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第49回 | 大人ライダー向けのバイク

インディアンFTR1200──ブランド復活の狼煙を上げろ

アメリカ人が熱狂するオートバイレースのひとつに「フラットトラックレース」がある。硬く締められた土の路面をダイナミックにカウンターを当ててコーナリングしていく、迫力のあるモータースポーツだ。そのフラットトラックレースの2017年シリーズに、メーカーとして復活してまもないインディアンが参戦し、なんとチャンピオンを獲得。それを記念して作られたワンオフモデル『FTR1200カスタム』はミラノショー2017などで公開されて大きな注目を集めた。それから1年足らず。ついに新型市販モデル『FTR1200』の登場がアナウンスされた。

フラットトラックレースで3度のチャンピオンに輝いたインディアンだが…

「市販モデルの『FTR1200』を2019年中に発売する」。インディアンが6月に発表した計画は世界中のファンのあいだで話題となった。このニュースを理解するには、まずインディアン・モーターサイクルというブランドを、そのレースとのかかわりを知っておかねばならない。

フラットトラックレース自体は1900年代初頭に始まっているが、AMA(アメリカン モーターサイクリスト アソシエーション)によるフラットトラック(あるいはダートトラック)レースのチャンピオンシップが始まったのは、戦後まもない1946年のことだ。オイルの焼ける匂いと巨獣の咆哮を思わせるエキゾーストは今も変わらずスタジアムを包み、市民への定着ぶりはもはやアメリカの伝統的行事といってもいい。

ヨーロッパ発祥の多くのモータースポーツと違い、アメリカ生まれのフラットトラックにはアメリカ人のアイデンティティともいうべき存在感がある。事実、ホンダ、マチレスやBSAの英国勢がタイトルを獲ったこともあるが、歴代タイトルのほとんどはハーレーダビッドソンのもの。インディアンは、そのアメリカでもっとも古いオートバイメーカーで、かつては世界一の販売台数を誇った。初期のフラットトラックでは3年連続でチャンピオンに輝いている。

ところが、経営不振に陥って1959年に一度は解散し、それ以後は再興と販売権の移譲を繰り返してきた。いわば「インディアン」という名前だけが人々の記憶に残されていたのだ。

度重なる経営権の移転から、2017年にフラットトラックレースで奇跡の復活

ブランドとして安定したのは2011年にポラリス(ミネソタの動力車メーカー)の傘下に入って以降のこと。特にここ数年は順調に販売台数を伸ばしており、アメリカの第二のモーターサイクルメーカーとして認知されてきたようだ。

もっとも、インディアンに対する世間の評価は「良くできた復古調のお洒落アイテム」といったところ。ストリートを走るにはいいが、本当の意味での実力は認められていなかった。アメリカではレースに勝たない限り、本物として受け入れてもらえない文化が今も色濃く残る。

だからフラットトラックで勝利することは、単にアワードのひとつを獲得する以上の意味を持つ。名実ともに「インディアンの復活」を証明するために必要な舞台だったのである。

しかし、レースに復帰した初年度にタイトルを獲得するとは、当のインディアンも予想していなかったのではないか。当然のことだが、レースで勝てるマシンを作るためのノウハウは想像もつかないほど深く多岐にわたる。どれだけの準備を重ねてきたのかはいずれ伝わってくるだろうが、開発に携わったインディアンの技術者たちの仕事ぶりには頭が下がる思いだ。

長年にわたって数奇な運命をたどってきた「Indian Motorcycle」という老舗モーターサイクルブランドの復活が、このフラットトラックでの勝利によってまさに実証されたのである。

チャンピオンマシンからインスピレーションを受けた市販モデル『FTR1200』

タイトルを獲得したのは、インディアン『スカウト』をベースにした『FTR750』というレーシングマシン。といっても、ベース車両から流用したのはエンジンブロック程度である。

2017年にミラノショー(EICMA)など世界各地のショーでお披露目された『FTR1200カスタム』は、この『FTR750』のイメージを存分に生かしたワンオフモデルだ(写真はすべて『FTR1200カスタム』)。その見事なフィードバックぶりには目を奪われてしまった。

しかし、市販モデルとなる『FTR1200』は、単に『FTR1200カスタム』を踏襲するのではなく、まったく新しいセグメントのモデルになるとされる。インディアン・モーターサイクル社の社長は、発表の際に市販モデルの『FTR1200』についてこうコメントしている。

「FTR1200は、FTR750、FTR1200カスタムからパフォーマンス、デザインの両面で大きなインスピレーションを受けましたが、独自のスタイルを持ったニューモデルとなります」

新型市販モデル『FTR1200』は、2019年中に生産と販売をスタートする計画

現時点で明らかになっているのは、『FTR1200』の生産を2019年に開始し、同年中に販売する計画となっているということだけだ。正式発表日は未定で、仕様詳細もまだわからない。

しかし、『FTR1200』がフラットトラッカースタイルを持ち、トレリス(トラス)フレームに新型Vツインエンジンを搭載することは間違いなさそうである。

『FTR1200』の仕様詳細などの新情報や今後のスケジュールは、アメリカ本国のインディアン・モーターサイクル『FTR1200』公式サイトで随時公開される予定だ。続報を待ちたい。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Indian Motorcycle
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
The FTR1200 is Coming オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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