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第8回 | フィアットの最新車デザイン・性能情報をお届け

気分は50年代セレブ──甦ったフィアットのビーチカー

「スピアジーナ」あるいは「ジョリー」と呼ばれた小さなイタリア車を知っているなら、あなたは立派なセレブだ。ちょうど60年前の1958年、フィアット『500(チンクエチェント)』からドアやルーフを取り払ったビーチカーが発表された。それが伝説的な一台となった『500スピアジーナ』、通称ジョリーである。2018年はジョリーの誕生から60周年のメモリアルイヤーにあたる。それを記念して作られたのがスピアジーナの名を持つ2つの特別な『500』だ。一台は現行『500C』にジョリー風の内外装を与えたもの。もう一台は、当時のジョリーと同様に『500』からルーフやリヤシートを取り払いつつ、現代風にアレンジしたビーチカーである。

ユル・ブリンナーやギリシャの海運王が愛用した“屋根なしチンクエチェント”

新型を意味する「NUOVA(ヌォーヴァ)」をモデル名のアタマにつけた2代目フィアット『500』が誕生したのは1957年。その翌年の1958年に登場したのが、車両からルーフとドアを取り払い、籐製のシートを装着したビーチカー『500スピアジーナ』だ(下のモノクロの写真)。

ジョリーという愛称を持つこのクルマは、地中海の高級リゾート地で贅沢なバカンスを愉しむセレブたちの“Dolce Vita(甘い生活)”を支える名脇役となり、同時にフィアット『500』の可能性を広げる伝説的な一台となった。たとえば、俳優のユル・ブリンナーや、海運王として知られた実業家のアリストテレス・オナシスもジョリーを愛用していたひとりである。

今回発表された2つのスピアジーナは、もちろん往時のジョリーをインスパイアしたもの。とりわけ『スピアジーナ・バイ・ガレージイタリア』は、『500スピアジーナ』を彷彿とさせるユニークなボディを持ち、まさに“現代版スピアジーナ”といった趣だ。

シャワー付きコンパートメントを装備する現代版の“ジョリー スピアジーナ”

当時の『500スピアジーナ』はトリノに本拠を置くカロッツェリア・ギアがデザインを担当したが、『スピアジーナ・バイ・ガレージイタリア』は、ピニンファリーナとフィアット創始者の血を引くラポ・エルカンのカロッツェリア、ガレージ・イタリアの手によるものだ。

最大の特徴は「ルーフがないこと」だが、よく見るとリヤシートもない。後席スペースは、なんとシャワー付きのコンパートメントになっている。さらにFOGLIZZO製防水レザーのフロントシートはベンチタイプ。これこそジョリーを現代風に再定義したビーチカーのカタチなのだ。

通常はAピラーとフロントウィンドウを残しているが、視界を遮るものを取り払い、よりオープンエアを愉しみたければ、Aピラーを短縮して昔ながらの小さなウインドデフレクターを装着することも可能だ。安全確保のためのアーチ型ロールバーには、白いペイントが施されている。

まるでワンオフのショーモデルのように見えるが、驚いたことに、このクルマは生産予定モデルなのだという。ただし、ガレージ・イタリアによって一台一台がハンドメイドで仕上げられるため、少量生産となるようだ。ちなみに、1958年当時の『500スピアジーナ』は、通常モデルの2倍以上の価格だった。

ジョリーの世界観を現代風に味つけした量産型タイプの『500スピアジーナ』

もう一台は、『500』のコンバーチブルタイプ『500C』をベースに、フィアットがジョリーの雰囲気を織り込んだ『500スピアジーナ ’58エディション』。こちらのほうが手も届きやすいだろう。

ボディカラーは、『500』らしくポップで、海が似合いそうな「ブルーヴォラーレ」。そこにベージュのソフトトップ、ヴィンテージスタイルの16インチアルミホイール、エクステリアクロームパックやホワイトのウエストレースなどをコーディネートしている。

「FIAT」のエンブレムは『500スピアジーナ』の雰囲気を引き立てるヴィンテージタイプ。インテリアにはボディ同色のパネルを装着し、シートはグレーとアイボリーの2トーンを採用した。ステアリングの中心に鎮座するエンブレムも、もちろんヴィンテージタイプだ。なお、エンジンは最高出力69psの1.2L直列4気筒のみとなっている。

『500スピアジーナ ’58エディション』の生産は、登場年にちなみ限定1958台

『500スピアジーナ ’58エディション』は「フィアット500コレクション」のひとつとして仕立てられたモデルだ。ファッションブランドとコラボした『500 by Gucci』や『500 by DIESEL』、高級ヨットブランドとコラボした『500 Riva』(日本未導入)などに続く限定モデルとなる。

限定台数は『500スピアジーナ』の登場年にちなんだ1958台。現段階で国内導入のアナウンスはないが、『500』の限定モデルのなかでもニーズはかなり高そうだ。

『スピアジーナ・バイ・ガレージイタリア』、そして『500スピアジーナ ’58エディション』は、いずれも古き良き時代のセレブのバカンス気分が味わえる一台である。現代に甦った2つのジョリーは、往時を知らない者でもワクワクさせてくれそうだ。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) FCA Italy S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第11回 | フィアットの最新車デザイン・性能情報をお届け

アバルト595エッセエッセ──SSの名をもつホットハッチ

「SS(スーパースポーツ)」をイタリア語読みすると、「エッセエッセ」となる。1960年代のフィアット車が装着していた伝統あるチューニングキットの名称だ。以来、エッセエッセ仕様のフィアットは、多くのモータースポーツで輝かしい成績を収めた。復活したのは10年余り前のこと。フィアットをベースにした高性能ブランド、アバルトの『グランデプント』に設定され、その後『500』にも登場した。このエッセエッセが最新の『595』に用意された。「アバルト」ブランドの創立70周年を記念した特別なモデルである。

アバルト『595エッセエッセ』はブランド70周年を記念したスーパースポーツ仕様

アバルトは、今からちょうど70年前の1949年にイタリアで創業された自動車メーカーだ。トレードマークは創業者カルト・アバルトの誕生月の星座であるサソリ(スコルピオーネ)のエンブレム。フィアット車のチューニングを得意とし、とりわけ『500(チンクエチェント)』をベースにしたモデルは抜きん出た速さからブランドの象徴となった。

現在はFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)に属するブランドとして、フィアット車をベースにチューニングカーテイストの強いスポーツモデルを展開する。代表車種は、フィアット『500』をベースにしたマニアックなホットハッチ『595』シリーズ。その最高峰に位置づけられるのが、今回登場した『595エッセエッセ』だ。ブランド創立70周年を記念した特別モデルとして、ジュネーブモーターショー2019で発表された。

エンジン、内外装…。すべてがトップパフォーマンスモデルにふさわしい特別仕立て

パワーユニットは、最高出力を従来の160psから180psに高めた排気量1.4Lの直列4気筒ターボエンジン。出力を引き上げながら優れた吸気効率を実現するBMC製のエアフィルターを備え、官能的なサウンドを奏でるAkrapovic(アクラポビッチ)のエキゾーストシステムも装備する。ブレーキはブレンボ製「フロントブレーキ・システム」を採用した。

ボディカラーはグレーのように見えるが、これは「レーシングホワイト」と呼ばれる新色だという。そこへ「ABARTH」のロゴが入ったホワイトのサイドストライプ、やはりホワイトのドアミラーカバーと17インチの専用アロイホイールがアクセントを効かせる。ホイールから覗くブレーキキャリパー、センターに配されたサソリのマークはレッドだ。ボディ側面には、特別なモデルであることを示す創業70周年の記念エンブレムが装着される。

インテリアは外観以上にスポーティな雰囲気だ。インテリアパネル、サベルト製シートの背面、足元のペダルなどはカーボンファイバー製。シートのヘッドレストには「ABARTH 70」の刺繍をあしらった。さらに、サーキットでスポーツ走行を愉しむ際に走行データを記録する「アバルト・テレメトリー」を装備するほか、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応するブランド最新のインフォテイメントシステム「Uコネクト」が搭載されている。

ラリーカーをオマージュした限定124台生産の『124ラリートリビュート』も登場

ジュネーブモーターショー2019では、FIA(世界自動車連盟)「グループR-GT」規定で開発されたレーシングカー『124R-GT』をオマージュした限定124台の特別仕様車、『124ラリートリビュート』も発表された。『124R-GT』は、昨年の「R-GTカップ」や欧州ラリー選手権など12カ国のラリーに参戦し、40回以上のクラス優勝を成し遂げている。

『124ラリートリビュート』のベースは、むろん『124スパイダー』だ。ラリー開催地にちなんだ「コスタブラーバ・レッド」「チュリニホワイト」の2色のボディカラーが用意され、いずれもマットブラックのボンネットを組み合わせる。ミラーキャップはレッド。そのほか、アクセサリーとしてカーボンファイバー製ハードトップが設定されるという。

『595エッセエッセ』『124ラリートリビュート』ともに、価格や発売時期はアナウンスされていない。日本に導入されるかどうかも未定。しかし、国土の狭い日本ではホットハッチやライトウェイトスポーツのニーズが高い。上陸すれば注目の一台となりそうだ。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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