウディコネクト」を提供する。オンラインで交通情報などを得られるサービスだ。

インテリアは「MMIタッチディスプレイ」が運転席側に傾くスポーティなもので、高い操作性と“ドライバーオリエンテッド”なムードが感じられる。少し引いて観察すると、ディスプレイのシルバー枠がステアリングを超えた反対側まで取り囲むようなデザインとなっていて、「ここにもシングルフレームグリルがある!」と気づかされるだろう。

パワートレインは3種類のガソリンターボと1種類のディーゼルターボの計4タイプ

パワートレインは当初、3種類のガソリンエンジンと1種類のディーゼルエンジンの計4タイプが用意されるようだ。すべて直列4気筒の直噴ターボで、150hpから230hpの最高出力を発揮。トランスミッションには6速MTと7速「Sトロニック」が組み合わされる。

駆動方式はFFのほか、むろん4WDの「quattro(クワトロ)もチョイス可能。日本国内には7速「Sトロニック」のみの導入となるだろうが、少数でも特別仕様車として発売されることになれば、本格オフローダーを欲するユーザーにも刺さるはず。なお、オフロード走行で必須となった「ヒルディセントコントロール」はオプションで用意される。

エンジン特性などをコントロールする「アウディドライブセレクトダイナミックハンドリングシステム」によって、コンフォート、省燃費、スポーティなど、6種類の走行モードを選択することができる。オプションでショックアブソーバーも同時にコントロールすることが可能となったので、より協調制御を体感することができるだろう。

『Q7』などと同様の先進運転支援システムを搭載するのもトピックだ。とりわけ標準装備される「プレセンスフロントセーフティシステム」は、レーダーを使用することにより、歩行者、自転車などがかかわる重大な危険を検知してくれる優れもの。視覚的・聴覚的・触覚的に警告をドライバーに発し、必要に応じて緊急ブレーキを作動させる。

大人なユーザーのど真ん中を突く新型『Q3』。ドイツでのベース価格は約431万円

先代モデルと同様に、今回も「Sラインパッケージ」が用意される。これは、よりスポーティなエクステリアとスポーツサスペンションが標準装備となるパッケージ。「プログレッシブステアリング」と呼ばれる速度によって操舵角がダイレクトになる可変レシオ機能も搭載される。

新型『Q3』の大きくなったボディと広くなった室内は 、“大人なユーザー”のど真ん中を突くもの。ハイエンド装備に上位車種ゆずりの高級感もまとっており、プレミアムコンパクトSUVを求める向きにとって、大いに魅力的な一台となるはずである。

日本での発売時期や価格は明らかになっていない。現行『Q3』は369万円から469万円だが、価格は先代よりやや上昇するだろう。販売が始まったドイツ本国のベース価格は3万3700ユーロ、日本円に換算すると約431万円となっている。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Audi Q3 オフィシャル動画
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第38回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

アウディe-tron GT concept──怪物GTは市販されるのか

「電動化攻勢」。これは、これからのアウディが示した今後の進むべき方向性だ。簡単に言えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車を増やしていくということ。具体的には、全世界の主要な市場において、2025年までに12の電気自動車を発売し、電動化モデルの販売台数を全体の約3分の1にすることを目指すという。その第一弾が2018年9月に生産が開始された『e-tron SUV』、第二弾が2019年に登場予定の『e-tron Sportback』。そして、第三弾がLAオートショーで華々しくデビューした『e-tron GT コンセプト』だ。

低い重心のグランツーリスモ。エクステリアに見て取れる次世代のアウディデザイン

『e-tron GTコンセプト』は、4ドアクーペのEV(電動自動車)である。全長4960mm×全幅1960mm×全高1380mmm。フラットでワイドなボディ、そして長いホイールベースといった特徴を備えた、典型的なグランツーリスモデザイン。EVにはめずしいフラットなフロアや低い重心も相まって、全体から受ける印象はアグレッシブでスポーティーだ。加えて、ホイールアーチとショルダー部分には立体的な造形が施され、ダイナミックなポテンシャルを強調している。

もちろん、アウディらしさはしっかりと踏襲。グリルの上部には、『RS』モデルのグリルに採用されたハニカムパターンを想起させるカバーをボディカラーに併せた塗装を施して装着。リヤエンドまで流れるような弧を描くルーフラインは、まごうことなきアウディのデザイン言語だ。

ただし、このアウディのデザイン言語を、次世代へと進化させたと感じさせる部分もある。ひとつは、リヤに向かってキャビンが大きく絞り込まれた意匠だ。そして、アウディデザインを象徴するシングルフレームグリルだ。これまでに発表された『e-tron』シリーズのシングルフレームグリルと比べると、そのアーキテクチャーは、より水平基調で躍動感を漂わせている。

フロントマスクは、矢印形状のマトリクスLEDヘッドライトが印象的だ。ライトにはアニメーション機能が組み込まれ、水平方向に広がる波をイメージした短い点滅がドライバーを出迎える。これは、将来的には市販モデルに搭載される予定だという。

リヤスタイルでは、車幅全体を横切って延びるライトストリップが目につく。外側に向かうにつれてリヤライトユニットへと融合されるこの意匠は、『e-tron』シリーズ共通のもの。視覚的にアウディのEVであることを認識させる。

動物由来の素材を排除。植物由来にこだわったサスティナビリティ重視のインテリア

インテリアは、エクステリアの近未来的でスポーティーな雰囲気と打って変わり、上質さが印象的。そして、日常の使い勝手にも配慮がなされている。

車内水平基調のインテリアが強調された、広々として落ち着いた空間だ。コックピットを中心として、センターコンソール、トップセクションの大型タッチスクリーン、ドアレールとコックピットのラインがドライバーを取り囲むように設置されている。各種機能やインフォテインメントをはじめとする操作系は、人間工学的に最適化された。

インストルメントパネル中央のディスプレイとセンターコンソール上部のタッチスクリーンは、ブラックパネル調仕上げ。一見すると宙に浮いているような印象だ。バーチャルアナログ表示にしたり、航続距離とともにナビゲーションのマップを拡大したり、インフォテインメント機能のメニューを表示させたり、さまざまなレイアウトに変化させることが可能だ。

次世代を感じさせる試みは、目に見える部分だけではない。サスピナビリティ(持続可能性)を重視し、インテリアからは動物由来の素材をいっさい排除。シート地やトリム地には、合成皮革を使用するなど、すべて植物由来を貫いている。

フラッグシップスポーツの『R8』を凌駕する最高出力により暴力的な加速性能を実現

気になる走行性能だが、前後のアスクルに設置されたモーターの最高出力は434kW(590hp)。アウディのフラッグシップスポーツ『R8』が397kW(540hp)なので、どれほどのモンスターマシンかは想像に難くないだろう。数値で表すと、0〜100km/hの加速は約3.5秒、200km/hにはわずか12秒で到達する。ただし、最高速度は航続距離を最大化するために240km/hに制限されているという。

もちろんアウディ伝統の4輪駆動システム「quattro」も健在だ。モーターが発生したトルクは、4つのホイールを介して路面へと伝達。前後のアクスル間だけでなく、左右のホイール間の駆動力も調整する電子制御システムによって、最適なトラクションが得られる。

気になる走行可能距離は、容量90kWh以上のリチウムイオンバッテリーと最大30%以航続距離伸ばすことができる回生システムを採用することで、400kmオーバー(WLTPモード)を達成した。また、充電時間は800Vの充電システムに対応することで、最速20分でバッテリーを80%まで充電可能だ。80%の充電でも320km以上を走行できるという。

夏には映画『アベンジャーズ4』に登場。どこまで市販モデルに性能が継承されるか

『e-tron GT concept』のテクノロジーは、同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェと密接に協力して開発されている。ポルシェは、開発を進めていた『ミッションE』をブランド初となるEVスポーツカーの『タイカン』として、2019年後半〜2020年に発売する予定だが、『e-tron GT concept』と同じプラットフォームを採用し、出力も『e-tron GT concept』を上回るといわれている。

『e-tron GT concept』はいわゆるショーモデル。今年夏公開予定の映画『アベンジャーズ4』に登場するとアナウンスされているが、このままの状態で市販化はされない。

現在はアウディスポーツによって量産化への移行作業が行われており、量産モデルは2020年後半に登場する予定とされている。デリバリー開始は2021年初頭。このポテンシャルがどこまで市販モデルに引き継がれるか、興味深いところだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Audi e-tron GT concept オフィシャル動画
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