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第6回 | 日産の最新車デザイン・性能情報をお届け

GT-Rとイタルデザイン──伝説と伝説の邂逅に刮目せよ

『Nissan GT-R50 by Italdesign』は、2019年に『GT-R』が、2018年にItaldesign(イタルデザイン)がそれぞれ生誕50周年を迎えることを記念したプロトタイプモデルだ。イタルデザインが開発・設計・製造を行い、日産デザインヨーロッパと日産デザインアメリカが内外装のデザインを担当した。『GT-R』ファンならずとも、興奮せずにはいられないダブルネーム。その実車が、ついに「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」でデビューした。

自動車の祭典、グッドウッドで大注目された『Nissan GT-R50 by Italdesign』

「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」は、イングランド南部、ウェスト・サセックス州グッドウッドで年に一度開催される自動車の祭典だ。主催者は英国貴族マーチ卿。会場となる緑豊かなグッドウッドもマーチ卿の領地である。

クラシックカーから最新のスペシャリティカーまでもが一堂に会する、世界的にも注目度が高いモータスポーツイベントで、2018年は7月12日から4日間にわたって開催。トヨタが開発中の『スープラ』の試作車を走らせて来場者の注目を集めたのは記憶に新しい。

そのなかでも、際立って目立っていたのが『Nissan GT-R50 by Italdesign』である。

第3世代の日産『GT-R』は、世界では「スーパーカー」として認識されている

日本車において「伝説」という枕言葉がつくエピソードを持つクルマは数えるほどだ。『GT-R』は、まぎれもなくそのなかの一台だろう。

人口に膾炙されたことだが、『GT-R』の血統は『スカイラインGT-R』に遡る。初代のデビューは1969年2月。搭載されたS20型エンジンは、レーシングカー『R380』の2000cc GR 8型直列6気筒4バルブDOHCエンジンをベースに開発された。まさに、速く走ることを純粋に突き詰めた一台である。2代目は1973年デビュー。しかし、S20型エンジンが1973年施行の排ガス規制をクリアできず、わずか195台が市販されただけで生産が終了した。

それから20年。長い空白期間を経てデビューしたのがR32型『スカイライン GT-R』。ここからR34型までは、第2世代の『スカイラインGT-R』だ。

その出現は、日本のみならず、世界中で驚きを持って迎えられた。理由は、圧倒的な走行性能にある。ポルシェを仮想敵とし、勝るとも劣らない走りで互角以上に戦った。その結果、世界では日本以上に「スカイライン GT-R=スーパーカー」という認識が浸透したといってもいいだろう。

しかし、R34型をもって『スカイラインGT-R』の生産は終了する。その後、2007年に復活したのが『GT-R』だ。

第3世代となるR35型『GT-R』は、第2世代を上回るスーパースポーツへと進化した。デビューは2007年。「新次元マルチパフォーマンス・スーパーカー」のキャッチフレーズを持つとおり、0ー100km/hの加速は3.6秒で、最高時速は309km/h。ニュルブルクリンクでは、7分29秒3という当時の量産市販車最速タイムを記録した。

なにより驚くべきは、この動力性能がサーキットに特化したものではなく、誰でも、どこでも、いつでも速く走れることを目的に開発されたことだ。もちろん、現行型ではすべての性能がさらにパワーアップしていることはいうまでもないだろう。

自動車デザインの名匠、ジウジアーロが率いる「イタルデザイン」とは何か?

それゆえに、『GT-R』は特別仕様車が登場しただけでも話題になる。さらに今回の開発、設計、製造はイタルデザイン。注目されないわけがないのだ。

イタルデザインは、イタリアのデザイン会社である「イタルデザイン・ジウジアーロ」の自動車デザイン部門。社名からわかるように、御年79歳、工業デザイナーであり自動車デザインの伝説的人物、ジョルジェット・ジウジアーロが率いる。

ジウジアーロについて、多くの説明はいらないだろう。初代フォルクスワーゲン『ゴルフ』、フィアット『パンダ』、デロリアン『DMC-12』、初代ロータス『エスプリ』、マセラティ『ギブリ』。代表作は枚挙に暇がない。

日本車とのかかわりも深く、スバル『アルシオーネSVX』、5代目トヨタ『カローラ』、初代三菱『ギャラン』などをデザイン。日産では初代『マーチ』もジウジアーロのデザインだ。

開発テーマは「なんの制約もなく作られたGT-R」、まさしく究極『GT-R』の姿

前置きが長くなったが、いずれも伝説である『GT-R』とイタルデザインが手を組んだのが『Nissan GT-R50 by Italdesign』だ。いわく「なんの制約もなく作られたGT-R」。

ベース車両は現行型の『GT-R NISMO』。しかし、エクステリアはかなり趣が異なる。

フロントで目を引くのは、「サムライブレード」と名付けられた、特徴的なエアアウトレット(空気排出口)。50周年記念の「エナジェティックシグマゴールド」で彩られ、存在感を発揮している。

ボンネットでいえば、中央にふくらみのあるパワーバジルがマッチョな印象を与えるが、L字型のシャープなLEDヘッドライトがあることで、筋肉質でありながら鋭さをもったバランスのある外観となっている。

サイドデザインでは、ベース車より54mm低くしたルーフラインが目を引く。ルーフの中央部が低く、外側が少し高いことで、ここでも筋肉質な印象だ。

リヤデザインは、『GT-R』のデザインアイコンである丸型テールライトを空洞で囲む細いリングのように見せるデザインが新しい。夜間にはテールライト自体が浮かび上がって見えることだろう。テールライトの上には、巨大な可変式リアウイングが鎮座し、このクルマのポテンシャルを雄弁に物語る。

リアには、フロントのエアアウトレットにも使われている「エナジェティックシグマゴールド」が効果的に配色。外観カラーのベースである「リキッドキネティックグレイ」のアクセントとなっている。

インテリアでは、センターコンソール、インストパネル、ドアの内張りに2種類のカーボンファイバーを、シート素材には黒のアルカンターラと同じく黒のイタリア製レザーを採用。インストパネル、ドア、スイッチ類にはゴールドがあしらわれた。エクステリアに合わせた差し色がこだわりを感じさせる。モダンでありながら、走りの高性能さを想起させる内装だ。

価格はなんと1億円超、手に入れられるのは世界中でたったの50人になる!?

もちろん、パフォーマンスも50周年を記念するにふさわしい。手作業で組み立てた3.8LのV6「VR38DETT」エンジンは、最高出力720ps、最大トルク780Nm。ベースとなる『GT-R NISMO』の最高出力600ps、最大トルク652Nmも相当なスペックだが、それを軽く上回るモンスターマシンだ。

このパワーを受け止めるために、足回りには新しいビルシュタイン製サスペンションとブレンボ製ブレーキを採用したという。

イタルデザイン・ジウジアーロのCEOであるヨルグ・アスタロッシュ氏の言葉を借りれば「夢のGT-R」。氏は「50名の選ばれしエンスージアストの生活に新たな彩りをもたらす」と述べているので、このプロトタイプを元にした市販車が、50周年にかけて50台限定で生産されるのだろう。

生産はイタルデザインが手がけ、個人の好みに合わせて仕様を決められるという。価格もモンスター級で、「おおむね90万ユーロ」とアナウンスされた。原稿執筆時である7月25日のレートで日本円に直すと、1億1700万円だ。

世界中に熱狂的なファンを持つ『GT-R』。この金額でも、50台は争奪戦となり、また新たな伝説を刻みそうだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Nissan Motor Co., Ltd
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Nissan GT-R 50 by Italdesign メイキング映像
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第11回 | 日産の最新車デザイン・性能情報をお届け

Zカー伝説、再び──フェアレディZ 50周年記念モデル

1989年は、国産車のヴィンテージイヤーといわれている。トヨタ『セルシオ』、R32型『スカイラインGT-R』、ユーノス『ロードスター』、スバル『レガシィ』。これらのクルマが誕生した年だからだ。しかし、そこから遡ること20年前、1969年もじつは負けていない。日産自動車が誇る伝説的な2台の名車、『フェアレディZ』と初代『GT-R』は1969年に揃ってデビューした。今年はその50周年にあたる。それを記念して発表されたのが、往年の『ダットサンZ』をオマージュした『フェアレディZ 50thアニバーサリー』だ。

世界総販売台数はじつに55万台。空前のセールスを記録した初代『フェアレディZ』

1969年に北米でデビューした初代『フェアレディZ』は、その流麗なスタイリングと動力性能から、一瞬でクルマ好きを虜にした名車だ。高性能なエンジンやストラット式4輪独立懸架サスペンション、手の届く価格などで人気となり、発売直後から大ヒット。1978年までの約10年間で、北米市場を中心に世界総販売台数55万台(日本国内は8万台)という空前の記録を打ち立てた。まさに伝説といっていい国産スポーツカーである。

とりわけ輸出専用モデルだった『240Z(日本での呼び名はニーヨンマルジー)』はレース用車両にも採用され、モータースポーツでの活躍を通じてその評価を高めた。1971年の第19回サファリラリーでは、直列6気筒OHCのL24型エンジンを210馬力にチューンナップした『240Z』が初出場にもかかわらず総合優勝。2位にも『240Z』が入ったことで、ラリーデビューをワンツーフィニッシュで飾るという快挙を成し遂げているほどだ。

今回の50周年記念モデル『フェアレディZ 50thアニバーサリー』では、そうした輝かしい戦績のひとつ、1970年にSCAA(スポーツカークラブ・オブ・アメリカ)主催のレースで優勝した往年の『ダットサン240Z BRE』のデザインを新たな形で再現している。

1970年のSCAA主催レースで優勝した『240Z』のカラーとデザインをオマージュ

ボディカラーは、「ブリリアントホワイトパール」をベースカラーに、ボンネットやAピラー、ルーフ、リアセクションなどを対照的な「バイブラントレッド」で彩るという鮮やかなもの。ドアの下部にもバイブラントレッドのストライプがあしらわれている。これは1970年当時の名門チーム、BRE(ブロック・レーシング・エンタープライゼス)のマシンから着想を得たカラーリングである。ボディ側面の「Z」のロゴ周りには「50Th」の文字をレタリング。ホイールは、リムに赤のラインを追加した19インチアルミホイールだ。

このブリリアントホワイトパール×バイブラントレッドのほか、「ブリリアントシルバー」のボディに「ダイヤモンドブラック」を組み合わせたカラーリングも用意された。

室内も専用装備にあふれ、50周年のアニバーサリーモデルとしてのスペシャル感を演出している。ステアリングホイールの表皮は、レーシングカーをイメージさせるセンターストライプを施したアルカンターラ。そのほか、専用キッキングプレート、専用カラーのシフトノブ、専用ステッチを施したパワーシートやドアトリムを採用した。さらに、メーター、シフトノブ、シート、フロアマットには「50th Anniversary」のロゴが配されている。

『フェアレディZ 50thアニバーサリー』は期間限定モデルとして今夏に発売予定

日産のグローバル商品戦略本部副社長のイワン・エスピノサ氏は、『フェアレディZ 50thアニバーサリー』について次のようにコメントしている。「370Zは日産にとって重要なアイコンたる存在です。このクルマは過去半世紀の間、セグメントを牽引してきました。370Z 50周年記念アニバーサリーエディションは、日産が存在し続けることを助けた重要モデルのオマージュであり、これまでのレースの歴史と功績を祝うモデルなのです」。

『フェアレディZ 50thアニバーサリー』は、2020年3月末までの期間限定モデルとして今夏に発売される予定。「Z」は、メガヒットシリーズ『ワイルド・スピード』にもたびたび登場することでもわかるように、世界中のカーガイがいまも愛し続けるジャパニーズスポーツカーだ。発売されれば、北米を中心にきっと予約受注が殺到するに違いない。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Nissan Motor Co., Ltd.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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