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第16回 | ボルボの最新車デザイン・性能情報をお届け

ジャーマンスリーを脅かせ──オールニューボルボS60

ボルボといえば、武骨で角張ったデザインを思い起こすかもしれない。しかし、それはかなり昔の話。最近では、スタイリッシュなエクステリアが特徴的だ。『S60』は、曲線を多用してボルボの印象を変えたモデルのひとつである。デビューは2000年。その後、2010年に2代目が発売された。それから8年、ついに3代目となる新型『S60』がデビューした。エントリーモデルの『V40』とフラッグシップの『V90』の中間に位置し、ブランドの中心を担うセダンだ。

『S60』が本国スウェーデンやヨーロッパではなくアメリカで発表された理由

先にワゴンタイプの『V60』が発表されていたので、ある程度は予想していた。やはり『S60』も、新世代ボルボを感じさせる一台だ。それは、パワートレインや機能、デザインだけではなく、披露された場所にも表れている。

『S60』がアンベールされたのは、本社のあるスウェーデンでも、モーターショーのようなイベント会場でもない。アメリカのサウスカロライナ州チャールストン郊外、ボルボ初となるアメリカ工場だ。『S60』はここで量産される。

これまでフォードとの提携や吉利集団(ジーリー)への売却など、いくつかのフェーズを経てきたボルボだが、北米での生産もボルボの新しい一歩といっていいだろう。

新型『S60』のプラットフォームは、発表済みの新型『V60』や『S90』『V90』と同じく、安全性の向上に加えて電動化や自動運転など次世代を見据えた「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ)」がベースだ。

次世代への覚悟を示すかのように、新型『S60』はボルボ車として初めて、ディーゼルエンジンと決別。電動化を見据えたPHV(プラグインハイブリッド)に力を入れた。ちなみに、ボルボは、2019年以降に発売する新型車のパワートレインを全車電動化していくという。

来たるべく電動化を見据え、新型『S60』はPHVのラインナップに力を注ぐ

グレードは、「T5」「T6」「T6 ツインエンジン」「T8」T8 ポールスター エンジニアード」の5つからなる。このうち、ガソリン車は「T5」「T6」だ。

「T5」には最高出力250hpの2.0L 直列4気筒ターボエンジンを搭載。「T6」はターボとスーパーチャージャーでダブル過給する、2.0L 直列4気筒ターボ&スーパーチャージャーエンジンを搭載。最高出力は316hpとなる。

「T6 ツインエンジン」「T8」「T8 ポールスター エンジニアード」はPHVだ。

「T6 ツインエンジン」のシステム最高出力は340hp。「T8」はターボとスーパーチャージャーでダブル過給するガソリンエンジンとモーターを備えており、システム最大出力は400hpを発揮する。駆動方式は、ガソリンエンジンが前輪を、モーターが後輪を駆動する4WDを採用した。

ハイパフォーマンスグレードの「T8 ポールスター エンジニアード」はECU(エンジンコントロールユニット)のチューニングにより、システム最大出力は415hpにアップ。サスペンションやホイール、ブレーキも強化された。

北欧ブランドらしく室内は機能美を追求したスカンジナビアンラグジュアリー

デザイン面でも『S90』や『V60』の新世代フォルムを踏襲した。ヘッドライトは北欧神話に登場するトール神(雷神)が持つハンマーをモチーフにしたT字型。リアには『S90』のC字型テールライトが採用されている。ボディサイズは、車幅が狭くなったが、全長は長くなっている。それにより室内や荷室には余裕が生まれた。

インテリアは機能美を追求したクリーンでモダンなスカンジナビアンラグジュアリー。インフォテイメントシステムの「Sensus Connect(センス コネクト)」を搭載し、ナビゲーション、空調、メディアなどは、直感的な操作を行える縦型のタッチスクリーン式センターディスプレイに集約する。

もちろん、ボルボのお家芸である安全機能も充実している。オートブレーキ技術を使用した「シティ・セーフティ」は衝突回避を支援し、クルマ、歩行者、自転車だけでなく、大型動物も検知可能だという。

オプションの「パイロット・アシスト」(追従時車線維持機能)は、130km/h以下の速度でアクセル、ブレーキ、ステアリングの制御をサポート。また、従来モデルよりもコーナリングでのパフォーマンスを高めた。

メルセデス・ベンツ『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、アウディ『A4』に挑む

ラグジュアリーミドルサイズセダンに属する『S60』がライバルとして見据えるのは、ジャーマンスリーの3台。つまり、メルセデス・ベンツ『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、アウディ『A4』だろう。

ボルボ・カーズのホーカン・サムエルソン社長兼CEOは、『S60』について「アメリカと中国のセダン市場で強力なポジションを獲得し、ボルボ・カーズのさらなる成長機会を創出する真のドライバーズカー」と述べている。

アメリカや中国で存在感を発揮するには、ジャーマンスリーの一角を崩す必要がある。『S60』に、鉄壁の3台を脅かす存在になりうるだけの実力があるのかどうか。今のところ正式発売日のアナウンスはなされていないが、デビューが待ち遠しい一台である。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Volvo Car Corporation
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
VOLVO S60 オフィシャル動画
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第18回 | ボルボの最新車デザイン・性能情報をお届け

キーワードはクラスレス──ボルボXC40が素晴らしい理由

COTY(日本カー・オブ・ザ・イヤー)は、日本国内で販売される乗用車のなかから、もっともその年を象徴するのにふさわしい車両に与えられる称号だ。ボルボはこのCOTYを2017-2018、そして2018-2019と、2年連続で受賞している。輸入車ブランドが連覇したのは、およそ40年に及ぶCOTYの歴史上初めてのこと。この快挙をなし遂げた立役者のうちの一台が、ボルボ初のコンパクトシティSUV『XC40』である。じつは、『XC40』はCOTYの選考委員のみならず、ユーザーからの評価も高く、納期が最大で1年となるほどの人気となっている。『XC40』はなぜ多くの支持を集めるのだろうか。

9カ月で目標の2.7倍となる4000台を受注した『XC40』。納期は最大で1年待ち!

少し前までのボルボには、「安全だが、どこか垢抜けない」という印象があった。これを払拭したのが、2016年の『XC90』を皮切りに、『V90』『V90クロスカントリー』『XC60』『XC40』『V60』と、立て続けに発表されたニューモデル群だ。なお、ボルボでは、「XC」はSUVを、「V」はステーションワゴンを、数字はボディサイズを表している。

これらの新型車は、スウェーデン車らしい明るい雰囲気の内外装を追求し、メルセデス・ベンツをはじめとするドイツのライバルとは違ったプレミアム性も兼ね備えることで高い評価を得ている。JAJA(日本自動車輸入組合)の2018年度上半期の輸入車新規登録台数でも、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、BMW、アウディ、MINIのドイツ勢に続くのがボルボなのだ。日本国内市場におけるシェアも5%近くに伸びている。

このうち、COTY 2017-2018を受賞したのがミドルクラスSUVの『XC60』。そして2018-2019の受賞でボルボを連覇に導いたのが、ひと回りコンパクトな『XC40』だ。

『XC40』は、ボルボのSUVシリーズのボトムエンドを担うモデル。この『XC40』のヒットからわかるのは、初めてボルボを買う新規ユーザーからの支持も獲得しているという事実だ。なにしろ、2018年3月に販売を開始すると、年内の国内割当て分は即完売。同12月までに目標の2.7倍となる4000台を受注し、納期は最大1年にもなっている。

クラスの枠組みからユーザーを解放。最先端の安全装備を全グレードに標準装備する

なぜ『XC40』は高い評価を得たのか? 最大の理由は「クラスレスの魅力」にある。つまりファミリー層からプレミアム層にまで支持される幅広いバリューを有しているのだ。

ボルボのSUVシリーズは、大きい順に『XC90』『XC60』『XC40』の3モデルをラインナップする。しかし、「90」がもっともエライのかというと、けっしてそうではない。それぞれに異なる個性が与えられえている。ボルボはそれを「VC90はフォーマルな革靴」「XC60は少しライトな印象のスウェード靴」「XC40は軽快なスニーカー」と例えた。

『XC40』は『XC90』の廉価版などではなく、カジュアルSUVとしての魅力を追求している。そのため、エントリーSUVといっても、ボルボの大きな特徴である先進安全装備(インテリセーフと呼ぶ)は上位モデルとほぼ同等だ。一例を挙げると、部分自動運転機能の「パイロットアシスト」、道路逸脱回避をサポートする「ランオフロードミティゲーション」など、その装備は10以上に及ぶ。内外装の装備やマテリアルも見劣りしない。

しかも、『XC40』は、この世界最高レベルの先進安全装備をすべてのグレードに標準装備している。これはコンパクトモデルでは非常にめずらしいケースといえるだろう。

クルマ、とりわけ欧州車は、貴族的な人々の乗り物として誕生した成り立ちもあり、良くも悪くもクラスソサエティ(階級社会)と深い関係にある。そうしたクラスの枠組みから解放してくれた点こそ、『XC40』がユーザーを惹きつける魅力であるように感じる。

ボディカラー、ルーフカラー、内装色。『XC40』は“選ぶ愉しみ”もその魅力のひとつ

サイズも日本向きだ。全長4425mm×全幅1875mm×全高1660mmのボディは、車幅こそ少々大きいものの、全長は十分にコンパクト。日本の都市部でも取り回しに困ることはない。だからこそ、コンパクトシティSUVとして選ばれているのだろう。

2.0L「Drive-E」ガソリンターボエンジンは、「T4」「T5」の2つのチューンが用意されるが、実際に乗ってみると140kW(192ps)の「T4」でも十分にパワフルで軽快だ。乗り心地も、どちらかといえば硬質なドイツ車に対し、どこか優しさを感じる。プレミアムコンパクトSUVの購入を検討している人が候補に入れたくなるのもうなずけるのだ。

しかも、カジュアルな「モメンタム」、スポーティな「Rデザイン」、ラグジュアリーな「インスクリプション」の3タイプから選ぶグレードに始まり、グリルのデザインにボディカラー、それと組み合わせるルーフカラー、内装色に素材選びと、頭を悩ませるくらいに選択肢が多い。これだけ「選ぶ愉しみ」の多いコンパクトSUVもそうそうない。

価格は389万円から。『XC40』はヨーロッパでも、もっとも優秀なクルマに選ばれた

『XC40』のグレードには、「モメンタム」「Rデザイン」「インスクリプション」のほかに価格を抑えたエントリーモデルもあるが、ここにもクラスソサエティは存在しない。好みやユーザーのライフスタイルに合わせて選べるようになっている。価格はエントリーモデルの「T4」が389万円から、「T5 AWD インスクリプション」が549万円からだ。

ちなみに、発売当初のデータでは低価格モデルではなく「Rデザイン」や「インスクリプション」が人気だったというから、価格だけで選ばれているわけではないことがわかる。

『XC40』が獲得したのはCOTYだけではなく、じつは、2018年のECOTY(ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー)も受賞している。ECOTYは年間5000台以上という販売台数基準の関係から、伝統的にルノーやフィアットなどの小型車が受賞するケースが多い。言い換えると、それだけ『XC40』がユーザーに広く支持されている証拠でもあるのだ。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Volvo Car Corporation
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
The Volvo XC40: City Living Made Simple
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