editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第28回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

ランボルギーニ イオタSVR──幻のスーパーカーを見よ

この美しいクルマは、常に「幻の」という枕詞を用いて語られる。『ミウラ』をベースにサーキット用にカスタムされた幻のスーパーカー、ランボルギーニ『イオタ』。1970年代後半に『サーキットの狼』に登場したことで一躍その名が広まり、とりわけスーパーカーブームの洗礼を受けた世代にとってはスペシャルな一台である。もうオリジナルモデルは存在せず、現存するのは複数台の『イオタSVJ』と一台の『イオタSVR』のみ。このうち『イオタSVR』がランボルギーニ・ポロストリコによってレストアされ、岡山県のサーキットでお披露目された。

オリジナルの『イオタ』はもう存在せず、『イオタSVR』も世界にたった一台

『イオタSVR』の成り立ちについては諸説があるが、はっきりしているのは、オリジナルの『イオタ』は1970年に製作された一台のみということだ。

ベースは1966年から1972年までに763台が生産された『ミウラ』。オリジナルモデルの『イオタ』は、この『ミウラ』の改良を名目に、実際にはモータースポーツ用の実験車両として作られたプロトタイプだ。通称は「J」。これはFIA(国際自動車連盟)の競技規定、付則J項に由来する。手がけたのは、ランボルギーニのテスト走行責任者だったボヴ・ウォレス氏である。

しかし、テストは行われたものの、『イオタ』のレース参戦が実現することはなかった。顧客のひとりに売却されたのち、事故で全損している。その後、資産家の顧客たちから「イオタを作ってくれ」との要望がランボルギーニに届き、これを受けて何台かのレプリカが製作された。

このファクトリーレプリカが『イオタSVJ』と呼ばれるモデルだ。台数にも諸説があり、6台とも8台ともいわれる。今回レストアされた『イオタSVR』は、それらとは別物。1974年にドイツ人のオーナーがランボルギーニに『ミウラSVR』を持ち込んで製作されたものだ。

シャシーナンバーは#3781。ルーフエンドに大きなウイングが装着され、リアフェンダーはオリジナルモデルの『イオタ』を再現するかのように大きく張り出している。

ランボルギーニ・ポロストリコのスペシャリストが19カ月をかけてレストア

レストアを行ったのはランボルギーニ・ポロストリコである。2015年にイタリアのサンタアガタ・ボロニェーゼにあるアウトモビリ・ランボルギーニ本社施設に設立され、『350GT』から『ディアブロ』まで、10年以上生産されていないモデルの修復などを専門に行っている。

ポロストリコを率いるパオロ・ガブリエッリ氏は、『イオタSVR』をフルレストアするのは「非常にむずかしい作業だった」と話す。じつに19カ月もの時間を要したという。

「オリジナルの資料はあまり参考にならず、おもに1974年の改造時の仕様に頼ることになりました。部品はすべて揃っていましたが、車両が分解されてサンタアガタ・ボロニェーゼに届いたこと、そして大幅な改造がなされていたことが、レストアをさらにむずかしくしました」

変更点は、4点式シートベルト、サポート力を強化したシート、取り外し可能なロールバーを追加したこと。これはオーナーの依頼で、サーキットでエキシビション走行をする際の安全性向上を意図している。となると、今後はサーキットでお披露目される機会もあるだろう。

スペックは公表されていないが、エンジンは『ミウラSVR』と同じ3929ccのV型12気筒DOHCエンジン。最高出力は多少アップされており、最高速度は310km/hに達するようだ。

『イオタSVR』は1977年に後楽園球場で開催されたイベントに登場していた

じつは、この『イオタSVR』は42年前の1976年に日本へと持ち込まれたものだ。翌年の1977年には、爆発的なスーパーカーブームのさなかに後楽園球場(1988年に解体)で開催された「ザ・スーパーカー・ジャンボ・フェスティバル」というスーパーカーイベントにも展示された。

当時小学生だった筆者は、クルマ好きの大学生と一緒に後楽園球場へ行き、錚々たるほかのスーパーカーとともに『イオタSVR』の実車を目にした。今でもその興奮をよく覚えている。

以来、『イオタSVR』はずっと日本国内にある(ただし19カ月のレストア期間を除けば)。今回のお披露目がイタリアなどのヨーロッパではなく、岡山県和気郡和気町にある中山サーキットで行われたのは、オーナーがその近隣に在住しているためかもしれない。

ミドルエイジの男たちにとって、「イオタ」の名は何十年が過ぎようと特別な響きを持つ。いずれ日本のどこかで一般に公開される機会もあると思われる。今からその日が待ち遠しい。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ
第37回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

最強オープン──アヴェンタドールSVJロードスター

『イオタ』の名は、ある世代の男たちにとって特別な響きをもつ。言わずとしれたランボルギーニの幻のスーパーカーである。この『イオタ』に由来する車名を与えられ、900台が昨年限定発売された『アヴェンタドールSVJ』は、“史上最強のアヴェンタドール”として大きな話題となり、瞬く間に完売となった。その興奮が収まらぬなか、さらなる魅力を加えた一台が登場した。オープントップモデルの『アヴェンタドールSVJロードスター』だ。至高のV12サウンドをオープンエアで愉しむ。こんな贅沢がほかにあるだろうか。

伝説の「J」再び。最速記録をもつ『アヴェンタドールSJV』のオープンバージョン

スーパーカー世代の男性は、「SVJ」という三文字に胸を踊らせるに違いない。1969年に先行開発の名目でたった一台だけが作られ、のちに事故で失われた伝説の実験車両「J」。その純正レプリカにつけられた名前だからだ。レプリカは『イオタ(Jota)』、あるいは『ミウラSVJ』と呼ばれている。「SVJ」は「スーパーヴェローチェ イオタ」の略だ。

ベースとなったのはランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー『ミウラ』。生産台数については諸説あるが、6台、または8台ともいわれる。まさに幻のスーパーカー。だからこそ、『アヴェンタドール』シリーズの頂点に立つ存在として「SVJ」の名をもつモデルが登場したとき、ランボルギーニファンやスーパーカーファンが沸き立ったのである。

『アヴェンタドールSJV』が搭載するのは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpmを発生する6.5L V型12気筒エンジン。出力とトルクは、標準モデルよりもそれぞれ30hpと30Nm高められている。その圧倒的なパフォーマンスは、ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”での量産車最速タイム(当時)で証明済みだ。

従来の最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSJV』は、それを2秒以上も短縮する6分44秒97という驚異的なタイムを記録した。この最速クーペのオープンバージョンとなるのが、3月のジュネーブモーターショー2019でお披露目された『アヴェンタドールSJVロードスター』だ。

0-100km/h加速は驚異の2.9秒。ランボルギーニ史上“最速・最強”のロードスター

オープントップには『アヴェンタドールSロードスター』と同様の脱着式ルーフを採用した。ルーフは左右2分割式のカーボンファイバー製で、これを手動によって取り外す。クルマを降りなければならないが、オープン化の作業は非常に簡単で、ルーフも軽量。取り外したルーフはフロントのボンネット内にきれいに収納できるように設計されている。

電動で開閉するリヤウインドウを新たに採用したのもトピックだろう。ルーフを着けたクローズドの状態でも、ここを開ければV12サウンドをより愉しむことができるのだ。

脱着式ルーフにあわせてリヤのエンジンパネルの形状もフラットなものへと変更された。ただし、パネルにデザインされたランボルギーニファンにおなじみのY字は健在だ。そのほかのエクステリアはクーペを継承。大型エアインテーク、ワイドなサイドスカート、ヘキサゴン型スポイラー、リヤでは高い位置に設置された大型リアウィングが目を引く。

オープン化によって車重はクーペより50kgほど重くなっているが、それでも1575kg程度に収まっている。全長4943mm×全幅2098mm×全高1136mmものボディサイズをもち、12気筒エンジンを搭載するスーパーカーであることを考えると望外に軽量だ。それにより生み出されたパワーウエイトレシオはわずか2.05kg/hp。0-100km/h加速は驚異の2.9秒、0-200km/h加速は8.8秒でこなし、最高速度は350km/h超をマークする。

可変型エアロダイナミクスの搭載により、トップスピードを落とさず空力性能を強化

特筆すべきは「ALA2.0(アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ2.0)」と呼ばれるテクノロジーの装備だろう。『アヴェンタドールSJVロードスター』が搭載するのは、クーペと同じ最高出力770ps の V12エンジン。この強力なパワーユニットを軽量ボディに積めば、車体を制御できず、フロントから浮き上がって一回転しかねない。

そこで、トップスピードを落とすことなくダウンフォースを強化する、ランボルギーニの特許技術である「ALA」が必要となるのだ。「ALA」は、簡単にいうと能動的に空力の負荷を軽減してくれる可変型エアロダイナミクスのこと。速度ではなく、車両状態に連動するという特徴をもつ。フロントスプリッタとエンジンフードのアクティブフラップをモーター制御することにより、フロントとリヤの空気の流れをコントロールしてくれる。

この「ALA」と、搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ」(LPI)が連動し、あらゆる走行条件下で最高の空力設定を整えてくれる。さらに、曲がる方向に応じて「ALA」の設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる「エアロ・ベクタリング」も備える。

駆動方式は四輪駆動で、フロントアクスルとリアアクスルとの間トルク配分は道路条件、グリップ、ドライビングモードに応じて、リアルタイムに変化する。また、後輪操舵システム「ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング」や磁性流体プッシュロッド式のアクティブサスペンションを採用し、高次元のドライビングダイナミクスを実現した。

走行モードは、標準の「STRADA(ストラーダ)」、スポーティな走りの「SPORT(スポーツ)」、サーキット走行向けの「CORSA(コルサ)」、そしてこの3種類をベースに自分好みにカスタマイズすることができる「EGO(エゴ)」の4種類から選択可能だ。

『アヴェンタドールSVJロードスター』は800台限定生産。価格は6171万4586円

インテリアは航空機に着想を得たデザインとなっており、ドアやメータークラスター、コンソールなどにカーボンファイバーを採用。シートやダッシュボード上部、コンソールボックスにはレザーやアルカンターラを使用している。また、コクピットの随所にもY字デザインがあしらわれ、「SVJ ロードスター」のインテリアプレートも装備する。

限定生産台数はクーペよりも100台少ない800台。日本での価格は、クーペからおよそ600万円高となる6171万4586円(税込み)と発表されている。しかし、これはあくまでも参考価格だ。ランボルギーニは、顧客の要望に応じてボディカラーやインテリアに事実上無限の選択肢を用意しており、それらによって価格も大きく変動する。

ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドールSVJ』のずば抜けたパフォーマンスはそのままに、オープン化をはたした『アヴェンタドールSVJロードスター』。シリーズ最速・最強の称号をもつオープンモデルの上陸がいまから楽しみでならない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Lamborghini Press Conference – ジュネーブモーターショー2019
ピックアップ

editeur

検索