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第53回 | 大人ライダー向けのバイク

KTM スーパーデュークGT──最終兵器のスーパーツアラー

国土の面積は北海道とほぼ同じ。そのうちアルプス山脈が国土の62%を占め、海抜500m以下の地は32%しかない。ヨーロッパ中部のこんな高地にある国オーストリア。この地に本社をおくモーターサイクルブランド「KTM」は、とても個性的なコンセプトのバイクを数多くリリースしており、ヨーロッパはもちろん、日本でも数多くのファンから支持されている。なかでも、先ごろ2019年モデルが発表された『1290 SUPER DUKE GT』は、KTMならではのスポーツマインドをもった長距離スポーツツアラーだ。

アウトバーンを疾走というより、アルプス山脈を縫うように走るための山岳ツアラー

KTM『1290 SUPER DUKE GT(スーパーデュークGT)』は、ヨーロッパの短い夏を堪能するために、駆け足で移動するバイク乗りが選ぶ最終兵器のスーパーツアラーだ。

その使い方は、アウトバーンを疾走するというより、アルプスの山々を高速で縫うように駆け抜けるというもの。つまり山岳ツアラーなのだ。『スーパーデュークGT』の太いパワーと長くしなやかな足は、急峻な坂道をものともせず駆け上がってくれる。

2019年モデルの『スーパーデュークGT』が発表されたのは、ベルリン、ミュンヘンなどに次ぐドイツ第4の都市ケルンで開催された「インターモト2018」。兄弟車のスポーツネイキッド『1290 SUPER DUKE R』も同時に披露されたが、ここではスポーツツアラーの今後を占う新装備をまとった『スーパーデュークGT』を中心に紹介しよう。

2019年モデルの『スーパーデュークGT』は最新の空気力学でフロントマスクを刷新

2019年モデルの特徴的なポイントは、なんといっても「顔」だ。空気力学から新開発されたフロントマスクのフォルムは、これまでのバイクになかった独特の形状をもち、バックミラーにこのマスクが映ったら即座に道を譲りたくなるような殺気を感じさせる。

ウインドシールドの背後には、片手で高さ位置などが調節可能な6.5インチのTFTディスプレイ。フルカラーのスクリーンは直射日光の下でも視認でき、また、進行方向から目をそらさずにバイクの状態を認識できるポジションに配置されている。

これなら高速でコーナーを駆け抜けるときに自然とライダーの眼に入り、思う存分コーナリングを楽しめる。それは夜間でも同じで、燃料タンクスポイラーに取り付けられた「LEDコーナーリングライト」により、ターンの内側へ的確な照明を当ててくれるのだ。

パワーユニットは排気量1301ccの75度V型ツインLC8エンジン。今回発表された本国仕様は、最大出力175hp、最大トルク141Nmという驚異的なパワーを発揮し、KTMのストリートモデルのなかでもっともパワフルだ(「R」は177hp)。ニックネームの「ADRENALINE EXPRESS(アドレナリン・エクスプレス)」が嘘ではないこと証明してくれる。

最新世代のWPセミアクティブシャーシは、従来のKTMからさらに洗練されており、2019年モデルでは、ライダー、タンデム、荷物のサスペンション・プリロードをボタンひとつで調整できる。ツール不要なのだ。さらに、指先でタッチするだけで「コンフォート」「ストリート」「スポーツ」の3つのモードから走りの種類が選ぶことができる。

『スーパーデュークR』はカラーグライックを変更。続報は11月のミラノショーで

一方、『スーパーデュークR』はバランスに優れたシャシーにパワフルなエンジンを搭載したスポーツネイキッドバイク。2019年モデルはカラーグライックが変更された。

ホワイト(タンク)×ブラック(スポイラー)と、ブラック(タンク)×オレンジ(スポイラー)の2色だ。ホワイトカラーの『スーパーデュークR』が知的な雰囲気をかもし出しており、意外とクールだ。白いシャツのスーツ姿でまたがっても違和感ない。

価格や国内導入時期は未発表。2019年モデルの『スーパーデュークGT』『スーパーデュークR』は11月初めに開催されるEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)でもお披露目される予定なので、おそらくそこで続報が発表されることになるだろう。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C)KTM Sportmotorcycle AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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