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第64回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデス・ベンツBクラス──小型車以上、ミニバン未満

『Bクラス』は、手が届きやすいメルセデス・ベンツのなかでも『Aクラス』や『Cクラス』に比べると少し地味な存在かもしれない。しかし、それなりの台数を販売しており、立派な主要モデルだ。『Aクラス』やアウディ『A3スポーツバック』、ボルボ『V40』といったミドルサイズのハッチバックよりも車体が大きく、「コンパクトカー以上、ミニバン未満」といったところだろうか。2005年に初代がデビューし、2011年に第二世代が登場。それから7年、パリサロンで第三世代が発表された。

ダイナミックなエクステリア。スポーツツアラーとして開発された新型『Bクラス』。

新型『Bクラス』が重点を置いたのは、スポーティーさだ。今回は「スポーツツアラー」として開発されたという。そのため、エクステリアはかなりダイナミックになった。

調している。全体のデザイン思想は、現行の『Aクラス』などで導入されている新世代メルセデスのデザインコンセプトに沿ったもの。具体的には、ロングホイールベースに短く詰められた前後のオーバーハング、低めのルーフラインといった走りを想起させる要素だ。結果として、新型『Bクラス』のCd値(空気抵抗)は現行モデルより0.01少ない0.24に抑えられた。

インテリアでも次世代メルセデスのデザインコンセプトが目立っており、それらは大型液晶パネルを2枚組み合わせたインパネ、航空機を思わせるタービンスタイルのエアベントといった部分で顕著に見て取れる。また、室内幅は1456mm。現行モデルよりも33mm拡大し、乗員は余裕を持って移動できるようになった。

荷物を積むことも多いボディ後部だが、リアシートを動かすことでラゲッジースペースは455〜705Lの範囲で変更が可能だ。シートを倒せば最大で1540Lに及び、使い勝手も考慮されている。

クラスを超えた充実ぶり。新型『Bクラス』は『Sクラス』の先進安全技術を搭載する

テクノロジーに関しても、次世代メルセデスから多くが流用され、最新の先進運転支援システム(ADAS)を搭載した。

『Sクラス』にも搭載されている、先行車との車間距離を維持する「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」をはじめ、地図やナビゲーションデータを使用しながら最大500メートル先の交通量を予測するシステムといった、クラスを超えた先進安全技術が売りのひとつだ。クラスを超えるという意味では、マッサージ機能付きシートもそのひとつだろう。また、話題のインフォテインメントシステム「MBUX」も搭載し、音声で「Hey、メルセデス」と呼びかければ、さまざまなサービスを提供してくれる。

パワートレイン(欧州仕様)は、ガソリンエンジンが2種類で、ディーゼルエンジンが3種類。エンジンモデルは『B180』が最高出力100kW(136hp)、最大トルク200Nm。『B200』は最高出力120kW(163hp)、最大トルク250Nmを発揮する。いずれも7G-DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせる。

ディーゼルモデルは、『B180d』が最高出力85kW(116hp)、最大トルク260Nm、ミッションにはやはり7G-DCTを搭載する。『B200d』は最大出力110kW(150hp)、最大トルク320Nm、『B220d』が最高出力140kW(190hp)、最大トルク400Nm。 こちらのトランスミッションはいずれも8G-DCTだ。

直接的なライバルはBMW『2シリーズ』。ヨーロッパでのデリバリーは来年2月から

【本文3】
新型『Bクラス』は、ヨーロッパでは今年12月に発売され、2019年2月からデリバリーが開始される。日本への導入時期は現時点ではまだ未定だ。

『Bクラス』の直接的なライバルは、間違いなくBMW『2シリーズ』だろう。場合によってはフォルクスワーゲン『ゴルフ』も視野に入るかもしれない。新世代メルセデスのエッセンスを十分に取り込んで、フルモデルチェンジした『Bクラス』。ひとクラス上の快適性や安全性能は、ライバルに対して大きなアドバンテージになりそうだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi Photo by (C) Daimler AG Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)
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Mercedes-Benz B-Class オフィシャル動画
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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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