editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第48回 | 大人ライダー向けのバイク

ブルターレ800RR アメリカ──MVアグスタ伝説、再び

グランプリ通算270勝、タイトル獲得数37回。この途轍もない記録を持つのがイタリアのMVアグスタだ。「M」はメカニカ、「V」は工場があった地のヴェルゲーラ、「アグスタ」は創立したジョバンニ・アグスタの名に由来する。黄金期には、ジョン・サーティース、ルイジ・タベリ、ゲーリー・ホッキング、マイク・ヘイルウッドと、錚々たるライダーたちがMVレーサーを駆った。この栄光を表した伝説のモデルが45年ぶりに甦ることとなった。

伝説の『750S America』を45年ぶりに甦らせたMVアグスタの美しき限定モデル

MV AGUSTA(MVアグスタ)は、イタリアの名門モーターサイクルブランドだ。その名を知るライダーは、かなりのベテランか、美的センスのある人に違いない。また、中高生のころに角川文庫を読み漁った男性なら、大藪春彦の『汚れた英雄』でなじみ深い名前だろう。

このバイク小説の金字塔には、ロードレース界で無敵を誇っていた時代のMVアグスタが登場する。物語の後半、主人公の北野晶夫がMVレーサーにまたがって活躍するのだ。

現在のMVアグスタはジョバンニ・アグスタ伯爵が率いた当時とは別物のブランドだが、伝統と精神は受け継がれている。とりわけその端正なフォルム、搭載される精巧で強力なパワーを発揮するエンジンは、「走る宝石」とも称えられるほどだ。EICMA2016(ミラノショー)では、『BRUTALE(ブルターレ)800 RR』が「もっとも美しいバイク」に選ばれている。

この美しきハイパーネイキッドの『ブルターレ800 RR』をベースに、“アメリカ”こと伝説の『750S America』を現代に甦らせた限定モデルが『ブルターレ800 RR AMERICA』だ。

タンク上に貼られた37回のチャンピオンシップ獲得を「★」で表したデカール

1973年に登場した『750S America』は、MVアグスタの黄金期、つまり1950年代から1960年代のグランプリレースであらゆるタイトルを総なめにした技術から開発された空冷直列4気筒エンジンを搭載していた。その最高出力は75馬力に達する。

もっとも、当時の市販モデルの製造技術では、レーシングマシンの製作と変わらない高度な技術と多くの時間が必要だったため、量産するには限界があったようだ。一説には、『750S America』の総生産台数は2000台ほどといわれる。MVアグスタにすれば、“アメリカ”は由緒正しいグランプリエンジンの血統を持つ、輝かしき歴史のひとつでもあるのだ。

新たな伝説の幕開けとなる『ブルターレ800 RR AMERICA』は、見てのとおり、スターズアンドストライプス(星条旗)をイメージした赤、青、白のカラーリングが特徴だ。これはアメリカへの敬意を表したもの。

タンクの上面には、“アメリカ”と同じく37回のチャンピオンシップ獲得を「★」で表したデカールが貼られている。ラジエターサイドパネルとリアフェンダーには、「America Special Edition★」の文字。これはライダーの心をくすぐりそうだ。

さらに目を奪われるのは、既存のバイクでは見たことのない美しいシート。これは『ブルターレ800 RR AMERICA』専用の特別仕様で、ライダー及びパッセンジャーエリアに特殊素材と金色のステッチを施し、快適性を追求したパディングを採用したもの。まるで1990年代に各国のデザイナーが作った「名作椅子」のようなシートとなっている。

『ブルターレ800 RR AMERICA』の価格は約226万円、日本導入台数は少量!?

エンジンは通常の『ブルターレ800 RR』から変更はない。最高出力140hp/12300rpm、最大トルク87Nm/10100rpmを発揮する直列3気筒エンジンを搭載する。

フレームに固定するシャシーも『ブルターレ800 RR』と同じだ。もちろんMVアグスタの特徴である迫力の3本出しエグゾースト、片持ちのリアアームもそのまま採用されている。

45年ぶりに“アメリカ”を甦らせたこの限定モデルこそ、まさしく「走る宝石」。ガレージではなく、リビングルームに置きたいコレクターモデルであり、雨の日に乗るなどとんでもない。快晴の日を選んで走りたい、そんな一台だ。

車両価格は226万8000円(税込み)。2018年7月より発売されているが、日本市場への割当数は少ないようなので、興味ある人はディーラーに急いだほうがよさそうだ。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) MV Agusta
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ブランドサイトはこちら
ピックアップ
第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
ピックアップ

editeur

検索