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第17回 | ルノーの最新車デザイン・性能情報をお届け

シビック タイプRを倒せ──メガーヌR.S.トロフィー

ホットハッチとは、一般的にハッチバックをベースに走行性能を高めたスポーツモデルのことを指す。その代表車種のひとつがルノー『メガーヌR.S.』だ。「R.S.」はルノースポールの略で、ルノーのモータースポーツ部門が手がけたモデルであることを意味する。最大のライバルはホンダ『シビック タイプR』。そのライバルを打ち負かすために、ルノーはさらにホットな走りを持つハイパフォーマンスモデル『メガーヌR.S.トロフィー』を登場させた。目指すのは、『シビック タイプR』から“FF車ニュル最速記録”を奪還することである。

『メガーヌR.S.トロフィー』の使命はタイプRが持つ“FF車最速記録”の奪還

『メガーヌ』はフォルクスワーゲン『ゴルフ』などが属するCセグメントのハッチバック。その2代目モデルから設定されてきた高性能バージョンが『メガーヌR.S.』シリーズだ。

その走りには、F1グランプリを筆頭に、ルノーがモータースポーツで培ったノウハウと先進技術が注ぎ込まれている。世界一過酷なサーキットとして有名なドイツのニュルブルクリンク北コースでは、歴代の『メガーヌR.S.』が“FF(前輪駆動車)最速タイム”を更新してきた。

しかし、現在の“FF最速記録”は、ライバルのホンダ『シビック タイプR』が保持している。したがって、新たに発表された『メガーヌR.S.トロフィー』は、ホットハッチとしてのパフォーマンスの高さを追求すると同時に、この最速記録の奪還が大きな使命となる。

日本ではまもなく『メガーヌR.S.』が発売されるが、『メガーヌR.S.トロフィー』の心臓部は『メガーヌR.S.』に搭載される1.8L直噴ターボエンジンをさらに強化したもの。専用のセラミックボールベアリングタービンを採用し、最高出力と最大トルクは、それぞれ279ps/390Nmから300ps/420Nmにまで引き上げられた(6EDCの数値。6速MTは400Nm)。

組み合わされるトランスミッションは、6速MTとデュアルクラッチAT「6EDC」のいずれかをチョイスすることが可能。先代まではMTしか選ぶことができなかったが、パドルシフトで操るEDC(デュアルクラッチ)の登場により、よりパフォーマンスが追求された形だ。

強化された足回りには専用パッケージチューン「シャシーカップ」を標準装備

当然、足回りも『メガーヌR.S.』とは異なる。『メガーヌR.S.トロフィー』では、過去にグレード名称にもなった「シャシーカップ」という専用パッケージチューンが標準化されている。

トルセンLSDは専用にセッティングされ、トラクション性能の向上を実現している。トルセンとは機械式LSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)の一種で、トルク配分や差動制限にギアを使うトルク感応型LSDのこと。ダンパーとスプリングはそれぞれ25~30%引き締められ、スタビライザーも10%ハードとなった。これらがシャシーカップを構成している。

また、現行『メガーヌ』の上位グレード「GT」に装備されたAWSシステム「4CONTROL」も採用。リアタイヤも操舵されることで旋回スピードを極限まで高め、高速走行中にレーンチェンジする際の安定性を確保することができる。ここにラリー車両の技術を応用した「4HCC(4輪ハイドロリックコンプレッションコントロール)」を加えることで、快適さも両立した。

ブレーキは『メガーヌR.S.トロフィー』専用となる複合素材の軽量タイプ。一輪あたり1.8kgのバネ下ダイエットと高い放熱効果によって、長時間のハードな走行も可能となった。ブレーキディスクを咥え込むブレンボ製キャリパーにはレッドのカラーリングが施されている。

組み合わされるタイヤ・ホイールは、245/35R19のブリヂストン・ポテンザS001に、レッドのラインが入ったダイヤモンドカット仕上げの19インチホイールだ。

ボディカラーには『メガーヌR.S.トロフィー』専用のリキッドイエローを採用

ボディカラーにはR.S.系のイメージカラーであるイエローを採用。ただし、従来のR.S.系は「ジョンシリウスメタリック」だったが、『メガーヌR.S.トロフィー』は反射効果によってボディラインを強調するような「リキッドイエロー」と呼ばれる新色だ。さらに専用仕様としてF1スタイルの「トロフィーストライプ」が配され、『メガーヌR.S.』との差別化をはかった。

インテリアでは、オプション扱いとなる専用のレカロシートを装備。シートのデザインは先代を踏襲しているが、シートベースは安全性が向上し、ポジションも20mm下げられ、よりレーシーなドライビングを体感できるようになった。また、リクライニング機構は連続可変するタイプになり、細かくベストなシートポジションを設定することが可能となっている。

レカロシートを含むトリムはアルカンターラ仕上げだ。高級感があり耐摩耗性に優れるだけではなく、軽量化にも貢献するので、ラップタイムを削り取るための重要な要素となっている。

まもなくワールドプレミア。最大の注目点はニュルの“FF車最速記録”の奪取

『メガーヌR.S.トロフィー』の開発には、ルノースポールF1チームのドライバー、ニコ・ヒュルケンベルクが参加した。そのニコいわく「パワーとタイヤグリップ、ブレーキの耐久性、そしてあたらしいシートも素晴らしい感触」。どうやらその仕上がりは万全のようである。

ワールドプレミアは2018年秋から冬を予定。したがって、日本導入や価格のアナウンスはもう少し先になるが、日本はR.S.系モデルが好調な市場だ。いずれ上陸するのは間違いない。

なによりも注目は、『シビック タイプR』が持つニュルブルクリンク北コースの7分43秒80という市販FF車最速タイムを上回ることができるかどうか。ルノーの発表を待ちたい。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Renault
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Renault Magane R.S.Trophy オフィシャル動画
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第21回 | ルノーの最新車デザイン・性能情報をお届け

EZアルティモ──ジュエリーのような観光地用タクシー

世界各国のモーターショーを見ていると、いま自動車業界で「電動化」「自動化」がトレンドになっていることがよくわかる。ヨーロッパのプレミアムブランドが発表するコンセプトモデルは、ほとんどが自動運転のEVだ。そのなかでも、まるでパリの宝飾店に飾られたジュエリーのように美しい自動運転EVを発表したのがルノーである。モデル名は『EZアルティモ』。このクルマ、観光地めぐりのための短距離移動EVなのだという。

アプリで呼び出す。個人やハイブランドに向けた短距離移動用のラグジュアリーカー

見てとおり、『EZアルティモ』は極めてスタイリッシュだ。ボディ素材にアルミを使い、サイドからリアにかけてルノーのエンブレムであるダイヤモンドのパターンをあしらっている。フロントセクションのデザインといい、近未来のクルマといった趣だ。

ルノーは、このクルマを短距離移動向けのラグジュアリーカーと位置づけ、パリの観光地めぐりなどを提案している。もう少し具体的にいえば、個人やハイエンドブランドによるホテルや空港への顧客輸送手段、また、裕福な人々の観光用モビリティとして使われることを想定しているという。パブリックな乗り物であるタクシーに近い形態かもしれない。したがって、スマートフォンアプリを操作して個人の送迎車として使用することも可能だ。

とはいえ、その低く長いスタイルはミニバンのユーティリティさとは異なる。写真で確認する限り、全高はヨーロッパの女性の胸の位置よりも低い。一方、全長はロールス・ロイス『ファントム』と同等の5800mmもある。利便性よりもデザインに徹したのだろう。

限定エリア内ならすべての操作が完全に自動化される「自動運転レベル4」を実現

スライド式のドアを開けると、室内はラウンジのような雰囲気で、乗員が向かい合って座るようになっている。大型のアームチェアと2人がけソファはベルベット仕上げ。フロアは寄せ木作りとなっている。座席が少ないのは少人数での移動を想定しているからだ。

ドライバーズシートは見当たらない。それでわかるように、『EZアルティモ』は「0」から「5」まである自動運転の技術到達度で、「レベル4」を実現する。これは限定エリア内において、緊急時を含めてすべての操作が完全に自動化されるということである。

航続距離は500km。一般のユーザーが日常使い用のEVを購入する際に許容できるギリギリの航続距離だ。広大な北米大陸なら実用的ではない。アプリを立ち上げて10kmだけ乗るような使い方を念頭に置いており、端から長距離移動は考えていないのだろう。

近い将来市販化されるのはライドシェアリング向けの6シーター車『EZゴー』から?

すでにルノーは『EZゴー』『EZプロ』という2台の自動運転EVコンセプトを発表している。前者はライドシェアリング向けの6シーター車、後者は配達車だ。少人数が短距離を移動するための『EZアルティモ』は、このEZシリーズの最上位モデルとなる。

市販化されるとすれば、まず『EZゴー』か『EZプロ』からだろう。しかし、その前に自動運転EVの技術を現行ラインナップや新たな乗用車に搭載するはず。いずれにせよ、宝飾品のような自動運転タクシーが実用化される未来がすぐそこまでやって来ているのだ。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Renault
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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