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第52回 | 大人ライダー向けのバイク

日本刀というよりランボーナイフ──スズキKATANAが復活

バイクのニューモデル情報をウォッチしている大人ライダーなら、これを見たとき「すごいっ!」と声が出たに違いない。オークションサイトではもはや神格化されてしまっているスズキの名車、“カタナ”こと『GSX1100S KATANA』が38年のときを超え、新型『KATANA』としてケルンの地に降臨したのだ。1980年の「ケルンの衝撃」の再来である。

ケルンの衝撃と報じられた初代「カタナ」。逆輸入という言葉を広めた伝説のバイク

プロトタイプの『GSX1100S KATANA』がベールを脱いだのは1980年、ドイツの大都市ケルンで開催されたモーターショーでのこと。「カタナ」という名前のとおり、「日本刀」をモチーフとする先鋭的なフォルムと高い基本性能を持っていた。「カタナ」の登場は大きな反響を呼び、当時のバイク専門誌で「ケルンの衝撃」と報じられたのだ。

翌年、ヨーロッパ向けに輸出が開始されるや大ブームを巻き起こしたが、国内では二輪排気量上限(750cc)の自主規制があったために発売されず、どうしても乗りたいライダーは逆輸入で手に入れるしかなかった。つまり外国へ輸出した車両を、業者を通じて再び輸入したのである。逆輸入という言葉が一般的になったのは「カタナ」の存在が大きい。

国内の二輪排気量上限自主規制の撤廃を受けて、ようやく日本での販売が始まったのは、それから10年あまり後の1994年3月のことだ。以降、さまざまな伝説やエピソードを生み、幾度かのモデルチェンジを経たのち、2000年に生産を終了した。同年に1100台が限定発売された「ファイナルエディション」は、全台が即完売している。

その「カタナ」が復活する。新型『KATANA』を発表する地に選ばれたのは、やはりドイツのケルン。むろん往時の『GSX1100S KATANA』を原点とするニューモデルだ。

本家スズキを動かしたバイク専門誌のカスタマイズコンセプトモデル『カタナ3.0』

じつは、新型『KATANA』が誕生したきっかけは、昨年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で披露された『カタナ3.0』にあるという。『カタナ3.0』は、イタリアのバイク専門誌『MOTOCICLSMO(モトチクリスモ)』が企画し、スズキ『GSX-S1000F』をベースにしたカスタマイズコンセプトで、同誌のブースに展示された車両だ。

メディアの企画といっても、著名デザイナーやメーカーでプロトタイプを製作する技術者を巻き込んだカスタマイズは手が込んでおり、カウルやタンク、シートをすべて新しく作った非常に高いレベルのモデルだった。つまり『カタナ』の熱烈なファンが、本格的な技術者とともに、現代的な解釈を盛り込んだデザインのニューモデルを完成させたのである。この『カタナ3.0』の反響はとても大きく、ついに本家が動くことになったわけだ。

新型『KATANA』は『GSX1100S KATANA』を現代風にアレンジした独自のデザインをもつ。シャープで大胆なラインをあしらい、流線型のスタイリングを採用する。印象的なのは、長方形の縦型2灯LEDヘッドライトを格納するフロントカウルだ。LEDポジションランプは日本刀の切っ先をモチーフにし、「カタナ」らしい顔つきとなっている。

また、スズキのバイクとして初めてスイングアームマウントリヤフェンダーを採用し、リヤウィンカーとナンバープレートホルダーを下部に配置することで凝縮感のあるデザインを実現している。すっきりとしたリア周り、ショートテールスタイリングは好感がもてる。

新型『KATANA』は2019年春からヨーロッパで販売開始。日本国内での発売は未定

パワートレインは、スズキのストリートロードスポーツシリーズの最高峰である『GSX-S 1000』がベース。改良された999ccの水冷4サイクル直列4気筒エンジンは、最高出力110kw(147.5hp)/10000rpm、最大トルク108N・m/9500rpmを発揮する。

さらに、3段階から選択可能なトラクションコントロール、ABS、倒立フロントフォーク、ブレンボ社製のラジアルマウント・フロントブレーキキャリパーなどを装備した。

さて、国内の「カタナ」ファンはどう感じたであろうか。筆者の第一印象は、「日本刀」というより「ランボーナイフ」。初代はたしかに細身の日本刀のイメージだったが、新型は背にワイヤーを引き切るノコギリの刃がついたサバイバルナイフを思い起こさせる。

新型『KATANA』はスズキの浜松工場で生産され、2019年春からヨーロッパを中心に販売が開始される予定だという。国内で発売されるかどうかは未定。価格も未発表だ。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) SUZUKI MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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