その名は『ディーヴォ』。ブガッティが披露した最新かつ最強の超弩級スーパーカー
そのクルマがアンベールされたのは、カリフォルニア州モントレーで開催されたモントレー・カー・ウィークのイベントのひとつ、「クワイル:モータースポーツ・ギャザリング」でのこと。車名は『DIVO(ディーヴォ)』。ブガッティのニューモデルである。
ブガッティの車名には、かつてブガッティで活躍した往年のレーシングドライバーの名前が与えられることが多い。たとえば、『ヴェイロン』は1939年のル・マン24時間レースをブガッティ『タイプ57』で制したピエール・ヴェイロン、『シロン』はブガッティでもっとも成功した伝説のレーシングドライバー、かのルイ・シロンに由来する。
とくれば、ピンと来た人もいるかもしれない。そう、『ディーヴォ』とは、世界最古の歴史を誇った公道耐久レース、タルガ・フローリオを二度にわたって制したアルベール・ディーヴォの名から取ったものだ。マシンは、ブガッティが生み出した傑作レーシングカー『タイプ35』(正確には『タイプ35B』)。かつて日本テレビで放送されていた『カーグラフィックTV』のタイトルバックに登場するヴィンテージカーといえばわかるだろうか。
『ディーヴォ』は、この伝説のマシンのコンセプトを受け継ぐスーパーカーだ。これまでのブガッティと違い、ワインディングロードでのハンドリング性能を重視している。
あの『シロン』より8秒も速い! フロントマスクはまるで獲物を狙うホオジロザメ
ベースは『シロン』。しかしその走りを可能な限り進化させた一台となっている。ボディパネルの多くが専用に開発されたもので、とりわけフロント周りやリヤにはまったく異なるデザインが採用された。大きく口を開けたエアインテーク、スポイラー、鋭くなったヘッドランプが印象的なフロントマスクは、まるで獲物を狙うホオジロザメのようだ。
むろんこれらのデザインは冷却性能やエアロダイナミクスの強化を意図したもの。リアスポイラーの幅は23%拡大され、強力なダウンフォースを生み出す。さらにシャシーやサスペンションのセッティングも変更するなど徹底的に空力性能を高め、車重も35kg軽量化した。それにより『シロン』と比べてダウンフォースが約90kg向上したという。
エンジンは『シロン』と同様の8.0L W16気筒クワッドターボを搭載し、最高出力も『シロン』と変わらない(といっても1500psだが)。また、最高速度は『シロン』の420km/hに対し、『ディーヴォ』は380km/hと、あえて少し制限されている。
しかし、『ディーヴォ』はコーナーでの速さを追求したクルマであり、その真価は直線で発揮されるものではない。事実、ブガッティによると、南イタリアのナルド・サーキットで行ったテスト走行では、『シロン』がもつラップタイムを8秒も上回ったという。
『ディーヴォ』の価格は6.4億円。しかしワールドプレミアする前から全40台が完売
おそらく多くの人が気になるに違いない『ディーヴォ』の車両価格は、じつに500万ユーロから。日本円に換算すると、およそ6.4億円という途方もない金額である。
しかし、万が一、その金額を支払って手に入れたいという裕福な人がいたとしても、もはや手遅れだ。『ディーヴォ』は限定生産のスペシャルモデルで、ブガッティが選んだ40人の超富裕層にのみ販売される。そしてその40台は、ブガッティが自社の顧客に向けて内々にプレゼンテーションした段階で、すでに全台が完売してしまっているという。
おそらく、数カ月後にドバイあたりでこのクルマが目撃されるのではないだろうか。
Text by Dan Oshio
Photo by (C) BUGATTI AUTOMOBILES S.A.S.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)