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第114回 | 大人のための最新自動車事情

700馬力の超弩級Gクラス──ブラバス700ワイドスター

今年の年明け早々に、40年におよぶ歴史において初のフルモデルチェンジをはたしたメルセデス・ベンツ『Gクラス』。そのラインナップの頂きを担うのが、ハイパフォーマンスブランドのメルセデスAMGが手がけた『G63』だ。しかしクルマ好きの欲望というのは際限がなく、最高出力585hpの『G63』でも満足できない人々がいるらしい。そこで誕生したのが、さらなる高性能化をはかった『G63』のカスタムモデル。世界有数のチューニングメーカーであるブラバスが送り出す『700ワイドスター』だ。

メルセデス・ベンツに独自のチューニングを施したブラバスの「コンプリートカー」

ブラバス(BRABUS)は、ドイツ北西部の工業都市、ボトロップに本拠をおくチューニングメーカーである。おもにメルセデス・ベンツとスマートのモデルをベースに、エンジンや内外装、足回り、吸排気にいたるまで独自のチューニングを施したクルマを製造する。

それらは「コンプリートカー」と呼ばれている。つまり、あらかじめドレスアップやチューニングを施して販売するカスタムカーだ。その作業は既存モデルのチューンナップというより、ベース車両を用いてまったく新しいクルマを作り上げることに近い。拠点は世界100箇所以上にあり、年間7500台ものコンプリートカーを販売している。

そのブラバスがメルセデス・ベンツ『Gクラス』の高性能グレード、『G63』をベースに新たなコンプリートカーを作り上げた。クルマの名は『700ワイドスター』という。

最高出力700hpを発揮する『700ワイドスター』。0~100km/hを4.3秒で加速する

モデル名の「700」は最高出力に由来する。『G63』に搭載される4.0L V型8気筒ツインターボは、先代からダウンサイジングされながら、最高出力585hp、最大トルク850Nmのハイパワーを誇る。『700ワイドスター』では、その最高出力が585hpから700hpへ、最大トルクが850Nmから950Nmへと、さらにパワーアップがはかられた。

その秘密はブラバスによる魔法のチューニングだ。インジェクション(燃料噴射)とイグニッションタイミング(点火タイミング)をコンピュータプログラムの書き換えによって変更。さらにエンジンコントロールユニットを交換し、ターボチャージャーもブーストアップを施した。その結果、0~100km/h加速は4.3秒、最高速度は240km/h(リミッター作動)と、このクラスのSUVとしては驚異的な動力性能を実現した。ちなみに、最高速度が240km/hに制限されているのは、タイヤを保護するためだという。

こちらも改良されたスポーツエキゾーストシステムには排気フラップを装備し、さまざまなモードのサウンドを愉しむことが可能となった。「Coming Home」、つまり「帰宅」モードを選べば、自宅周辺の住民から夜間に苦情を寄せられることもなくなりそうだ。『G63』では左サイドから突き出していたステンレススチール製のエキゾーストパイプは、左右に2本ずつ配置され、カラーもシルバーとブラックの2色から選択できる。

迫力満点のスタイリング。フロントグリルにはBRABUSの「B」のエンブレムが鎮座

エクステリアは、ベースの『G63』がスポーティだったのに対し、なんとも迫力満点のルックスへと生まれ変わった。フロントグリル、前後バンパーは専用デザイン。グリルの中央には、メルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターに代わり、BRABUSの「B」のエンブレムが鎮座する。ボンネットフードには二つの巨大なダクトが取り付けられた。

前後フェンダーを『G63』から100mm拡げたことでワイドボディ仕様となり、ホイールは22インチから23インチの「BRABUSモノブロック」へ変更。タイヤサイズは305/35R23で、コンチネンタル、ピレリ、ヨコハマのいずれかを選択することができる。

写真ではわかりづらいが、ルーフの後端にはスポイラーが追加され、12個のLEDを用いたライトバーも設置。これはオフローダーらしい装備で、ハイビームやヘッドライトフラッシャーを使用するとき、LEDユニットが視認性を引き上げてくれるのだ。

ブラバス『700ワイドスター』の価格は未発表。費用が気になるオーナーは買えない?

インテリアには、BRABUSファインレザーとアルカンターラを用いたバニラとブラックのコンビネーションが施されているが、これはほんの一例だ。レザーやトリムといったインテリアの素材、カラーの選択肢は豊富に用意され、オーナーは好みに応じて自由にカスタマイズすることができる。むろんそれによって価格も変わるわけだが。

もっとも、ブラバスは『700ワイドスター』の価格を公表していない。お金を気にするようではこのコンプリートカーに乗る資格はないということだろう。ちなみに『G63』はおよそ2035万円から。『700ワイドスター』がいくらなのか、推して知るべしである。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) BRABUS GmbH
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
BRABUS 700 WIDESTAR オフィシャル動画
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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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