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第30回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

アヴェンタドールSVJ──ランボルギーニ最強のラスボス

ランボルギーニファンにとって「J」は特別なアルファベットだ。それは、1969年に一台だけ製造した実験車両を意味する。この実験車両『J』と『ミウラ』をベースに製作されたレプリカが『JOTA』。日本語読みをすると『イオタ』である。多くの説明はいるまい。伝説の一台だ。一般的には『ミウラ イオタ』『ミウラSVJ(スーパーヴェローチェ イオタ)』と呼ばれる。この「SVJ」を冠したモデルが『アヴェンタドールSVJ』だ。『アヴェンタドール』はランボルギーニのフラッグシップ。これはその『アヴェンタドール』シリーズの頂きに君臨するモデルで、まさに「ランボルギーニのラスボス」といったところだろうか。

ニュルブルクリンク最速記録を更新。『アヴェンタドールSVJ』は『イオタ』の再来

ランボルギーニに「イオタ」が帰ってきた。それも、ニュルブルクリンク北コース、量産車最速タイムという輝かしい記録とともに。『アヴェンタドールSVJ』は、2015年に発表された限定モデル『アヴェンタドール スーパーヴェローチェ(SV)』の進化版だ。

これまでのニュルブルクリンク北コースの量産車最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSVJ』のタイムは6分44秒97と、それを2秒以上短縮し、大幅に記録を塗り替えた。

その最大の立役者は、言わずもがな、新たなパワートレインである。ミッドシップの6.5L V12 エンジンのスペックは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpm、最高速度350km/h以上。0-100km/h加速はわずか2.8秒だ。ちなみに、8.6秒あれば200km/hまで加速する。

計算し尽くされた空気力学が見てとれる『アヴェンタドールSVJ』のエクステリア

この加速性能を支えるのは、『アヴェンタドール S』に比べて50kgの軽量化に成功した乾燥重量1525kgの車重と、それにより生み出された1.98kg/hpという高いパワーウエイトレシオ。そして、計算し尽くされた空気力学だ。

空力へのこだわりは、エクステリアに見てとれる。サイドフィンを搭載したフロントマスクのエアインテークはよりワイドになって大型化。サイドにも大型のエアインテークを備える。リアでは軽量カーボンパネル素材の後部エンジンパネルが印象的。ランボルギーニファンにはおなじみのY字があしらわれ、まるで戦闘機の翼を思わせる形状だ。また、ヘキサゴン型の大きなスポイラーやディフユーザー、高い位置に設置されたウィングも存在感を発揮している。

これらの進化によって、『アヴェンタドール SVJ』は『アヴェンタドール S』と比較してダウンフォースを40%向上させた。このダウンフォースの改善に合わせて足回りも改良。アンチロールバーは『アヴェンタドール S』よりも50%ハードなセッティングとなった。

『ウラカン ペルフォルマンテ』にも搭載されたALA=可変型のエアロダイナミクス

ダウンフォースの向上は『アヴェンタドール SVJ』が背負った業のようなものだ。軽い車体に強力なエンジン。それでは車体が制御されず、場合によってはフロントから浮かび上がり一回転してしまう。車体をしっかりと地面に押さえつける空気の流れが必要なのだ。しかし、ただダウンフォースを強化するだけでは、トップスピードが遅くなる。

そのジレンマを解消したテクノロジーのひとつが、進化した「ALA(エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)」、「ALA2.0」である。ALAは『ウラカン ペルフォルマンテ』に搭載されている技術。平たくいえば可変型のエアロダイナミクスで、能動的に空力負荷を軽減してくれる。

ALAの特徴は、速度ではなく車両状態に連動する点だ。車両に搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ(LPI)」と連動。あらゆる走行条件において最高の空力設定を整える。

フロントでは、ALAが作動するとフロントスポイラー内のフラップが電動モーターによって開放されて空気を取り込む。これにより車体底部への気流が生まれて空気抵抗が減少、加速及びトップスピードの最大化に最適な条件が整う。ALAをオフにした場合はフラップが閉じて、気流は生まれない。その代わりに、高速でのコーナリング、フルブレーキング時に必要な高いダウンフォース(車が地面に押さえつけられる力)が発生する。

リアでは、開いたフラップが空気を取り込み、その空気はインナーチャンネル(空気の通り道)を伝ってウィング下へと運ばれる。結果として、ウィング上面と下面の気流に変化が生まれてダウンフォースが軽減。上から押し付けられる力が少なくなる分、加速力とトップスピードへの到達力が向上する。逆に、ALAがオフになると、リアフラップが閉じ、従来の固定式リアウィングと同様の働きとなってダウンフォースが発生し、高速コーナリング時やフルブレーキ時の安定性を高めてくれる。

さらに驚くべきは、「エアロ・ベクタリング」と呼ばれる仕組みだ。曲がる方向に応じてALAの設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる。それにより揚力やダウンフォースを調整し、車両全体の動的安定性を向上させるという。

『アヴェンタドールSVJ』の4輪駆動システムは、よりトルクがアップした改良型

操作性では、『アヴェンタドール S』と同じく、4輪操舵システム「ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング」を採用した。低速時に後輪がステアリングと逆方向を向くことで小回りが利き、高速時には前後輪が同じ向きとなってより俊敏で安定した走りとなる。

また、4輪駆動システムは、牽引力を最大化するトルクスプリットの改善が行われており、『アヴェンタドール S』に比べてリアアスクルに送るトルクが3%向上したという。

走行モードの選択も健在だ。ノーマルモードに相当する「ストラーダ」、スポーティな走りを愉しめる「スポルト」、サーキット走行モードの「コルサ」、そしてストラーダ、スポルト、コルサの3つをベースに自分好みにカスタマイズできる「エゴ」から選ぶことができる。

『アヴェンタドールSVJ』の価格は約5154万円。わずか63台限定の特別仕様車も登場

発表会では、ランボルギーニのステファノ・ドメニカリCEOが次のようにスピーチしている。

「『アヴェンタドール SVJ』は革新的な車で、私たちのスーパースポーツライナップの絶対的な頂点に君臨するモデル。速度や空力性能、運動性能は、宇宙船からジェット戦闘機などさまざまなものからインスピレーションを得ている。『アヴェンタドールSVJ』は、スーパー・スポーツカー開発の新たな可能性を切り拓き、未来に向かって一歩を踏み出した」

まさに、絶対の自信を持った最高峰のモデル。それだけに、価格も5154万8373円と超弩級だ。生産台数も900台に限定されており、デリバリーは2019年初めを予定している。

さらに、アメリカ・ペブルビーチのコンクール デレガンスでは、より希少な一台が発表されている。それが、『アヴェンタドールSVJ 63』(下の写真)。ランボルギーニの一号車が発表された1963年に敬意を表した特別仕様車で、63台の限定だ。ランボルギーニの歴史に残る、伝説の一台になるはずだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Lamborghini Aventador SVJ オフィシャル動画
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最強オープン──アヴェンタドールSVJロードスター

『イオタ』の名は、ある世代の男たちにとって特別な響きをもつ。言わずとしれたランボルギーニの幻のスーパーカーである。この『イオタ』に由来する車名を与えられ、900台が昨年限定発売された『アヴェンタドールSVJ』は、“史上最強のアヴェンタドール”として大きな話題となり、瞬く間に完売となった。その興奮が収まらぬなか、さらなる魅力を加えた一台が登場した。オープントップモデルの『アヴェンタドールSVJロードスター』だ。至高のV12サウンドをオープンエアで愉しむ。こんな贅沢がほかにあるだろうか。

伝説の「J」再び。最速記録をもつ『アヴェンタドールSJV』のオープンバージョン

スーパーカー世代の男性は、「SVJ」という三文字に胸を踊らせるに違いない。1969年に先行開発の名目でたった一台だけが作られ、のちに事故で失われた伝説の実験車両「J」。その純正レプリカにつけられた名前だからだ。レプリカは『イオタ(Jota)』、あるいは『ミウラSVJ』と呼ばれている。「SVJ」は「スーパーヴェローチェ イオタ」の略だ。

ベースとなったのはランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー『ミウラ』。生産台数については諸説あるが、6台、または8台ともいわれる。まさに幻のスーパーカー。だからこそ、『アヴェンタドール』シリーズの頂点に立つ存在として「SVJ」の名をもつモデルが登場したとき、ランボルギーニファンやスーパーカーファンが沸き立ったのである。

『アヴェンタドールSJV』が搭載するのは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpmを発生する6.5L V型12気筒エンジン。出力とトルクは、標準モデルよりもそれぞれ30hpと30Nm高められている。その圧倒的なパフォーマンスは、ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”での量産車最速タイム(当時)で証明済みだ。

従来の最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSJV』は、それを2秒以上も短縮する6分44秒97という驚異的なタイムを記録した。この最速クーペのオープンバージョンとなるのが、3月のジュネーブモーターショー2019でお披露目された『アヴェンタドールSJVロードスター』だ。

0-100km/h加速は驚異の2.9秒。ランボルギーニ史上“最速・最強”のロードスター

オープントップには『アヴェンタドールSロードスター』と同様の脱着式ルーフを採用した。ルーフは左右2分割式のカーボンファイバー製で、これを手動によって取り外す。クルマを降りなければならないが、オープン化の作業は非常に簡単で、ルーフも軽量。取り外したルーフはフロントのボンネット内にきれいに収納できるように設計されている。

電動で開閉するリヤウインドウを新たに採用したのもトピックだろう。ルーフを着けたクローズドの状態でも、ここを開ければV12サウンドをより愉しむことができるのだ。

脱着式ルーフにあわせてリヤのエンジンパネルの形状もフラットなものへと変更された。ただし、パネルにデザインされたランボルギーニファンにおなじみのY字は健在だ。そのほかのエクステリアはクーペを継承。大型エアインテーク、ワイドなサイドスカート、ヘキサゴン型スポイラー、リヤでは高い位置に設置された大型リアウィングが目を引く。

オープン化によって車重はクーペより50kgほど重くなっているが、それでも1575kg程度に収まっている。全長4943mm×全幅2098mm×全高1136mmものボディサイズをもち、12気筒エンジンを搭載するスーパーカーであることを考えると望外に軽量だ。それにより生み出されたパワーウエイトレシオはわずか2.05kg/hp。0-100km/h加速は驚異の2.9秒、0-200km/h加速は8.8秒でこなし、最高速度は350km/h超をマークする。

可変型エアロダイナミクスの搭載により、トップスピードを落とさず空力性能を強化

特筆すべきは「ALA2.0(アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ2.0)」と呼ばれるテクノロジーの装備だろう。『アヴェンタドールSJVロードスター』が搭載するのは、クーペと同じ最高出力770ps の V12エンジン。この強力なパワーユニットを軽量ボディに積めば、車体を制御できず、フロントから浮き上がって一回転しかねない。

そこで、トップスピードを落とすことなくダウンフォースを強化する、ランボルギーニの特許技術である「ALA」が必要となるのだ。「ALA」は、簡単にいうと能動的に空力の負荷を軽減してくれる可変型エアロダイナミクスのこと。速度ではなく、車両状態に連動するという特徴をもつ。フロントスプリッタとエンジンフードのアクティブフラップをモーター制御することにより、フロントとリヤの空気の流れをコントロールしてくれる。

この「ALA」と、搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ」(LPI)が連動し、あらゆる走行条件下で最高の空力設定を整えてくれる。さらに、曲がる方向に応じて「ALA」の設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる「エアロ・ベクタリング」も備える。

駆動方式は四輪駆動で、フロントアクスルとリアアクスルとの間トルク配分は道路条件、グリップ、ドライビングモードに応じて、リアルタイムに変化する。また、後輪操舵システム「ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング」や磁性流体プッシュロッド式のアクティブサスペンションを採用し、高次元のドライビングダイナミクスを実現した。

走行モードは、標準の「STRADA(ストラーダ)」、スポーティな走りの「SPORT(スポーツ)」、サーキット走行向けの「CORSA(コルサ)」、そしてこの3種類をベースに自分好みにカスタマイズすることができる「EGO(エゴ)」の4種類から選択可能だ。

『アヴェンタドールSVJロードスター』は800台限定生産。価格は6171万4586円

インテリアは航空機に着想を得たデザインとなっており、ドアやメータークラスター、コンソールなどにカーボンファイバーを採用。シートやダッシュボード上部、コンソールボックスにはレザーやアルカンターラを使用している。また、コクピットの随所にもY字デザインがあしらわれ、「SVJ ロードスター」のインテリアプレートも装備する。

限定生産台数はクーペよりも100台少ない800台。日本での価格は、クーペからおよそ600万円高となる6171万4586円(税込み)と発表されている。しかし、これはあくまでも参考価格だ。ランボルギーニは、顧客の要望に応じてボディカラーやインテリアに事実上無限の選択肢を用意しており、それらによって価格も大きく変動する。

ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドールSVJ』のずば抜けたパフォーマンスはそのままに、オープン化をはたした『アヴェンタドールSVJロードスター』。シリーズ最速・最強の称号をもつオープンモデルの上陸がいまから楽しみでならない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Lamborghini Press Conference – ジュネーブモーターショー2019
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