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第35回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

量産型EVイートロン──アウディの電動化攻勢が始まった

100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。次世代のパワートレインの最有力候補が電気とモーターである。つまり、EV(電気自動車)がガソリン車に比肩する時代が来るかもしれないのだ。すでに、欧州メーカーを筆頭に各社がEVに力を入れ始めるなか、ついにアウディも本格的に電動化攻勢を始めた。2025年までに全世界の主要市場において、12種類の電気自動車を発売し、総販売台数の約3分の1を電動モデルにするという。その口火を切るのが『e-tron(イートロン)』だ。

「EVは使い勝手が悪い」は過去の話。『e-tron』は1回の充電で400km以上を走る

『e-tron』は、アウディ初となる量産EVである。EVと聞くと、「先進的ではあるが、現実の使い勝手は悪い」といった思い込みがあるかもしれないが、『e-tron』はいっさいの妥協なしにドライビングを愉しめるという。その自信の表れのひとつが、走行距離だ。

最大95kWhのエネルギー容量を備える高電圧バッテリーと革新的な回生システムを搭載することにより、1回の充電で400km以上の走行を実現した(WLTP=国際調和排ガス・燃費試験方法)。具体的には、アクセルペダルから足を離したコースティング時とブレーキペダルを踏んだ制動時の2種類で電気を発生させる仕組み。回生されたエネルギーによる航続距離への貢献は最大30%に及ぶ。

走行距離の延長は、回生ブレーキだけがもたらすものではない。大きく寄与したのが空力へのこだわりだ。ドアミラーを廃してカメラに置き換えたバーチャルエクステリアミラーやアンダーボディ全体を覆うアルミニウムプレート、調整式冷却エアインテークの採用により空気抵抗係数を軽減。1回の充電あたり約40km航続距離を延長する効果を得た。

現時点のプレスリリースでは充電時間に触れていないが、『e-tron』は市販車として初めて、最大150kWの直流(DC)充電器での急速充電に対応している。それにより、長距離ドライブの途中でも、約30分で次の目的地に出発することができるとしている。

『e-tron』の先進安全技術は、フラッグシップセダンの『A8』にも匹敵する充実ぶり

EVとしての性能の高さも重要だが、それによってクルマ本来のドライビングエクスペリエンスや快適性が損なわれると本末転倒である。もちろん、『e-tron』はその部分においても抜かりがない。

システム出力(ブーストモード時)は最大300kW、トルクは664Nmに達する。EVの動力であるモーターの出力特性から、駆動トルクは一瞬で最大値に到達。力強くクルマを推し進めてくれる。数値で示せば、0〜100km/hの加速は5.7秒だ。ちなみに、最高速度は電子制御リミッターによって制限され、200km/hに抑えられた。

アウディの代名詞である「quattro(クアトロ)」はEVでも健在だ。電動4輪駆動システムは、アウディいわく「新しいquattro世代の幕開け」だという。滑りやすい路面や高速コーナリング中にスリップが発生したり、車両がアンダーステア状態になったりする挙動を予測して、主にリヤに搭載された電気モーターが作動し、必要に応じてフロントアクスルにトルクを伝達してくれる。

乗り味は「アウディ ドライブセレクト」で選択が可能だ。運転状況、路面状況、個人の好みに応じて、7種類のプロファイルから選択することができる。これは、標準装備される自動車高調整機能付きアダプティブ エアサスペンションとも連動し、スムーズで快適な乗り心地から、スポーティで安定したハンドリングまで、幅広く車両特性を変化させることができるようになった。特にエアスプリングは、速度やドライバーの好み、さらに路面の状態に合わせて個別に調整され、車高が最大で76mm変化する。

先進安全技術は最大5基のレーダーセンサー、6台のカメラ、12個の超音波センサー、1基のレーザースキャナーから情報を得る。『A8』や『A7』と比肩する充実ぶりだ。

エクステリアはアウディらしさを受け継ぎつつ、EVの先進性を感じさせるデザイン

ボディは全長4901 mm×全幅1935 mm×全高1616mmのフルサイズSUVで、広々としたスペースと高い快適性を得られる室内が特長だ。ラゲージ容量は660Lあり、長距離のドライブ旅行でも不満を感じることはないだろう。

運転席はドライバー中心に考えられている。2つの大型「MMIタッチレスポンス ディスプレイ」を設置し、従来のほぼすべてのスイッチ類はディスプレイに置き換えられた。また、多くの機能は日常会話に対応するボイスコントロールシステムによって操作可能だ。

エクステリアにも触れておこう。アウディのデザインアイコンである垂直のストラットを備えた八角形のシングルフレームグリルを採用しているが、このクルマが電気自動車であることを示すプラチナグレーのフレームが装着された。

マトリクスLEDヘッドライトの下端には、デイタイムランニングライトとして機能する4本の水平ストラットが設置され、『e-tron』ならではの雰囲気を生み出している。

LAオートショーではポルシェと協力開発した『e-tron GT concept』にも刮目せよ

アウディAGの技術開発担当取締役をつとめるペーター・メルテンス氏は、「Audi e-tronは、私たちの電動化戦略の出発点として、間違いなくアウディ史におけるハイライトとなるクルマです」と評した。欧州のオーナーへの最初の納車は、2018年後半に予定されている。ドイツにおけるベース価格は7万9900ユーロ(約1021万円)。

2018年末には、LAオートショーでポルシェと協力開発したコンセプトモデル『e-tron GT concept』も発表される予定だ。今後続々と発表されるであろう、アウディの電動化モデル。その方向性を示す『e-tron』は通常の新型車以上に注目を集めることになるだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Audi e-tron オフィシャル動画
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アウディe-tron GT concept──怪物GTは市販されるのか

「電動化攻勢」。これは、これからのアウディが示した今後の進むべき方向性だ。簡単に言えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車を増やしていくということ。具体的には、全世界の主要な市場において、2025年までに12の電気自動車を発売し、電動化モデルの販売台数を全体の約3分の1にすることを目指すという。その第一弾が2018年9月に生産が開始された『e-tron SUV』、第二弾が2019年に登場予定の『e-tron Sportback』。そして、第三弾がLAオートショーで華々しくデビューした『e-tron GT コンセプト』だ。

低い重心のグランツーリスモ。エクステリアに見て取れる次世代のアウディデザイン

『e-tron GTコンセプト』は、4ドアクーペのEV(電動自動車)である。全長4960mm×全幅1960mm×全高1380mmm。フラットでワイドなボディ、そして長いホイールベースといった特徴を備えた、典型的なグランツーリスモデザイン。EVにはめずしいフラットなフロアや低い重心も相まって、全体から受ける印象はアグレッシブでスポーティーだ。加えて、ホイールアーチとショルダー部分には立体的な造形が施され、ダイナミックなポテンシャルを強調している。

もちろん、アウディらしさはしっかりと踏襲。グリルの上部には、『RS』モデルのグリルに採用されたハニカムパターンを想起させるカバーをボディカラーに併せた塗装を施して装着。リヤエンドまで流れるような弧を描くルーフラインは、まごうことなきアウディのデザイン言語だ。

ただし、このアウディのデザイン言語を、次世代へと進化させたと感じさせる部分もある。ひとつは、リヤに向かってキャビンが大きく絞り込まれた意匠だ。そして、アウディデザインを象徴するシングルフレームグリルだ。これまでに発表された『e-tron』シリーズのシングルフレームグリルと比べると、そのアーキテクチャーは、より水平基調で躍動感を漂わせている。

フロントマスクは、矢印形状のマトリクスLEDヘッドライトが印象的だ。ライトにはアニメーション機能が組み込まれ、水平方向に広がる波をイメージした短い点滅がドライバーを出迎える。これは、将来的には市販モデルに搭載される予定だという。

リヤスタイルでは、車幅全体を横切って延びるライトストリップが目につく。外側に向かうにつれてリヤライトユニットへと融合されるこの意匠は、『e-tron』シリーズ共通のもの。視覚的にアウディのEVであることを認識させる。

動物由来の素材を排除。植物由来にこだわったサスティナビリティ重視のインテリア

インテリアは、エクステリアの近未来的でスポーティーな雰囲気と打って変わり、上質さが印象的。そして、日常の使い勝手にも配慮がなされている。

車内水平基調のインテリアが強調された、広々として落ち着いた空間だ。コックピットを中心として、センターコンソール、トップセクションの大型タッチスクリーン、ドアレールとコックピットのラインがドライバーを取り囲むように設置されている。各種機能やインフォテインメントをはじめとする操作系は、人間工学的に最適化された。

インストルメントパネル中央のディスプレイとセンターコンソール上部のタッチスクリーンは、ブラックパネル調仕上げ。一見すると宙に浮いているような印象だ。バーチャルアナログ表示にしたり、航続距離とともにナビゲーションのマップを拡大したり、インフォテインメント機能のメニューを表示させたり、さまざまなレイアウトに変化させることが可能だ。

次世代を感じさせる試みは、目に見える部分だけではない。サスピナビリティ(持続可能性)を重視し、インテリアからは動物由来の素材をいっさい排除。シート地やトリム地には、合成皮革を使用するなど、すべて植物由来を貫いている。

フラッグシップスポーツの『R8』を凌駕する最高出力により暴力的な加速性能を実現

気になる走行性能だが、前後のアスクルに設置されたモーターの最高出力は434kW(590hp)。アウディのフラッグシップスポーツ『R8』が397kW(540hp)なので、どれほどのモンスターマシンかは想像に難くないだろう。数値で表すと、0〜100km/hの加速は約3.5秒、200km/hにはわずか12秒で到達する。ただし、最高速度は航続距離を最大化するために240km/hに制限されているという。

もちろんアウディ伝統の4輪駆動システム「quattro」も健在だ。モーターが発生したトルクは、4つのホイールを介して路面へと伝達。前後のアクスル間だけでなく、左右のホイール間の駆動力も調整する電子制御システムによって、最適なトラクションが得られる。

気になる走行可能距離は、容量90kWh以上のリチウムイオンバッテリーと最大30%以航続距離伸ばすことができる回生システムを採用することで、400kmオーバー(WLTPモード)を達成した。また、充電時間は800Vの充電システムに対応することで、最速20分でバッテリーを80%まで充電可能だ。80%の充電でも320km以上を走行できるという。

夏には映画『アベンジャーズ4』に登場。どこまで市販モデルに性能が継承されるか

『e-tron GT concept』のテクノロジーは、同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェと密接に協力して開発されている。ポルシェは、開発を進めていた『ミッションE』をブランド初となるEVスポーツカーの『タイカン』として、2019年後半〜2020年に発売する予定だが、『e-tron GT concept』と同じプラットフォームを採用し、出力も『e-tron GT concept』を上回るといわれている。

『e-tron GT concept』はいわゆるショーモデル。今年夏公開予定の映画『アベンジャーズ4』に登場するとアナウンスされているが、このままの状態で市販化はされない。

現在はアウディスポーツによって量産化への移行作業が行われており、量産モデルは2020年後半に登場する予定とされている。デリバリー開始は2021年初頭。このポテンシャルがどこまで市販モデルに引き継がれるか、興味深いところだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Audi e-tron GT concept オフィシャル動画
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