『ウニモグ』をベース車両にした“最先端アドベンチャー”のモーターホーム
キャンピングカーの最大の魅力は、なんといっても気に入った場所で時間に縛られずゆったりと過ごせることにある。宿泊機能をもつクルマで出かけるレジャーはヨーロッパ発祥だが、それを文化に発展させたのは間違いなくアメリカだ。ゆえにアメリカでは、「RV(レクリエーションビークル)」といえばモーターホーム(=キャンピングカー)を意味する。
しかし、本格的なフリークには、アウトドアをレジャーの枠を超えたものとして体験したいと願う人々も少なくない。男というのは本能的に冒険旅行に憧れるものだ。過酷極まりない道のり、想像を絶する自然との遭遇。なぜかそうしたものに惹かれてしまう。
そんな「冒険」と呼びたくなる旅を現実のものとしてくれそうなのが、エクストリーム仕様というべきモーターホーム、『エクスプローラーXPR440』だ。
製造はオーストラリアのビルダーであるアースクルーザー。ダイムラー『ウニモグU430』をベースに、「最先端アドベンチャー」をコンセプトに開発された。『ウニモグ』は多目的作業車として知られるタフな車両だ。アドベンチャーとしての素質を考えると、この選択には納得するしかない。『ウニモグ』ほど走破性と拡張性に優れた車両はほかにないからだ。
ありとあらゆる設備を搭載。無補給で3500kmが走破可能なキャンピングカー
『ウニモグ』は戦後まもない1947年に生産が開始され、現在までに累計40万台を販売するベストセラーモデルだ。世界中のあらゆるフィールドで活躍し、多数の国が軍用車のベースとしても採用している。
大径タイヤとショートホイールベース、そして短いオーバーハングとポータルアクスルを採用し、それらの特徴は悪路を走破するうえでダントツの性能を発揮する。さらにステアリングは左右に移動可能で、前進24段・後進18段というトランスミッションを持つ。
『エクスプローラーXPR440』は、この『ウニモグ』に最先端アドベンチャーであるための装備を与えたモーターホームだ。キャビンには寝心地の良さそうベッドをはじめ、212Lの室内冷蔵庫と保存用冷蔵庫、容量2.5kgの洗濯機、快適装備のツインエアコン、美しいアウトサイドキッチン(シンク)、700Wの電子レンジ、ウォークスルーのトイレとシャワーなど、生活に必要なあらゆる設備をそなえる。240Vのバーベキューグリルも装備するほどだ。
これらの設備を支えるのは、24V200A×2個のリチウムバッテリーと出力1000Wの太陽電池。そのほか、温水タンク、前後に備えられた電動ウインチ(オプション)、860Lの水タンクと800Lの燃料タンクを持ち、キャビンの断熱性は寒冷地から熱帯地域まで考慮されている。
無補給で3500kmの移動が可能とされているが、そこには実際にオーストラリアの砂漠をテストランして700kmを走破した裏付けがある。この惹句は信用してもいいだろう。
計5台のカメラによってキャンプ地から最大45日間のライブ映像を配信できる
独立して作動する4本のレベリングジャッキにも注目したい。当たり前のことだが、キャンプ地の地面が水平とは限らない。それが「冒険」だとすればなおさらだ。わずかな傾斜でも室内の居心地が悪くなるので、車体を水平にするために姿勢制御するのだ。
もちろんそれはメンテナンスやタイヤ交換にも威力を発揮する。とくに大径タイヤの交換はやっかいなものだが、このジャッキによって作業は飛躍的に軽減される。そのうえスペアタイヤ用の電動リフターまで用意されているから、整備すら楽しくなりそうだ。『ウニモグ』らしく、重量物の積載に活躍する多目的クレーンまで備える。
面白いのは電子装置の装備が豊富なことだ。たとえば、Bluetooth(iPad / Android互換)の多機能タッチスクリーンディスプレイ、DVR 24/7録画監視装置、80chのUHFラジオ、サーモグラフカメラ(野生動物の発見に使うのか?)。さらに、オンボードのネットワークとホットスポットを介してインターネットに接続し、各所に配置された計5台のカメラでキャンプ地から最大45日間のライブ映像を発信・記録できるようになっている。
世界一周の冒険旅行にチャレンジするための“チケット代(価格)”は3600万円から
最先端アドベンチャーとしての装備もすごいが、それにも増して機能性とタフさがひと目でわかるスタイリングが魅力的だ。まるで『風の谷のナウシカ』や『AKIRA』などで描かれた文明崩壊後の世界を生き抜くための車両のようでもある。
価格は選択する装備によって大幅に変わり、32万ドル(3600万円)から43万ドル(4800万円)になるようだ。ランボルギーニが買える金額だが、世界一周の冒険旅行にチャレンジするためのチケット代と考えれば、それほど高いといえないかもしれない。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) EarthCruiser
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)