ボリンジャーが『B1』の市場投入を待たずに発表したピックアップトラックの『B2』
『B1』は新興企業のボリンジャー・モーターズが初めて開発した車両だ。EVトラックの一種だが、SUT(スポーツ・ユーティリティ・トラック)を名乗っている。いまだに価格も販売時期も明確になっていないのに、すでに2万台もの予約を抱えているという。
ボリンジャー『B1』は驚くべき積載能力を持ちながら、エコカーとしての性能に優れ、無骨ながらも洗練されたスタイリングが高い次元でパッケージされている。こうした点がユーザーに期待されているからこそ、2万台もの予約が集まっているのだろう。
とはいえ、『B1』の市場投入を待たずに第二弾モデルを発表したことには驚かされた。いってみれば、最初の商品が現物評価を受ける前に商品ラインを拡大してきたわけだ。自動車メーカーがこれほどチャレンジングにリングに上がってきた例があっただろうか。
新興のベンチャー企業らしく、一気にブランドを確立してしまう戦略かと思われたが、じつは第二弾モデルの『B2』の投入は当初から予定されていた計画だという。下の写真の左の車両がSUTの『B1』。そして右がピックアップトラックの『B2』だ。
ハイエンドPCの筐体のような車体には、フルサイズのベニヤ板を72枚も積載できる
『B2』は、SUTである『B1』のスペックと骨格をそのまま受け継いだピックアップトラックだ。駆動方式も『B1』と同様の電動全輪駆動システムを採用し、120kWhのバッテリーパックによって2基のモーターを駆動する。
大きなロードクリアランスが得られるハイドロニューマチック・サスペンションや、インホイールのポータルアクスルなどの特徴も『B1』と同じ。スチール製のラダーフレームに載せられたオールアルミ製のボディは直線と面だけで構成されているが、その仕上がりは無骨なようでいて、じつに美しく、それこそハイエンドPCの筐体のようだ。
最高出力は英馬力に換算すると、なんと520hp。加速性能は0-60mph(96.56km)で6.5秒を誇る(当初は4.5秒と発表されたが、それは資料上の誤りだったようだ。それでもメルセデス・ベンツ『C250』などと同等の加速力を持つ)。車体重量が約4536kgもあることを考えると、やはり強烈な加速といっていいだろう。
『B1』との大きな違いは、もちろん49×69インチ(124×175㎝)というピックアップトラックならではの大きな荷台を持っていること。テールゲートを倒せばフルサイズのベニヤ板を72枚も載せることが可能で、積載重量のマックスは5000ポンド(2268kg)。通常の車両では運べない長尺の木材も運搬できるのは、荷台からフロントグリルまで貫通したスペースをもっているから。これこそEVのメリットを生かした大きな特徴だ。
この積載性を得るため、ホイールベースは『B1』の約302cmから約353cmへとグッと延長。全長は約5.27mで、サイドミラーを含めた全幅は約2.26mとなった。そのボリュームは軍用車ベースのフルサイズ四駆『ハマーH1』の4ドアワゴンを超えている。
オフロード性能はクロカン4WD以上か。バッテリーはフル充電までわずか75分
オフロード性能もなかなかのものだ。前後17インチのタイヤとポータルアクスルによってグランドクリアランスは15インチ(38cm)を獲得し、踏破性の指標となるアプローチアングルは大ヒットモデルのスズキ『サムライ(ジムニー)』をしのぐ52度。さらに、ランプブレークオーバーアングル25度、デパーチャーアングル28度と、いずれもクロスカントリー4WD並の数字を誇る。サスペンションにはハイドロニューマチックを採用した。
ボリンジャーの創業者で、開発者でもあるロバート・ボリンジャーは、『B1』も『B2』も時代の流れに乗って生まれたEVではなく、マルチユースなトラックとしての役割を熟慮し、その結果がカタチになったものだと語っているが、その言葉も十分納得できる。
気になる航続距離は、標準の120kwhのバッテリーパックでも約320kmの移動が可能という。DC急速充電器を用いればフル充電までわずか75分ほどというから、実用性は十分だ。
価格やオプションは2019年に発表し、生産開始は2020年内を予定。いよいよゼロ・エミッションを掲げるクルマがクロカンやピックアップにも登場する時代が来たようだ。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) Bollinger Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)