editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第65回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデスAMG A35──これはAMGの新たな入門機か?

ヨーロッパのCセグメントには、使い勝手のいいコンパクトカーが属するが、走りが魅力のホットハッチがしのぎを削るカテゴリである。代表車種はフォルクスワーゲン『ゴルフGTI』、ルノー『メガーヌR.S.』、BMW『M140i』、アウディ『RS 3』など。メルセデス・ベンツなら、AMGのエントリーモデルとなる『A45 4MATIC』がこのクラスに当てはまるだろう。10月のパリサロンで発表された『A35 4MATIC』は、その『A45』の弟分というべきモデルだ。同時にAMGが新たに展開する「35」シリーズの第一弾でもある。

誰もが操れるAMGの入門モデル。『A45 4マチック』の弟分として登場した『A35』

『A35 4MATIC(4マチック)』は、『Aクラス』に設定される新たなAMGのエントリーモデルとなる。これまでその役割を担ってきた『A45 4マチック』は、2.0L直列4気筒ツインスクロールターボエンジンを搭載し、最高出力381psのパワーをAMGが開発した4輪駆動システム「4マチック」によって路面に伝える正真正銘のホットハッチだ。

しかし、いくらスポーツモデルといっても、『A45 4マチック』は日常的に使うコンパクトカーとしてはやや過激すぎたのかもしれない。もっと気軽に乗ることのできるAMGモデルはないものか? おそらくそんなニーズに応えようとメルセデス・ベンツが新たに開発したのが『A35 4マチック』であり、新シリーズの「35」なのだろう。

現行の「45」シリーズは『CLAクラス』や『GLAクラス』にも設定され、普段使いしつつ走りも愉しみたいユーザーから多くの支持を得てきた。当然のことながら、新しい「35」シリーズも『CLAクラス』や『GLAクラス』に設定されることになる。

エントリーモデルといっても最高出力は306ps。メカニズムには新技術を豊富に投入

搭載されるエンジンは『A250』の2.0L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン「M260型」をパワーアップしたもの。最高出力306ps、最大トルク400Nmを発揮する。

低排圧ツインスクロールターボや「カムトロニック」と呼ばれる可変バルブコントロール、さらにピストンの摺動部の抵抗を低減するシリンダーホーニングなど、新技術がふんだんに投入され、クランクケースには現行『A45 4マチック』の「M133型」と同じアルミニウムを採用。この強靭かつ軽量な素材は、車重の低減にも寄与している。

そこへ組み合わせるトランスミッションは「AMGスピードシフトDCT 7G」だ。「RACE-START」と名付けられたローンチコントロールを搭載しており、サーキット走行も想定していることがわかる。四輪駆動システムの「AMGパフォーマンス4マチック」は前後のトルク配分を100:0(前輪のみ)から50:50まで無段階に行えるという。

電子制御システムとして「AMGダイナミック セレクト」を搭載し、走行モードは「スリッピー」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「インディビデュアル」の5種類から選択可能。フルパワーが体感できる「スポーツ+」もさることながら、滑りやすい路面に対応するストリートモードの「スリッピー」が設定されたのは特筆すべきポイントだ。走行モードに連動してエキゾーストのフラップが開閉し、サウンドの変化も愉しめる。

オプションとなるが、ダンパーにはメルセデス・ベンツの上級モデルでおなじみのアダプティブダンピングシステムを採用。減衰特性を3種類のモードから選ぶことができる。

ひと際目を引くバンパーのカナード。『A35 4マチック』が市販車として初めて装着?

エクステリアでは、ひと目でAMGモデルとわかるフロントグリルのツインルーバー、バンパーのフラップ付きエアインテークが引き締まった精悍なフェイスを演出する。とりわけインパクトがあるのはバンパー横のカナードだ。国産車のカスタムカーではよく見かけるが、市販車の純正パーツとして装着されるのは初めてではないだろうか。

リアにもルーフ後部のノーマルスポイラーにアドオンされるかたちでウイングが追加された。バンパーはエアダクトを両脇に備え、リア下部は大胆なデザインのディフューザーとテールパイプの組み合わる。随所にAMGエアロパッケージが装着されたスタイリングはじつにスポーティ。写真のモデルはイメージカラーのイエローだが、カナード、エプロン、ドアミラー、リアウィングなどはブラックに塗装されている。18インチのAMG専用ホイールもブラックで、巨大なブレーキキャリパーは「AMG」のロゴ入りのシルバーだ。

インテリアはブラックを基調とし、そこへイエローがアクセントカラーとして添えられている。シートはアルティコの人工革張りで、AMGスポーツステアリングを装備。むろん新型『Aクラス』と同様に、最新のインフォテインメントシステム「MBUX」、AIを用いた話題のデジタル・パーソナル・アシスタントも備える。

画期的な「AMGトラックペース」。ハイテク技術でサーキット走行を支援してくれる

「AMGトラックペース」と呼ばれるデータロガー機能にも注目したい。これは「MBUX」の一部を使ってサーキット走行時の加速や速度といったさまざまなデータを集積し、ラップタイムを削るための助けをしてくれるドライビング支援システムのこと。

たとえば、ドライバーがサーキットを走ると、これまでの走行データから基準となる走りを割り出し、それよりも速い場合は「グリーン」、遅い場合は「レッド」と、マルチディスプレイを通じてクルマが教えてくれるのだ。ただし、日本国内のサーキットのデータが「AMGトラックペース」に収録されているかどうかは現時点ではわからない。

『A35 4マチック』は、エントリーモデルというには十分すぎるスペックを秘めている。これまでAMGに乗るのを躊躇っていたドライバーに向けたクルマといってもいいだろう。スポーツモデルで街をさりげなく流したい、しかしたまにはサーキットも走ってみたいというライトなオーナーを掘り起こす一台になるのではないか。『A35 4マチック』の日本での発売時期や価格はまだ不明。ヨーロッパでは2019年1月に発売される予定だ。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Mercedes-AMG A 35 4MATIC オフィシャル動画
ピックアップ
第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索