イタリア初の電動バイクメーカーが生んだ電動ストリートファイター『EVA』
世界最高峰のバイクレースといえば、もちろんMotoGPだ。四輪のF1グランプリにあたる世界選手権シリーズで、ライダーなら一度はテレビの画面などを通じてレースを見たことがあるだろう。さらに、電動フォーミュラカーにもフォーミュラEという世界選手権シリーズがある。
では、電動バイクレースの最高峰はいったいなにか? じつは、2019年に電動バイクの世界選手権シリーズ「MotoE ワールドカップ(正式名称はFIM Enel MotoE World Cup)」が開幕するのだ。レースは『EGO(エゴ)』という電動スーパースポーツのみのワンメイクで行われ、排気音のしない静かなパワーユニットながら、最高速度240km/hの烈風レースを展開するという。
『EGO』を開発したのは、イタリアのモデナ近郊、自動車関連産業の集積地として知られるモーターヴァレーに本拠地をおくエネルジカ・モーターカンパニー。Moto2、Moto3マシンの製作をはじめ、フェラーリのF1マシンの部品製作も手がけるCRPグループの子会社だ。イタリア初の高性能電動バイクメーカーであり、新時代を創り出すイノベーターとしても注目を集めている。
このエネルジカ社が今から4年前、EICMA (ミラノショー)2014で市販モデルとして発表したのが『EVA』だ。『EGO』のカウルを取り外し、二眼のLEDヘッドライトをむき出しにした面構えのストリートファイターモデルである。
スポーツモード時の最高速度は200km/h、フル充電時の航続距離は最大200km
電動バイクとはいえ、スタイリングは見てのとおり、従来のネイキッドバイクとほぼ変わりはない。唯一の大きな違いは、エンジンから伸びているはずのエキゾーストマフラーがないこと。そのためリア回りがとてもすっきりしている。
アンダーカウルの裏にも、本来そこにあるはずのギアボックスやクラッチがない。パワーユニットは永久磁石式AC(PMAC)油冷モーターで、最高出力は80kW(約109馬力)、最大トルクは180Nm。さらに、最高出力107kW(約145馬力)、最大トルク200Nmを発揮する高性能モデルも存在し、リッターバイクに相当する。。
基本的に『EGO』のフレームとドライブトレインを受け継いでいるが、市販モデルのため、出力・トルクは『EGO』よりも少々抑えられている。
ライディングモードは、「アーバン」「エコ」「レイン」「スポーツ」の4つ。ライドバイワイヤシステムですべてが調整され、ライダーの思うままの走りを実現してくれるという。
気になる航続距離は、フル充電した場合、平均速度80km/hで150km、サーキット走行時でも50kmは走行できるという。エコモードなら航続距離は200kmに伸び、スポーツモード時の最高速度は200km/hに達する。
バックして駐車できる『EVA』のすぐれもの機能「パーキングアシスタント」
電動バイクならではのうれしい装備が「パーキングアシスタント」だ。これは最大2.8km/hの出力で車両を後進させることのできる機能。パリやミラノといった大都市では、バイクを駐車するスペースが限られており、アパートに通じる小道や庭に押し込むライダーが多い。
しかし、このパーキングアシスタントを使えば、車両にまたがったまま、足で地面を蹴らずともバックができる。そのため腕力と脚力のない女性でも楽に出し入れが可能となるのだ。
ラインナップは標準モデルの『EVA』と『EVA ESSEESSE9(エセッセ9)』の2タイプ。『エセッセ9』はソフトタッチシートに丸型のフルLEDヘッドライトを装備するなど、ヴィンテージイメージのモデルとなっている。
価格は約375万円、近い将来『AKIRA』に登場した金田のバイクが登場する!?
エネルジカのディーラーは現在のところ、ヨーロッパと北米にしかなく、日本での取り扱いや価格は不明。北米での『EVA』の価格は3万4000ドル(約375万円)からとなっている。
『EVA』の登場によって、漫画や映画の世界にしか存在しなかった電動バイクが、ついに現実のものとなった。これなら世界のバイクメーカーを震撼させた排ガス規制「EURO4」など、どこ吹く風で、EURO6もまったく関係ない。
きっと近い将来、近未来を描いたSF漫画『AKIRA』や映画『TORON』に登場したスタイリッシュな電動バイクも出てくるに違いない。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Electrica Motor Company S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)