『カマロ』を彷彿とさせるフェイス、マッシブでボリューミーなサイドビュー
アメ車ファンは、シボレー『ブレイザー』と聞くと「実用性重視で色気のないクルマ」というイメージを思い浮かべるのではないか。実際、以前の『ブレイザー』は地味なデザインの商用車風で、むしろそれが魅力でもあった。
しかし、2019年モデルとして発表された新型『ブレイザー』は、そのイメージを一新することが目的でもあるかのように、まったく異なるクルマへと進化した。筋肉質でありながらシャープなラインを描くスタイリングは美しくもある。
とりわけ目を引くのはフロントフェイスだ。ワイドなグリル、そして薄型で切れ長のヘッドライトは、同じシボレーの2ドアスポーツクーペ、新型『カマロ』を彷彿とさせる。少なくとも『カマロ』に大きな影響を受けているのは間違いないだろう。
さらに、傾斜の強いAピラーに、マッシブでボリューミーなサイドビューも印象的。欧州車のSUVなどに流行しているフローティング・ルーフラインも取り入れられた。ホイールは18インチが標準だが、グレードによっては21インチホイールも選択できる。
新型『ブレイザー』のエンジンは2種類、アメリカ人のニーズを考えた選択肢
エンジンは2種類が用意される。2.5L直列4気筒エンジンは最高出力193hp、最大トルク255Nm。GM製の3.6L V6エンジンは、最高出力305hp、最大トルク365Nmを発揮する。どちらか選べるのは、ユーザー目線で考えるとありがたい設定だ。
日本人からすると、アメリカ人がクルマに求めるものを「とにかくデカくてパワフルなこと」と想像しがちだが、じつは合理的で堅実な選択をする人のほうが多い。そういった意味では、近距離のシティユースが中心の人なら直4を選ぶであろうことが想像できるし、キャンピングなどを家族で愉しむアクティブな人にはV6のほうがふさわしいというわけだ。
V6モデルはトレーラーアシストを装備し、4500ポンド(2041kg)の牽引強度を持つ。牽引性能を備える点もアメ車ならではといったところだろう。
トランスミッションは9速AT。駆動方式は、標準モデルがパートタイム4WDで、スポーティな「RS」と最高級グレードの「プレミア」は、駆動力配分を自動制御するツインクラッチシステム付きのAWDとなっている。
「RS」と「プレミア」の違いについては詳しいアナウンスがまだないが、エクステリアトリムが違うだけで、パワートレインや内装に変わりはないようだ。外観では、「RS」は下回りや各トリムがブラックアウトされ、それに対して「プレミア」は高級感あるクロームメッキが施されているという具合である。
2列シートの5人乗りSUVながら、ラゲッジスペースは最大1818Lの広さに
インテリアでは、多数のバリエーションから内装色が選べるなど、ユーザーの好みに合わせてカスタマイズできる点が特徴的だ。
おもな標準装備としては、8インチのタッチスクリーン、6個のUSBポート、ワイヤレス充電端子、4G Wi-Fi、キーフォブから操作できるパワーウインドウ、さらに「RS」と「プレミア」にはハンズフリーで開閉可能なリアゲートなどがあり、実用的かつ現代的な装備が取り入れられている。
クルーズ・コントロールが搭載されているのはアメ車として当然だろう。そのほか、パノラミック・サンルーフなどがオプションとして用意された。エアコン吹き出し口は丸型で、こうしたディテールも『カマロ』を思わせる。
新型『ブレイザー』は、シボレーのSUVラインナップのなかで、ミッドサイズの『エキノックス』とフルサイズの『トラバース』の中間に位置づけられる2列シートの5人乗りだ。3列目シートを廃したことで2列目には余裕が感じられ、また2列目シートを倒すとラゲッジスペースは最大1818Lに広がる。
さらに、ラゲッジスペースは単に広いだけではなく、シティユースを考慮してレールによる仕切りが設置されるなど、荷物の収納に工夫が施されているのも面白い。
『ブレイザー』はシボレーのラインナップでも特別、日本には上陸するのか?
エクステリアデザイン、そしてパッケージ全体にコマーシャル。さまざまな点を考えても、以前の「牧場とカウボーイ」が似合う『ブレイザー』ではなくなったことは間違いない。
プレスリリースや写真を見るだけでも、インテリアから細部の仕上げまで気を配り、ユーザーの要望を取り入れることに真剣だった様子がうかがえる。だからこそ、シボレーのラインナップのなかで特別なモデルとなりうるのだ。
アメリカ本国を含む北米市場では2019年初頭に発売されるが、日本に導入されるかどうかは未定。価格もまだアナウンスがない。
なにしろ、北米でも『ブレイザー』が登場するのは久しぶりで、日本では16年前に販売が終了して以降、市場から姿を消していたのだ。いずれにせよ、正規導入を期待したい。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) General Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)