『セリカXX』から北米名『スープラ』として逆輸入されたスポーツカーが復活
その車名はアメリカからの逆輸入だ。デビューは1978年。初代と2代目は日本国内において『セリカXX』という名で呼ばれていた。1986年に発売された3代目は、北米モデルと同じ車名でデビュー。それが『スープラ』であり、日本国内での初代という位置づけとなる。
日本における2代目『スープラ』は、まだバブルの余韻が残る1993年にデビュー。日産『スカイラインGT-R』や『フェアレディZ』、マツダ『RX-7』といった綺羅星のごときハイパワースポーツカーとともに、当時の若者たちから高い支持を得た。
いわゆる「平成12年度自動車排出ガス規制」に対応できず、2002年をもって生産を終了したが、それ以降もレースやドリフトイベントに出場し続けた。余談だが、2代目『スープラ』はトヨタ社員のドライビングトレーニング用車両でもあり、彼らがニュルブルクリンクを走るときに使われているという。
新型車の噂が浮上したのは2014年だ。デトロイトモーターショー2014に出展されたコンセプトモデル『トヨタ FT-1』が、新型『スープラ』としてデビューすると話題になった。『トヨタ FT-1』はその後、東京オートサロン2016などでもお披露目されている。
『スープラ』という名が明確に使われたのは、ジュネーブモーターショー2018で世界初公開された『GR スープラ レーシングコンセプト』だ。市販化に関しても、近い将来の復活を示唆した。そして今回、ついにグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード 2018で走る新型『スープラ』が登場。ついに、来年前半より順次、世界各国で販売される予定とアナウンスされた。
新型『スープラ』は代名詞の「直6エンジン」も継承。価格は700〜800万円?
グッドウッドにお目見えした新型『スープラ』は、「号試車」と呼ばれる市販のための最終確認車両だ。ボディ形状を隠すためのフィルムでカモフラージュされていたが、ナンバープレートには「A90」の文字が刻まれる。これは「A70」「A80」と続いた『スープラ』の型式にほかならない。
開発はBMWと共同で行われ、シャーシのベースはBMW『Z4』。また、『スープラ』といえば直列6気筒エンジンが代名詞だが、新型でもBMWが開発した335馬力の3L 6気筒ターボエンジンを搭載するといった報道も見られる。さらに、直6以外に4気筒モデルの可能性も示唆された。
伝統を受け継ぐという意味では、FR(後輪駆動)レイアウトも継承する。重心は『GT86』(トヨタ『86』の欧州名)よりもさらに低く、ボディ剛性は『GT86』の2倍を目指し、レクサス『LFA』と同レベルを達成したという。
驚くべきは、カーボンファイバーを採用せずに剛性と軽量化を両立したこと。カーボンファイバーを採用したスーパースポーツは超高級になるが、新型『スープラ』は700〜800万円と予想されている。ポルシェ『ケイマン』『ボクスター』あたりがライバルになりそうだ。
トヨタが手がける官能的なエンジン音のクルマは新型『スープラ』が最後!?
ピュアスポーツは現在、プレミアムブランド以外では数少なくなりつつある。新車で耳目を集めるのは、自動運転などの技術ばかり。排ガス規制も世界中で厳しくなり、電動化やPHV(プラグインハイブリッド車)、マイルドハイブリッドなど、パワートレインも多様化し、純粋なガソリンエンジンはあまり話題に上らない。
「規制が厳しくなることで、エモーショナルなクルマをつくることがどんどん難しくなっている。新型『スープラ』が純粋なガソリンエンジンによる官能的な音を楽しめる最後のトヨタ車になるのではないかと思っている」とコメントするのは、開発責任者の多田哲哉氏である。
直列6気筒エンジンが奏でるサウンド、低重心でFRレイアウトが生み出す独特の挙動。古き良きドライビングプレジャーを堪能できる最後のトヨタ車は、あの頃の情熱を呼び起こしてくれそうだ。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)