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第106回 | 大人のための最新自動車事情

エストリマBIRO──イタリア発の超小型EVで通勤しよう

都内に住んでいても、クルマを通勤などの移動に使う男性は意外と多い。しかし、快適な移動とは言いがたい場合もある。通勤時間帯は道路の渋滞があり、目的地に着いても都心には駐車場の問題があるからだ。環境への影響も見逃せない観点だろう。こうした問題をオシャレに解決してくれそうなのが、イタリア生まれの超小型電動モビリティ『BIRO(ビロ)』である。

小さな車体に高い環境性能、ヨーロッパで注目を集まるEVミニカー『BIRO』

今後10年、いや5年前後のあいだに、移動手段としてのクルマの姿が激変していくのは間違いない。そう、レシプロエンジンからEV(電気動力車)への転換だ。

EVは内燃機関と比べてエネルギー効率が数倍も高く、車体の部品点数も少ない。つまり製造やメンテナンスといった面でコストを抑えられ、CO2排出量を削減できるメリットがある。その一方、バッテリーの蓄電容量や放電、素材となる希少な鉱物資源の確保といった問題があるので、航続距離などの点でユーザーを満足させるレベルにいたっていなかった。

では、現在の技術でEVの効率を高める確実で堅実な方法は何か。それはコンパクトな車体、そして軽さを追求することにほかならない。発電や送電抵抗などの画期的な技術が確立されるまでは、それが現実的な方向性だろう。

考えてみれば、日常生活のなかで1トン以上の車重のクルマに乗って移動しなければならないシチュエーションがどれくらいあるだろうか。実用面に限れば、多くの場合、クルマには1人か2人で乗り、ちょっとしたラゲッジスペースがあれば十分に用は足りるのだ。

もちろん、BMW『i3』を筆頭に、コンパクトなEVは登場している。しかし超小型EVに関しては、開発段階で姿を消したり、思ったほど普及するにいたっていなかったりするのが現状だ。

前置きが少し長くなったが、そこで紹介したいのが、ヨーロッパで今注目を集めているこのEVミニカー、イタリアのEstrima(エストリマ)社が製造する『BIRO』だ。

乗用車1台分の駐車スペースに、『BIRO』なら4台分も停めることができる

『BIRO』のサイズは、全長1740mm×全幅1030mm×全高1565mmという小ささ。乗用車1台分のスペースに『BIRO』なら4台を駐車することが可能なのだ。バッテリーを除く車体重量はわずか245kgしかない。

超小型車の代表車種であるスマート『フォーツー』の「エクスクルーシブ」でさえ、ボディサイズは全長2790mm×全幅1670mm×全高1550mm、車重は980kgあるので、『BIRO』がいかにコンパクトかがよくわかるだろう。

日本では『BIRO』の知名度はまだ低いが、イタリア本国を中心に、2015年までに1800台を販売している。この実績は過去のEVミニカーでは考えられなかった。

小ささ以外の最大の特徴は、バッテリーを固定式と脱着式から選べること。走行距離は固定式が100kmで、脱着式は55kmと差が大きいが、脱着式はキャリーカートになっていて、簡単に屋内に持ち込むことができる。また、充電時間も100V(3kWh)なら4時間でフル充電が可能で、リチウム電池なので継ぎ足し充電もできる。

これなら通勤の足にも十分使えるだろう。エストリマいわく、バッテリーを外しておけば盗難対策にもなるとのことたが、これはイタリアらしいというべきか。

『BIRO』の価格はサイドドアなしが158万円、サイドドアありが183万円

イタリアらしいといえば、内外装のデザインにもそれは感じられる。車体のほぼ全周をクリアなポリカーボネイトで囲んでいるので、室内は明るく、視界は広い。主要部分のカラーはブラック。曲線美が強調されたパイプフレームは、それとは対照的な明るいカラーが用いられている。パイプフレームのカラーはオプションで99色から選ぶことができるという。

室内はマルチファンクションメーターやスイッチ類など、細かな部分も凝ったデザインとなっていて、EVミニカーとしてはかなり質感が高い。

カードキーの採用も面白い。乗車時に車外で指定の位置にカードを当てて認証され、車内のカードリーダーにカードを差し込むとスタートできる。

カーナビは搭載されないが、USB端子で電源が確保されたスマートフォンホルダーが装備されるので、お気に入りのナビアプリを使える。そもそも、いまどきのドライバーには、カーナビよりもスマホのナビアプリを利用する人が多い。また、Bluetoothスピーカーが標準装備されるので音楽も楽しめ、ハンズフリーにも対応している。

『BIRO』の価格は、サイドドアがなくオープンエア感覚が愉しめる「SUMMER」が158万円、脱着式サイドドア付きフルカバーボディの「WINTER」が183万円からとなっている(いずれも税別、バッテリー含む)。

脱着式サイドドアの取り外しは非常に簡単なので、雨風などの悪天候を考えれば「WINTER」のほうが実用的だろう。エアコンは装備されないが、暑い日にはサイドドアを外してリアウインドウを開ければカブリオレ気分が味わえる。

東京駅八重洲通りにオープンした「BIRO STORE Tokyo」に行けば実車が見れる

最後に注意事項を記しておこう。『BIRO』は2名まで乗車できるが、日本の法規では今のところ1名しか乗車できない。ただ、これは関係機関が実証実験中で、早ければ2020年ごろから2人乗りが認められそうだ。

EVミニカーは、道路運送車両法では原付(原動機付自転車、125cc以下の二輪車)に分類されるので、車庫証明や車検は不要。一方、道路交通法では自動車に分類され、普通免許が必要になるようだ。

原付のように二段階右折やヘルメットの着用義務はなく、法定速度も60km/hとなっている。とはいえ、駐車違反は普通自動車と同じ取り締まり対象になるので、オーナーとなったら注意が必要だろう。

2018年6月には、『BIRO』の東京1号店となる「BIRO STORE Tokyo」が東京駅八重洲通りにオープンした。時代の流れが気になる人は訪れてみたらどうだろうか。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Estrima Srl
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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