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第44回 | 大人ライダー向けのバイク

KTM 300 EXC TPI──エンデューロ最強マシンに挑戦せよ

砂地に岩場、泥地から倒木まで、走りのシーンが次々と変化していくクロスカントリー「エンデューロ」。ときには垂直に近い崖さえも豪快に駆け上がる。このエンデューロレースにおいて、ひときわカン高い排気音を響かせ、砂塵を巻き上げて軽々と崖を登っていくマシンがある。オーストリアに本拠をおくオートバイメーカー、KTM(ケーティエム)のレーサーだ。そして今、その道のライダーのあいだで大きなニュースとなっているのが、『300EXC TPI』と『300EXC TPI SIX DAYS』の2台。公道走行不可の競技専用マシンである。

世界初の2ストローク燃料噴射システムを搭載するKTMのエンデューロマシン

KTMのEXCシリーズは、2016年にオールニューとなって登場した新世代のエンデューロマシン。これに続いて2017年に導入されたのが、オフロードの市販車として世界初の2ストローク燃料噴射システムを搭載したパワーユニットを持つ「EXC TPI」だ。

その衝撃の余韻が残るなかで、KTMは今回、MY(モデルイヤー)2019として排気量を拡大した300ccモデルを発表。それが競技専用車の『300 EXC TPI』と『300 EXC TPI SIX DAYS』である。『300 EXC TPI』は6月から日本でも発売され、『300 EXC TPI SIX DAYS』も11月に発売予定だ。

2ストローク最大排気量となる300ccモデルの日本導入を待ち望むライダーも多かったと思われるだけに、満を持しての上陸といっていいだろう。

燃料消費を低減させる「TPI」の搭載で、4ストロークのライバルに打ち勝つ

300cc 2ストロークモデルの『300 EXC TPI』は、その名のとおり、抜群のパワーとトルクを発揮する燃料注入システム「TPI(トランスファー・ポート・インジェクション)」を搭載する。それにより、複雑な構造の4ストロークライバルに打ち勝てる一台となった。

エンデューロは、レーサーといえども良好な燃料消費が求められる競技だ。これまで2ストロークエンジンはその点において不利とされていた。しかし、『300EXC TPI』は、2つのインジェクターからポートに燃料噴射を行う特許取得済みのEFIシステムにより、燃料消費も大幅に低減させている。当然、面倒なキャブレターの調整も不要だ。

また、WP(ホワイトパワー)のフォークと新設計ピストンのリアショックの絶妙なセッティングによって、足回りも申し分ない仕上がりとなった。車体には新しいグラフィックとシートカバーをまとい、“エンデューロ最強マシン”のひとつとして、一目置かれる存在となっている。

パリダカ以上に過酷なエンデューロレース“SIX DAYS”仕様のモデルイヤー

『300 EXC TPI SIX DAYS』も、同じくTPIを搭載する300ccの2ストロークエンジン。しかし、こちらは“SIX DAYS”モデルだ(メイン写真と下の写真)。

SIX DAYSとは、ISDE(インターナショナル・シックスデイズ・エンデューロ)という6日間連続で行われる世界最大のエンデューロレースのこと。その過酷さはパリ・ダカール・ラリー以上で、真のサバイバルレースといわれる。なにしろ、6日間で1000km以上を走破するにもかかわらず、マシンには出場選手しか触ることができないルールとなっているのだ。

つまりライダーには、単にマシンを速く走らせるだけでなく、車両の整備や修理を短時間で的確に行う技術も求められる。メカニックのサポートが受けられない以上、ライダーは睡眠時間を削って車両の整備や修理をしなければならない。人間の耐久レースでもあるのだ。下のリンクの動画は、2015年にスロバキアで開催されたISDEでのKTMチームのハイライトである。

KTMでは、自社のエンデューロレーサーがISDEで数々の優秀な成績を収めていることから、毎年SIX DAYSモデルを登場させている。もちろん、過酷な条件でもパフォーマンスを発揮するように設計されたモデルだ。

たとえば、新設計のプリロードアジャスターつきWP製Xplor48倒立フォークに、頑強な造りのソリッドリアディスクブレーキ、より効果的になったガード類など、走るために必要なパワーパーツを装着した特別仕様となっている。

また、レースの開催国に合わせたイメージグラフィックも毎年取り入れている。2018年のISDEは、南米チリのビーニャデマールで11月12日〜17日の日程で開催される。そのため、2019年型のSIX DAYSモデルには、青・白・赤のチリ国旗に合わせたチリグラフィックが採用された。

『300 EXC TPI』の価格は109万円、ただし競技専用車なので公道走行は不可

車両のメーカー希望小売価格は、『300 EXC TPI』が109万円、『300 EXC TPI SIX DAYS』が122万円(いずれも税込み)。

前述したように、『300 EXC TPI』は6月から日本でも販売が開始され、『300 EXC TPI SIX DAYS』も11月から発売予定だ。しかし、念のためにもう一度言っておくと、どちらも競技専用車のため、公道を走行することはできない。

エンデューロ界の最強マシンにまたがるには、それ相応の腕と度胸が必要となる。KTMレーサーは挑戦者を求めているぞ。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C)KTM Sportmotorcycle AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
ISDE Highlights Slovakia 2015 | KTM
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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