【首都スポ】[フェンシング]合言葉は#エペジーーン! 男子エペ陣を率いる見延2019年6月11日 紙面から
日本フェンシング界が、いま熱い。中でも注目は「エペジーーン」が合言葉の男子エペ。W杯団体戦で史上初の優勝を遂げた。日本人で初めてグランプリ(GP)大会を制した見延和靖(31)=ネクサス=と、W杯初優勝を果たした加納虹輝(21)=早大=の2人が中心となり、個人と団体両方で、2020年東京五輪でのメダル獲得を目指す。 (広瀬美咲) 「#エペジーーン」。見延のSNSによく登場する言葉だ。「もともとエペの選手を『エペ陣』と呼んでいて、僕らは『エペジーーン』って伸ばしている。周りの人を“ジーーン”と感動させるという意味も込めていて」。この合言葉で団体、個人とも快進撃を続け、ファンをジーーンとさせている。 日本フェンシング界で、最も勢いに乗る31歳だ。今季初戦となる昨年11月のW杯(スイス・ベルン)で優勝。世界選手権に次ぐ格のGP大会では、今年3月(ハンガリー・ブダペスト)に日本人初優勝を飾り、5月の大会(コロンビア・カリ)も制する快挙で、世界ランクは2位に上昇し「目標とする世界ランク1位が見えてきた」と胸を張った。 海外選手から「クレージー」と言われたほどの成績。中身は濃い。3月の大会は「世界一の準備をしてきた。ベスト8を超えるとその流れで、優勝まで一直線だった」と大会を通して好調を維持した。一方、5月の大会は「調子が上がりきっていない中でも、臨機応変に勝てた。ベテランの域にきている中で、調子の整え方がなんとなくわかってきたのかな」と、調子の浮き沈みがある中で勝ちきった。 見延の特長は何と言っても、長いリーチだ。177センチの身長に対し、リーチは197センチ。身長と腕を横に広げたリーチはほぼ同じ…という一般論は当てはまらない。「リーチの長さを生かした距離感や、独特の間合いの取り方が持ち味」(見延)。3月のGP大会決勝での最後の1点は、相手を距離を取りながらタイミングをうかがい、腕を伸ばしてつま先を突いた。長いリーチが生んだ初Vだった。 独特な練習にも取り組んできた。地元・福井の名産である「越前打包丁」を研いで集中力を高めたり、1メートルほどのマジックハンドで物をつかんで指先の感覚を養ったり。「競技では体の近くを突かれたりするので、あえて近くのものを取ったり。パッと反応できるようにしている」。一見フェンシングと関係ないように見えて、ちゃんと理由がある。 そんな見延が目標に掲げた人物は、織田信長。その訳は「新しい戦術を取り入れているところがすごい。僕もみんながしないような新しいことを取り入れるのが好きで」。世界選手権や五輪での金メダル、世界ランキング1位は「目標であり通過点。教科書に載るような歴史的な最強のフェンサーになりたい」。ユニークでクレイジーな剣士が「エペジーーン」を引っ張る。
◆フェンシングは3種目▼エペ 有効面は足の裏を含めた全身。先に突いた方にポイントが入り、両者同時に突いた場合は双方のポイント。 ▼フルーレ ポイントの有効面は胴体のみ。先に腕を伸ばし剣先を相手に向けた方に「攻撃権」が生じ、有効面を突いたときに得点が入る。 ▼サーブル 有効面は上半身のみ。フルーレとエペの「突き」に加え、「斬り(カット)」もある。フルーレと同様「攻撃権」に基づく。 ◆主な国際大会フェンシングの主な国際大会は五輪、世界選手権、GP大会、大陸別選手権、W杯の5つ。五輪から順にポイントが高く、各大会の獲得ポイントで世界ランキングを競う。GP大会のみ団体戦の開催はない。東京五輪の代表選考は今年4月3日から20年4月4日までの大会がポイントの対象となる。日本の出場枠は男女各種目最大3。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。
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