editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第110回 | 大人のための最新自動車事情

いざ大冒険へ──超タフな極限仕様のキャンピングカー

モーターホームとは、北米で人気を集める自走式の大型キャンピングカーのことだ。数千万円するモデルもザラで、そのスケールはもはや「動く家」といっていい。なかでも、タフさに関してはおそらく世界一なのがこの車両だろう。ダイムラーの多目的作業車『ウニモグ』をベースに、オーストラリアのアースクルーザー社が架装し、無補給で3500kmの移動が可能な“アドベンチャー”を誕生させたのだ。その名は『エクスプローラーXPR440』。このエクストリームなモーターホームなら、世界一周の冒険旅行もできそうだ。

『ウニモグ』をベース車両にした“最先端アドベンチャー”のモーターホーム

キャンピングカーの最大の魅力は、なんといっても気に入った場所で時間に縛られずゆったりと過ごせることにある。宿泊機能をもつクルマで出かけるレジャーはヨーロッパ発祥だが、それを文化に発展させたのは間違いなくアメリカだ。ゆえにアメリカでは、「RV(レクリエーションビークル)」といえばモーターホーム(=キャンピングカー)を意味する。

しかし、本格的なフリークには、アウトドアをレジャーの枠を超えたものとして体験したいと願う人々も少なくない。男というのは本能的に冒険旅行に憧れるものだ。過酷極まりない道のり、想像を絶する自然との遭遇。なぜかそうしたものに惹かれてしまう。

そんな「冒険」と呼びたくなる旅を現実のものとしてくれそうなのが、エクストリーム仕様というべきモーターホーム、『エクスプローラーXPR440』だ。

製造はオーストラリアのビルダーであるアースクルーザー。ダイムラー『ウニモグU430』をベースに、「最先端アドベンチャー」をコンセプトに開発された。『ウニモグ』は多目的作業車として知られるタフな車両だ。アドベンチャーとしての素質を考えると、この選択には納得するしかない。『ウニモグ』ほど走破性と拡張性に優れた車両はほかにないからだ。

ありとあらゆる設備を搭載。無補給で3500kmが走破可能なキャンピングカー

『ウニモグ』は戦後まもない1947年に生産が開始され、現在までに累計40万台を販売するベストセラーモデルだ。世界中のあらゆるフィールドで活躍し、多数の国が軍用車のベースとしても採用している。

大径タイヤとショートホイールベース、そして短いオーバーハングとポータルアクスルを採用し、それらの特徴は悪路を走破するうえでダントツの性能を発揮する。さらにステアリングは左右に移動可能で、前進24段・後進18段というトランスミッションを持つ。

『エクスプローラーXPR440』は、この『ウニモグ』に最先端アドベンチャーであるための装備を与えたモーターホームだ。キャビンには寝心地の良さそうベッドをはじめ、212Lの室内冷蔵庫と保存用冷蔵庫、容量2.5kgの洗濯機、快適装備のツインエアコン、美しいアウトサイドキッチン(シンク)、700Wの電子レンジ、ウォークスルーのトイレとシャワーなど、生活に必要なあらゆる設備をそなえる。240Vのバーベキューグリルも装備するほどだ。

これらの設備を支えるのは、24V200A×2個のリチウムバッテリーと出力1000Wの太陽電池。そのほか、温水タンク、前後に備えられた電動ウインチ(オプション)、860Lの水タンクと800Lの燃料タンクを持ち、キャビンの断熱性は寒冷地から熱帯地域まで考慮されている。

無補給で3500kmの移動が可能とされているが、そこには実際にオーストラリアの砂漠をテストランして700kmを走破した裏付けがある。この惹句は信用してもいいだろう。

計5台のカメラによってキャンプ地から最大45日間のライブ映像を配信できる

独立して作動する4本のレベリングジャッキにも注目したい。当たり前のことだが、キャンプ地の地面が水平とは限らない。それが「冒険」だとすればなおさらだ。わずかな傾斜でも室内の居心地が悪くなるので、車体を水平にするために姿勢制御するのだ。

もちろんそれはメンテナンスやタイヤ交換にも威力を発揮する。とくに大径タイヤの交換はやっかいなものだが、このジャッキによって作業は飛躍的に軽減される。そのうえスペアタイヤ用の電動リフターまで用意されているから、整備すら楽しくなりそうだ。『ウニモグ』らしく、重量物の積載に活躍する多目的クレーンまで備える。

面白いのは電子装置の装備が豊富なことだ。たとえば、Bluetooth(iPad / Android互換)の多機能タッチスクリーンディスプレイ、DVR 24/7録画監視装置、80chのUHFラジオ、サーモグラフカメラ(野生動物の発見に使うのか?)。さらに、オンボードのネットワークとホットスポットを介してインターネットに接続し、各所に配置された計5台のカメラでキャンプ地から最大45日間のライブ映像を発信・記録できるようになっている。

世界一周の冒険旅行にチャレンジするための“チケット代(価格)”は3600万円から

最先端アドベンチャーとしての装備もすごいが、それにも増して機能性とタフさがひと目でわかるスタイリングが魅力的だ。まるで『風の谷のナウシカ』や『AKIRA』などで描かれた文明崩壊後の世界を生き抜くための車両のようでもある。

価格は選択する装備によって大幅に変わり、32万ドル(3600万円)から43万ドル(4800万円)になるようだ。ランボルギーニが買える金額だが、世界一周の冒険旅行にチャレンジするためのチケット代と考えれば、それほど高いといえないかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) EarthCruiser
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Explorer XPR440 オフィシャル動画
ピックアップ
第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索