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第12回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

16年ぶりに甦るスープラ──あの頃の情熱を呼び起こせ

大人の男にとっては、青春時代に憧れたスポーツカー。若者にとっては、映画『ワイルドスピード』でお馴染みのオレンジ色のモンスターマシン。トヨタ『スープラ』は、生産終了から16年を経てなお、世代を超えてカーガイを魅了している。だからこそ、だろう。詳細がアナウンスされていないにもかかわらず、新型『スープラ』は動向が少しでも伝えられると、すぐに大きな話題を集める。今回の場合は、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで試作車のお披露目だ。実際に走る新型『スープラ』から、その概要が徐々に明らかになってきた。

『セリカXX』から北米名『スープラ』として逆輸入されたスポーツカーが復活

その車名はアメリカからの逆輸入だ。デビューは1978年。初代と2代目は日本国内において『セリカXX』という名で呼ばれていた。1986年に発売された3代目は、北米モデルと同じ車名でデビュー。それが『スープラ』であり、日本国内での初代という位置づけとなる。

日本における2代目『スープラ』は、まだバブルの余韻が残る1993年にデビュー。日産『スカイラインGT-R』や『フェアレディZ』、マツダ『RX-7』といった綺羅星のごときハイパワースポーツカーとともに、当時の若者たちから高い支持を得た。

いわゆる「平成12年度自動車排出ガス規制」に対応できず、2002年をもって生産を終了したが、それ以降もレースやドリフトイベントに出場し続けた。余談だが、2代目『スープラ』はトヨタ社員のドライビングトレーニング用車両でもあり、彼らがニュルブルクリンクを走るときに使われているという。

新型車の噂が浮上したのは2014年だ。デトロイトモーターショー2014に出展されたコンセプトモデル『トヨタ FT-1』が、新型『スープラ』としてデビューすると話題になった。『トヨタ FT-1』はその後、東京オートサロン2016などでもお披露目されている。

『スープラ』という名が明確に使われたのは、ジュネーブモーターショー2018で世界初公開された『GR スープラ レーシングコンセプト』だ。市販化に関しても、近い将来の復活を示唆した。そして今回、ついにグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード 2018で走る新型『スープラ』が登場。ついに、来年前半より順次、世界各国で販売される予定とアナウンスされた。

新型『スープラ』は代名詞の「直6エンジン」も継承。価格は700〜800万円?

グッドウッドにお目見えした新型『スープラ』は、「号試車」と呼ばれる市販のための最終確認車両だ。ボディ形状を隠すためのフィルムでカモフラージュされていたが、ナンバープレートには「A90」の文字が刻まれる。これは「A70」「A80」と続いた『スープラ』の型式にほかならない。

開発はBMWと共同で行われ、シャーシのベースはBMW『Z4』。また、『スープラ』といえば直列6気筒エンジンが代名詞だが、新型でもBMWが開発した335馬力の3L 6気筒ターボエンジンを搭載するといった報道も見られる。さらに、直6以外に4気筒モデルの可能性も示唆された。

伝統を受け継ぐという意味では、FR(後輪駆動)レイアウトも継承する。重心は『GT86』(トヨタ『86』の欧州名)よりもさらに低く、ボディ剛性は『GT86』の2倍を目指し、レクサス『LFA』と同レベルを達成したという。

驚くべきは、カーボンファイバーを採用せずに剛性と軽量化を両立したこと。カーボンファイバーを採用したスーパースポーツは超高級になるが、新型『スープラ』は700〜800万円と予想されている。ポルシェ『ケイマン』『ボクスター』あたりがライバルになりそうだ。

トヨタが手がける官能的なエンジン音のクルマは新型『スープラ』が最後!?

ピュアスポーツは現在、プレミアムブランド以外では数少なくなりつつある。新車で耳目を集めるのは、自動運転などの技術ばかり。排ガス規制も世界中で厳しくなり、電動化やPHV(プラグインハイブリッド車)、マイルドハイブリッドなど、パワートレインも多様化し、純粋なガソリンエンジンはあまり話題に上らない。

「規制が厳しくなることで、エモーショナルなクルマをつくることがどんどん難しくなっている。新型『スープラ』が純粋なガソリンエンジンによる官能的な音を楽しめる最後のトヨタ車になるのではないかと思っている」とコメントするのは、開発責任者の多田哲哉氏である。

直列6気筒エンジンが奏でるサウンド、低重心でFRレイアウトが生み出す独特の挙動。古き良きドライビングプレジャーを堪能できる最後のトヨタ車は、あの頃の情熱を呼び起こしてくれそうだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
New Toyota Supra グッドウッドデビュー オフィシャル動画
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第17回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

超屈強なフルサイズSUV──トヨタ セコイアTRDプロ

日本の自動車メーカーが作るクルマには「日本では買えない海外専用モデル」というものが存在する。とくにSUVやピックアップトラックには、北米専用モデルが多い。ホンダなら『パイロット』『リッジライン』、日産なら『タイタン』にインフィニティ『QX70』。トヨタのフルサイズSUV『セコイア』も、そのうちの一台だ。この巨大な北米専用SUVに、モータスポーツ直系のチューニングを施した「TRDプロ」が加わった。日本では見ることもその性能を堪能することもできない、アメリカならではフルサイズSUVである。

全長5mの巨大なボディに豪華な装備。トヨタ『セコイア』は北米市場で人気のSUV

アメリカでは、フルサイズSUVを持つことがひとつのステータスになっている。多用途的とは言いがたいスポーツカーと違い、日常からレジャーまで幅広く利用でき、グレードによっては高級セダンに匹敵する乗り心地を実現し、さらに頑丈な車体は回避安全の意味でも頼りがいがあるためだ。VIPやセレブレティも移動にフルサイズSUVを使うことが多い。

フルサイズに明確な基準があるわけではないが、SUVをボディサイズでセグメントしたとき、もっとも大きなクラスを指し、コンパクトやミドルに対して「ラージサイズ」とも呼ばれる。全長は5m以上、全幅は2m以上かそれに近い車両がフルサイズにあたる。

トヨタの北米市場専用モデル『セコイア(Sequoia)』も、『ランドクルーザー200』以上の巨体をもつフルサイズSUVだ。トヨタ・インディアナ工場で製造され、初代は2000年にデビュー。その後、2008年と2018年にフルモデルチェンジを受けた。SUVを名乗っているが、どちらかというと『セコイア』は4WDとしてのヘビーさよりもオンロードでの快適性や利便性を重視したクルマで、充実したインテリアによってプレミアム感を演出している。それがユーザーの嗜好を捉えているのは、好調なセールスを見れば明らかだ。

フルサイズSUVで唯一セカンドシートにスライド機構をもち、じつのところ、それも人気を支えている要素になっている。さらにサードシートのリクライニングやフルフラットも電動(オプション)なので、家族の評判が高くなるのは道理なのだ。このほか、初代から運転席の8ウェイのパワーチルトやスライド式ムーンルーフを標準装備。トライゾーン・オートエアコンも備え、Apple CarPlay、Android Auto、Amazon Alexaにも対応する。もちろんBluetoothハンズフリー電話機能とミュージックストリーミングも可能だ。

しかし、2月にシカゴでお披露目された『セコイアTRDプロ』は、標準仕様とはかなり趣が異なる。その名のとおり、これは「TRD」のバッジを冠するモデルだからだ。

FOX製のショックアブソーバーを搭載。『セコイアTRDプロ』はTRDの最新モデル

TRDは「トヨタ・レーシング・ディベロップメント(Toyota Racing Development)の頭文字だ。トヨタのワークスファクトリースチームとしてレーシングカーを開発し、そこで培った経験や技術を生かしてトヨタ車用にチューニングパーツの製作と販売を行っている。国内外の多くのレースに参戦しているが、近年では『ヴィッツ』(輸出名『ヤリス』)をベースにしたマシンでWRC(世界ラリー選手権)に参戦して注目を集めた。前身は1970年代にさかのぼり、モータースポーツマニアならずともTRDの知名度は非常に高い。

「TRDプロ」は、2014年から北米でトヨタのオフロードモデルにラインナップされているシリーズで、ピックアップトラックの『TUNDRA(タンドラ)』と『TACOMA(タコマ)』、そして日本では『ハイラックスサーフ』としておなじみのSUV『4 Runner(フォー・ランナー)』に設定されている。このTRDプロの最新作が『セコイアTRDプロ』だ。

5.7L V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、トランスミッションは6速AT。55.4kg-mという図太いトルクを発揮し、しかもそのトルクの90%をわずか2200rpmという回転数で得ることができる。加えて、マルチモードの4WDシステム(ほかのグレードではオプション)やロッカブル・トルセン・リミテッド・センターデフ(トルク分配式デフ)を搭載したことで、従来の『セコイア』になかった高い走破性をもつのが特徴のひとつだ。

しかし、もっとも重要なチューニングポイントはサスペンションだろう。オフロード用のショックユニットメーカーとして知られるFOX社のアブソーバーは、アルミ製の本体にインターナル・バイパスを装備し、外力の大きさによって異なる減衰機構が働く。日常の走りでは柔軟に動き、ストローク量に応じて減衰力が高まるのでボトムしにくいのだ。数多くのオフロードコンペで優れた実績を残したメカニズムで、むろん専用にチューニングされている。しかもTRDの厳しい要求に応えるため、前後で異なるユニットが採用された。

「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しむSUV

外観で目立つのは、P275/55R20タイヤを装着した20インチx8インチのBBSブラック鍛造アルミホイールと、フィニッシュがブラッククローム仕上げの単管エキゾーストだ。誇らしげに「TRD」のロゴが入れられたフロント下部のスキッドプレートは、もちろんトレイル走行中にフロントサスペンションとオイルパンを保護するのに役立つもの。また、フロントグリルも「TOYOTA」のロゴを配した専用デザインとなっている。

面白いのは、TRDのエンジニアが乗員に配慮し、キャビンの音質を改善するために周波数調整したサウンドキャンセルデバイスを採用したこと。これによって低く心地よいエキゾーストノートを提供するという。走りとは関係ないものの、ぜひ体験したい機能だ。

かつての四輪駆動車愛好者は、それ以外の自動車ユーザーと求めるデザインや装備、機能が明らかに違っていたが、技術の進歩とセンスの変遷はさまざまな境界を取り払おうとしていると感じる。「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しもう、というのが『セコイアTRDプロ』の隠れたコンセプトなのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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