editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第45回 | 大人ライダー向けのバイク

エネルジカEVA──電動ストファイが誘うAKIRAの未来

自動車の世界では今、電動化が急速に進行中だ。メルセデス・ベンツやBMWはEVブランドを持ち、国内でも日産が大量生産型のEVを発売している。しかし、電動の二輪となると話は別。スクーターや小型バイクにもまだ種類が少なく、ストリートファイターにいたっては、知る限り市販モデルは世界にひとつしか存在しない。その希少な一台とは、イタリアの電動バイクメーカー、エネルジカの『EVA(エヴァ)』。2019年に開幕する「MotoE ワールドカップ」で使用されるワンメイクマシンの市販バージョンである。

イタリア初の電動バイクメーカーが生んだ電動ストリートファイター『EVA』

世界最高峰のバイクレースといえば、もちろんMotoGPだ。四輪のF1グランプリにあたる世界選手権シリーズで、ライダーなら一度はテレビの画面などを通じてレースを見たことがあるだろう。さらに、電動フォーミュラカーにもフォーミュラEという世界選手権シリーズがある。

では、電動バイクレースの最高峰はいったいなにか? じつは、2019年に電動バイクの世界選手権シリーズ「MotoE ワールドカップ(正式名称はFIM Enel MotoE World Cup)」が開幕するのだ。レースは『EGO(エゴ)』という電動スーパースポーツのみのワンメイクで行われ、排気音のしない静かなパワーユニットながら、最高速度240km/hの烈風レースを展開するという。

『EGO』を開発したのは、イタリアのモデナ近郊、自動車関連産業の集積地として知られるモーターヴァレーに本拠地をおくエネルジカ・モーターカンパニー。Moto2、Moto3マシンの製作をはじめ、フェラーリのF1マシンの部品製作も手がけるCRPグループの子会社だ。イタリア初の高性能電動バイクメーカーであり、新時代を創り出すイノベーターとしても注目を集めている。

このエネルジカ社が今から4年前、EICMA (ミラノショー)2014で市販モデルとして発表したのが『EVA』だ。『EGO』のカウルを取り外し、二眼のLEDヘッドライトをむき出しにした面構えのストリートファイターモデルである。

スポーツモード時の最高速度は200km/h、フル充電時の航続距離は最大200km

電動バイクとはいえ、スタイリングは見てのとおり、従来のネイキッドバイクとほぼ変わりはない。唯一の大きな違いは、エンジンから伸びているはずのエキゾーストマフラーがないこと。そのためリア回りがとてもすっきりしている。

アンダーカウルの裏にも、本来そこにあるはずのギアボックスやクラッチがない。パワーユニットは永久磁石式AC(PMAC)油冷モーターで、最高出力は80kW(約109馬力)、最大トルクは180Nm。さらに、最高出力107kW(約145馬力)、最大トルク200Nmを発揮する高性能モデルも存在し、リッターバイクに相当する。。

基本的に『EGO』のフレームとドライブトレインを受け継いでいるが、市販モデルのため、出力・トルクは『EGO』よりも少々抑えられている。

ライディングモードは、「アーバン」「エコ」「レイン」「スポーツ」の4つ。ライドバイワイヤシステムですべてが調整され、ライダーの思うままの走りを実現してくれるという。

気になる航続距離は、フル充電した場合、平均速度80km/hで150km、サーキット走行時でも50kmは走行できるという。エコモードなら航続距離は200kmに伸び、スポーツモード時の最高速度は200km/hに達する。

バックして駐車できる『EVA』のすぐれもの機能「パーキングアシスタント」

電動バイクならではのうれしい装備が「パーキングアシスタント」だ。これは最大2.8km/hの出力で車両を後進させることのできる機能。パリやミラノといった大都市では、バイクを駐車するスペースが限られており、アパートに通じる小道や庭に押し込むライダーが多い。

しかし、このパーキングアシスタントを使えば、車両にまたがったまま、足で地面を蹴らずともバックができる。そのため腕力と脚力のない女性でも楽に出し入れが可能となるのだ。

ラインナップは標準モデルの『EVA』と『EVA ESSEESSE9(エセッセ9)』の2タイプ。『エセッセ9』はソフトタッチシートに丸型のフルLEDヘッドライトを装備するなど、ヴィンテージイメージのモデルとなっている。

価格は約375万円、近い将来『AKIRA』に登場した金田のバイクが登場する!?

エネルジカのディーラーは現在のところ、ヨーロッパと北米にしかなく、日本での取り扱いや価格は不明。北米での『EVA』の価格は3万4000ドル(約375万円)からとなっている。

『EVA』の登場によって、漫画や映画の世界にしか存在しなかった電動バイクが、ついに現実のものとなった。これなら世界のバイクメーカーを震撼させた排ガス規制「EURO4」など、どこ吹く風で、EURO6もまったく関係ない。

きっと近い将来、近未来を描いたSF漫画『AKIRA』や映画『TORON』に登場したスタイリッシュな電動バイクも出てくるに違いない。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Electrica Motor Company S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Energica Eva オフィシャル動画
ピックアップ
第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
ピックアップ

editeur

検索