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第39回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

現行911の最終モデル──911スピードスターコンセプト

1948年6月8日は、ポルシェにとって歴史に残る1日だ。「Porsche」の名を冠する最初のモデル、『356 ロードスター』の一号車がオーストリア・グミュントで誕生したのだから。まさに、正式にポルシェブランドが始まった日といってもいいだろう。それから70年後の2018年6月8日、ドイツ・ツッフェンハウゼンで開催された「ポルシェ スポーツカー70周年」の公式祝賀会において、それは電撃発表された。ポルシェのスポーツカー生誕70周年を記念した一台、『911スピードスター コンセプト』である。

歴代の「スピードスター」をオマージュした『911スピードスターコンセプト』

「コンセプト」という名がつくと、そのデザインはいかにも大仰になりがちになる。だが、『911スピードスター コンセプト』は、外連味(けれんみ)のない、まさにポルシェの伝統を継承したといったデザインである。レトロな趣といっていいかもしれない。

それもそのはずだろう。このクルマのエクステリアには、『911 カレラ4 カブリオレ』をベースに、『356 1500スピードスター』や『911 スピードスター』などをオマージュした要素が加えられている。

1950年代の“レーシングポルシェ”を思わせるこだわりが詰まったディテール

歴代の「スピードスター」は大きく傾斜した短いフロントウインドが特徴だ。オープンであることからもわかるように、重心を低くして運動性能を極限まで高めることを目的としている。

もちろん、『911スピードスター コンセプト』もその例に漏れない。ボディは『911 カレラ4 カブリオレ』のワイドさを継承している。

しかし、『911 カレラ4 カブリオレ』とは異なり、電動開閉機構を省略するなど、限りなく軽量化された。コンバーチブルトップの代わりに備えられるのは、歴代「スピードスター」と同じく、ファスナーで取りつける軽量のトノカバー。走行時は基本的に取り外す。

歴代「スピードスター」で採用された、車体後部にあるダブルバブル形状の「スピードスターカバー」も健在だ。軽量化のためにカーボンファイバーで作られているという。ちなみに、フェンダーやフロントフードはカーボン製である。

一見、オーソドックスでオールドなポルシェデザインに感じるかもしれないが、細部には“レーシングポルシェ”を思わせるこだわりが詰まっている。

たとえば、ヘッドライトカバーの「X」。モータスポーツ好きならピンと来ると思うが、これはレースカーが飛び石による破損防止のために貼るテープを想起させる。ミラーはタルボットスタイルで、流線型のレーシングミラーを採用した。ホイールはシンプルな5スポーク。センター燃料タンクキャップはフロントフード中央に配置される1950年代スタイルが採用された。

1950年代というのは、つまり『356スピードスター』が現役だった年代。これらの意匠が、レトロな印象を与えているのだろう。

サイドにはレーシングカーを思わせる「70」のゼッケン。70周年を意識していることは言うまでもない。透明なプレキシガラス製ディフレクターにも「70 years of Porsche」ロゴが刻印されている。

生産を手がけるのは、特別な一台を作る「ポルシェ モータースポーツセンター」

インテリアでは、ヘッドレストに「Porsche」のロゴを刻印したライトブラウンのアニリンレザーのバケットシートが目を引く。これも一見するとレトロだが、骨格はカーボンファイバーだ。軽量化のために、ナビゲーションやラジオ、エアコンなどは装備していない。

パワートレインは最新のGTモデルに準じており、最高出力500ps/9000rpmの水平対向6気筒エンジン。トランスミッションは6速MTを搭載。足回りは『911 GT3』をベースにしたシャーシを採用した。

生産は『911 GT2 RS』や『GT3 RS』と同じく、特別な一台を手掛けるドイツ・ヴァイサッハの「ポルシェ モータースポーツセンター」が手がける。今後数カ月で市販化を進めるか否かの判断を下すという。

現行の911型『911』の最後を飾る大物として今秋か2019年に正式デビュー?

「スピードスター」は、『ポルシェ 356』をはじめとして、『ポルシェ911(930型)』『ポルシェ911(964型)』『ポルシェ911(997型)』の4世代にのみ与えられた名だ。

『911』シリーズでは、いずれもモデル末期に登場している。そういった意味では、現行モデルである『911(911型)』の最後を飾る大物として、市販車デビューする可能性が高いだろう。巷の噂では2019年にデビューともいわれているが、次世代『911(992型)』が発表される今秋以前を期待する声もある。

限定モデルになることは確実。70周年を記念して70台ということはないだろうが、生誕年の1948年に由来して1948台限定ということは考えられる。いずれにしろ、プレミアム必至の一台になることは間違いない。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
911 Speedster Concept オフィシャル動画
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第53回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

ポルシェ カイエンクーペ──SUVクーペに真打ちが参戦

世界の自動車市場を席巻するプレミアムSUVというジャンルは、2002年にポルシェ初のSUVとしてデビューした『カイエン』から始まった。スーパーカー並の性能を有するランボルギーニ『ウルス』やベントレー『ベンテイガ』も、『カイエン』の存在がなければ登場はもっと後だったかもしれない。その高級SUVの祖に、これまでクーペボディをもつ派生車種がラインナップされていなかったのが不思議なくらいだ。今年4月、ポルシェは上海で『カイエン クーペ』を初公開した。まさしく、満を持してのデビューである。

より低くスポーティなルックスになった『カイエン』。ライバルは『GLEクーペ』?

プレミアムSUV市場には、すでにいくつかのSUVクーペが存在する。メルセデス・ベンツなら『GLCクーペ』『GLEクーペ』、BMWなら『X4』『X6』。高級車ブランドがこぞってSUVに注力した結果、市場は多様化し、多くの選択肢をユーザーに用意することが求められるようになった。そうしたなかで、元祖プレミアムSUVである『カイエン』にクーペモデルが加わるのは必然。むしろもっと早く市場に投入してもよかったかもしれない。

『カイエン クーペ』はその名のとおり、ボディ後部にいくほど傾斜していく流麗なルーフラインをもったクーペルックのSUVだ。横から見ると、フロントウィンドウとAピラーが通常モデルよりも低く、寝かされていることがわかる。ルーフエンドには、クーペスタイルを強調するかのようにルーフスポイラーが装着された。ボディサイズは全長4931×全幅1983×全高1676mm。通常モデルと比べて全長が13mm長くなり、全高は20mm低くなった。さらに、新設計の後部ドアとフェンダーにより形状が変わったことで、全幅も18mmワイドになっている。全体として、より低くスポーティになった印象だ。

ルーフは2種類。固定式パノラマガラスルーフが標準で、カーボンルーフをオプションで選択できる。0.92m2のガラスルーフはかつてない開放感を乗員に与え、統合されたローラーブラインドが直射日光や寒さを防いでくれる。カーボンルーフは『911 GT3 RS』と同様に中央に窪みを持つ形状で、いかにもスポーティカーといった雰囲気を醸し出す。

『カイエンターボ クーペ』は最高出力550馬力。0~100km/h加速はなんと3.9秒

クーペ化にともなって室内空間にも変更が加えられた。標準モデルとの大きな違いは、後席がそれぞれ独立して2座になり、4つのスポーツシートを備えるようになったことだ(ベンチシートもオプションで選べる)。とりわけ前席は、インテグレーテッドヘッドレストと8ウェイ電動調節を備えたスポーツシートを採用し、優れた快適性とホールド性でドライバーをサポートする。また、全高は低くなったものの、リアシートの着座位置を標準モデルより30mm低くしたことで、後席のヘッドスペースも十分な広さを確保した。

ラゲッジルームの容量は通常時で625L。後席を畳めば最大1540Lまで拡大することが可能だ(『カイエンターボ クーペ』では通常時600L、最大で1510Lとなる)。

パワーユニットはグレード別に2種類のガソリンエンジンが用意された。『カイエン クーペ』は3.0L V型6気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は340ps(250kW)、最大トルクは450N・m。0~100km/h加速は5.9秒(オプションの「軽量パッケージ」)、最高速度は243km/hだ。『カイエンターボ クーペ』は4.0L V型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力は550ps(404kW)、最大トルクは770N・m。こちらの動力性能はさらに強烈で、0~100km/h加速は3.9秒に短縮し、最高速度は286km/hに達する。

すでに日本国内で予約受注も開始。『ウルス』のエンジンを積む最強グレードも登場?

『カイエン クーペ』『カイエンターボ クーペ』ともに、すでに日本国内での予約受注を開始しているが、国内発売日はまだ未定。一方、ヨーロッパでは、この2台の中間グレードとなる『カイエンS クーペ』が5月15日に発表され、さらにランボルギーニ『ウルス』と同型のエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルが設定されるとの情報もある。実現すれば、最高出力640ps以上の最強モデルがシリーズに加わることになるだろう。

まさに、プレミアムSUVブームを牽引してきた『カイエン』による怒涛のニューモデル攻勢といった趣だ。高級SUV市場が今後ますます活性化していくのは間違いない。1000万円以上の高級SUVを買える裕福な人々にとっては、選択肢が広がるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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