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第9回 | フィアットの最新車デザイン・性能情報をお届け

フィアット 500X──熟成されたレネゲードの兄弟SUV

コンパクトSUVはここ数年、日本でブームとなっているカテゴリだ。それを象徴するのがホンダ『ヴェゼル』やトヨタ『C-HR』のヒットで、今年20年ぶりにフルモデルチェンジされた軽自動車のスズキ『ジムニー』も納車1年待ちとなるほど売れている。欧州車なら『MINIクロスオーバー』『アウディQ2』あたりが売れ筋だろうか。ほかの欧州メーカーも新型車を続々投入しており、先ごろマイナーチェンジされたフィアット初のコンパクトSUV『500X』はその注目モデルのひとつ。日本では“通好み”といった装いのクルマだが、次世代パワーユニットを搭載するなど本格改良を実施。内外装もブラッシュアップされ、“熟成の後期型”というべき仕上がりとなっている。

ジープ『レネゲード』とメカニズムを共有するフィアットのコンパクトSUV

『500X』は、ミニバンの『500L』と同様に、フィアットのベストセラーモデル『500』から派生したコンパクトSUVだ。2014年にフィアットがクライスラーを傘下に収め、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)となったことにより誕生した。

『500』のデザインテイストを受け継ぐルックスからは想像しづらいかもしれないが、じつはクライスラーがジープブランドで販売するコンパクトSUV『レネゲード』と共同開発されたクルマなのだ。メカニズムも共有している。その『レネゲード』が今年6月にマイナーチェンジを受けているので、『500X』の改良も十分に予想されたことだった。

マイナーチェンジの最大の目的は、やや停滞する販売へのテコ入れだ。イタリアではトップ5に入る人気モデルだが、デビューから4年が経過したこともあり、ほかの欧州諸国や日本での伸びは今ひとつ。特にイギリスでは2017年の販売台数が60%以上落ち込んだ。

それだけに今回の改良は新世代パワーユニットを搭載する力の入ったものとなっている。

『500X』が搭載するのは静粛性と省燃費に優れた次世代のガソリンエンジン

新型『500X』に搭載されるパワーユニットは、フィアットの「マルチエア」テクノロジーを第3世代へと進化させた「FireFly(ファイアーフライ)」。1気筒あたり0.33Lのシリンダーユニットを採用した新しいモジュラー構造で開発され、ガソリンエンジンは1.0Lの直列3気筒ターボと1.3Lの直列4気筒ターボの2種類をラインナップする。

1.0Lの最高出力は120hp、最大トルクは190 Nm。1.3Lは最高出力150hp、最大トルク270 Nmを発揮する。また、欧州最新の環境基準であるユーロ6/D-TEMPに準拠するガソリンパティキュレートフィルター(GPF)を装備しており、いずれのエンジンも先代モデルに比べて静粛性が向上し、燃費性能が20%アップしているという。

このほか、おもに欧州向けとなるディーゼルエンジン(日本未導入)も1.3L、1.6L、2.0Lの3種類をラインナップ。こちらは1.3Lが最高出力95hp、最大トルク200Nm、1.6Lは最高出力120hp、最大トルク320Nm、2.0Lが最高出力150hp、最大トルク350Nmだ。ディーゼルエンジンもEuro 6 / D-TEMPの基準を満たすために改良が施されている。

トランスミッションは、1.0Lが6速MT、1.3Lは6速MTと6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)。ディーゼルエンジンの2.0Lには9速ATに4輪駆動が組み合わされる。なお、『レネゲード』に設定される高性能版の1.3Lはラインナップされないようだ。

「アーバン」「クロス」「シティクロス」の3つが用意される『500X』のトリム

エクステリアの大きな変更点はライト類のLED化だ。『500』シリーズの特徴である丸型ヘッドライトがフルLED化され、その下のポジショニングランプもLEDのデイタイムライトになった。いずれも2016年にマイナーチェンジされた『500』と共通のデザインだ。

従来のキセノンヘッドライトより20%明るくなり、消費電力もハロゲンヘッドライトに比べて50%減少したという。また、自動的にハイビームとロービームを切り替えるオートマチックハイビーム機能も追加された。リアは、こちらもLED化されたリアコンビネーションランプがリング状の新デザインとなり、『500』同様に中央にボディ同色のインサートが入る。

今回の改良では、トリムを「アーバン」「クロス」「シティクロス」の3種類から選ぶことが可能となった。デザインがそれぞれ異なり、「アーバン」は『500』のようなテイストを持つ都会的なモデルで、「クロス」「シティクロス」はSUVテイストがより強調されている。

とりわけ「クロス」系は、ルーフバーを備え、チタングレーのスキッドプレートを装着するなど、ワイルドな本格的オフローダーといった力強いデザインとなっている。

インテリアでは、ステアリングホイールの形状が変更され、コクピット中央に高解像度の7インチタッチスクリーンのディスプレイを配した新しいメーターパネルを採用。インフォテイメントシステムはApple CarPlayとAndroid Autoに対応する、また、ファブリックも新しくなり、レザー仕様も含めて7種類のインテリアが用意される。

交通標識認識システムを全グレードに標準装備。価格は300万円~350万円?

さらに、フィアットの「交通標識認識システム」を全グレードに標準装備する。これはフロントガラス内側に取り付けられたカメラが道路標識をメーター内に表示したりアラートを出したりするものだが、新型『500X』では、その情報をタッチスクリーンに送信してドライバーにスピード超過を警告してくれる「スピードアドバイザー」機能も搭載する。

そのほか、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、レーンアシストをはじめ、ブラインドスポットアラート、駐車スペースから出るときに近接車両を教えてくれるクロスパスディテクションなど、安全性にも万全の配慮がなされている。

価格はまだアナウンスされていないが、内容の充実を加味しても300万円~350万円程度になるのではないだろうか。『MINIクロスオーバー』『アウディQ2』『プジョー2008』らがしのぎを削る市場に投入される『500』ファミリーのコンパクトSUV。ほかにない存在感を持つクルマの熟成型だけに、今から上陸が楽しみだ。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) FCA Italy S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
FIAT New 500X オフィシャル動画
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第11回 | フィアットの最新車デザイン・性能情報をお届け

アバルト595エッセエッセ──SSの名をもつホットハッチ

「SS(スーパースポーツ)」をイタリア語読みすると、「エッセエッセ」となる。1960年代のフィアット車が装着していた伝統あるチューニングキットの名称だ。以来、エッセエッセ仕様のフィアットは、多くのモータースポーツで輝かしい成績を収めた。復活したのは10年余り前のこと。フィアットをベースにした高性能ブランド、アバルトの『グランデプント』に設定され、その後『500』にも登場した。このエッセエッセが最新の『595』に用意された。「アバルト」ブランドの創立70周年を記念した特別なモデルである。

アバルト『595エッセエッセ』はブランド70周年を記念したスーパースポーツ仕様

アバルトは、今からちょうど70年前の1949年にイタリアで創業された自動車メーカーだ。トレードマークは創業者カルト・アバルトの誕生月の星座であるサソリ(スコルピオーネ)のエンブレム。フィアット車のチューニングを得意とし、とりわけ『500(チンクエチェント)』をベースにしたモデルは抜きん出た速さからブランドの象徴となった。

現在はFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)に属するブランドとして、フィアット車をベースにチューニングカーテイストの強いスポーツモデルを展開する。代表車種は、フィアット『500』をベースにしたマニアックなホットハッチ『595』シリーズ。その最高峰に位置づけられるのが、今回登場した『595エッセエッセ』だ。ブランド創立70周年を記念した特別モデルとして、ジュネーブモーターショー2019で発表された。

エンジン、内外装…。すべてがトップパフォーマンスモデルにふさわしい特別仕立て

パワーユニットは、最高出力を従来の160psから180psに高めた排気量1.4Lの直列4気筒ターボエンジン。出力を引き上げながら優れた吸気効率を実現するBMC製のエアフィルターを備え、官能的なサウンドを奏でるAkrapovic(アクラポビッチ)のエキゾーストシステムも装備する。ブレーキはブレンボ製「フロントブレーキ・システム」を採用した。

ボディカラーはグレーのように見えるが、これは「レーシングホワイト」と呼ばれる新色だという。そこへ「ABARTH」のロゴが入ったホワイトのサイドストライプ、やはりホワイトのドアミラーカバーと17インチの専用アロイホイールがアクセントを効かせる。ホイールから覗くブレーキキャリパー、センターに配されたサソリのマークはレッドだ。ボディ側面には、特別なモデルであることを示す創業70周年の記念エンブレムが装着される。

インテリアは外観以上にスポーティな雰囲気だ。インテリアパネル、サベルト製シートの背面、足元のペダルなどはカーボンファイバー製。シートのヘッドレストには「ABARTH 70」の刺繍をあしらった。さらに、サーキットでスポーツ走行を愉しむ際に走行データを記録する「アバルト・テレメトリー」を装備するほか、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応するブランド最新のインフォテイメントシステム「Uコネクト」が搭載されている。

ラリーカーをオマージュした限定124台生産の『124ラリートリビュート』も登場

ジュネーブモーターショー2019では、FIA(世界自動車連盟)「グループR-GT」規定で開発されたレーシングカー『124R-GT』をオマージュした限定124台の特別仕様車、『124ラリートリビュート』も発表された。『124R-GT』は、昨年の「R-GTカップ」や欧州ラリー選手権など12カ国のラリーに参戦し、40回以上のクラス優勝を成し遂げている。

『124ラリートリビュート』のベースは、むろん『124スパイダー』だ。ラリー開催地にちなんだ「コスタブラーバ・レッド」「チュリニホワイト」の2色のボディカラーが用意され、いずれもマットブラックのボンネットを組み合わせる。ミラーキャップはレッド。そのほか、アクセサリーとしてカーボンファイバー製ハードトップが設定されるという。

『595エッセエッセ』『124ラリートリビュート』ともに、価格や発売時期はアナウンスされていない。日本に導入されるかどうかも未定。しかし、国土の狭い日本ではホットハッチやライトウェイトスポーツのニーズが高い。上陸すれば注目の一台となりそうだ。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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