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第43回 | 大人ライダー向けのバイク

BMW F850GS──冒険好きのライダーたちよ、旅に出よう

BMWモトラッドのGSシリーズは、冒険好きのライダーを、そしてBMWのファンを世界中に増やした立役者である。モデル名の末尾につくGSは「ゲレンデ・シュポルト」の略。オフロードからオンロードまで、走る場所を選ばない真のデュアルパーパスマシンであることを意味する。なかでも、『F800GS』と『F700GS』はシリーズの中核を担い、次世代BMWのミドルクラスの旗手というべきモデルだ。その2台が10年ぶりにフルモデルチェンジをはたした。

手ごろな価格と財布にやさしいランニングコストの『F800GS』と『F700GS』

アドベンチャーマシンの雄であるBMWモトラッドのGSシリーズ。そのミドルクラスとなるのが、2007年にデビューした並列2気筒エンジン搭載の『F800GS』と『F700GS』だ。

両モデルともに、ヨーロッパのライダーにとって手ごろな車体価格と財布にやさしいランニングコスト(任意保険料)から、大ヒット作となっている。

デビューからちょうど10年がたち、そろそろフルモデルチェンジのタイミングだったのだろう。
ニューモデルとなった『F800GS』『F700GS』が2017年11月のミラノショーでワールドプレミアされると、日本でも2018年3月の大阪モーターサイクルショーで実車が初公開された。

モデルチェンジした『F850GS』は、オフロードでの走行性能がより強化され、『F750GS』はさらに扱いやすさを追求している(メイン写真と下の写真は『F850GS』)。

違いはパワーとトルク、排気量が850ccと750ccの兄弟車と考えるのは間違い

『F850GS』と『F750GS』。国産バイクの感覚でいうと、そのモデル名から排気量が850ccと750ccの兄弟モデルと認識しがちだが、それは間違い。先代モデルと同様に、じつは排気量は同じながら、最高出力・最大トルクが異なる2台なのだ。

パワーユニットは『F850GS』『F750GS』ともに共通で、逆回転の270度クランクを採用する排気量853ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒新型エンジンを搭載する。しかし、パワーとトルクは大きく違う。

『F850GS』の最高出力は70kW(95ps)/8250rpm、最大トルクは92Nm(9.3kgf・m)/6250rpm。一方、『F750GS』の最高出力は57kW(77ps)/7500rpm、最大トルクは83Nm(8.4kgf・m)/6000rpm。このように、コンピュータプログラムによって、出力とトルクに差別化をはかっているのだ。もちろんプログラムの変更はできない。

最高出力が95馬力に抑えられているのは、ヨーロッパの任意保険制度をかんがみてのこと。排気量600ccを超えると保険料が高くなり、さらに最大出力25kW(34ps)、72kW(98ps)などを境目に保険料が高くなるという。

スタイリングは両モデルともほぼ共通だ。LEDの異形ヘッドライト、そしてフロントノーズからタンクサイドカバーへと流れるラインは、先代モデルを踏襲しつつ、さらに現代的なスタイリングとなり、「GSファミリー」であることを主張する。

「エンデューロ・プロ」が使える『F850GS』のオプションは絶対に選択すべき

『F850GS』の特徴は、最高レベルのオフロード性能を組み合わせていることだ。フロントタイヤは21インチホイールを採用し、さらにパイ43mmの倒立フロントフォーク(204mmのストローク)を装着。石畳の道だけでなく、不整地での走破性も増している。

また、6.5インチのフルカラーTFTディスプレイを新たに採用。スマートフォン用アプリの「BMWモトラッド コネクティッド」によってさまざまなアクティビティが提供される。これはライダーにとって涙ものの装備で、これを使いこなしたいがために旅に出るライダーが続出するほどの品だ。

ライディングモードは「レイン」「ロード」のほか、オプションとして「ダイナミック」「エンデューロ」、オフロード用タイヤ装着前提の「エンデューロ・プロ」の3モードが選択できるという(コーディングプラグ装着が必要)。このオプションは絶対選ぶべきだろう。

『F750GS』は、オフロード性能よりもオンロードをメインとした装備で、高速道路を使ってのロングツーリングに、そして買い物の足にと、オールラウンドでその真価を発揮するモデルとなっている。

低めのシート高(815mm)に、フロント19インチのホイール、パイ41mmの正立タイプのフロントフォークを装着し、国境をまたぐ峠越えでも安心・安全のライディングが可能。6.5インチのTFTフルカラーディスプレイを標準装備し(スタンダードモデルを除く)、ライディングモードも採用している。

『F850GS』は見栄や憧れで乗るのではなく、腕前を知るライダーが選ぶバイク

『F850GS』と『F750GS』は、群雄割拠状態にあるミドルクラスのアドベンチャーモデルにおいて、その頂きを目指すニューモデルだ。見栄や憧れで乗るのではなく、自分の腕前を知っているライダーが選ぶバイクといえるだろう。

日本国内での価格、発売時期ともに未定。しかし、ヨーロッパではすでにカタログに載っていて、『F850GS』が1万1700ユーロ(約153万円)、『F750GS』は9150ユーロ(約119万円)となっている(為替レートは2018年7月21日現在)。両モデルが日本国内でデビューするのも時間の問題ではないだろうか。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
BMW F 750 GS and BMW F 850 GS オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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