手ごろな価格と財布にやさしいランニングコストの『F800GS』と『F700GS』
アドベンチャーマシンの雄であるBMWモトラッドのGSシリーズ。そのミドルクラスとなるのが、2007年にデビューした並列2気筒エンジン搭載の『F800GS』と『F700GS』だ。
両モデルともに、ヨーロッパのライダーにとって手ごろな車体価格と財布にやさしいランニングコスト(任意保険料)から、大ヒット作となっている。
デビューからちょうど10年がたち、そろそろフルモデルチェンジのタイミングだったのだろう。
ニューモデルとなった『F800GS』『F700GS』が2017年11月のミラノショーでワールドプレミアされると、日本でも2018年3月の大阪モーターサイクルショーで実車が初公開された。
モデルチェンジした『F850GS』は、オフロードでの走行性能がより強化され、『F750GS』はさらに扱いやすさを追求している(メイン写真と下の写真は『F850GS』)。
違いはパワーとトルク、排気量が850ccと750ccの兄弟車と考えるのは間違い
『F850GS』と『F750GS』。国産バイクの感覚でいうと、そのモデル名から排気量が850ccと750ccの兄弟モデルと認識しがちだが、それは間違い。先代モデルと同様に、じつは排気量は同じながら、最高出力・最大トルクが異なる2台なのだ。
パワーユニットは『F850GS』『F750GS』ともに共通で、逆回転の270度クランクを採用する排気量853ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒新型エンジンを搭載する。しかし、パワーとトルクは大きく違う。
『F850GS』の最高出力は70kW(95ps)/8250rpm、最大トルクは92Nm(9.3kgf・m)/6250rpm。一方、『F750GS』の最高出力は57kW(77ps)/7500rpm、最大トルクは83Nm(8.4kgf・m)/6000rpm。このように、コンピュータプログラムによって、出力とトルクに差別化をはかっているのだ。もちろんプログラムの変更はできない。
最高出力が95馬力に抑えられているのは、ヨーロッパの任意保険制度をかんがみてのこと。排気量600ccを超えると保険料が高くなり、さらに最大出力25kW(34ps)、72kW(98ps)などを境目に保険料が高くなるという。
スタイリングは両モデルともほぼ共通だ。LEDの異形ヘッドライト、そしてフロントノーズからタンクサイドカバーへと流れるラインは、先代モデルを踏襲しつつ、さらに現代的なスタイリングとなり、「GSファミリー」であることを主張する。
「エンデューロ・プロ」が使える『F850GS』のオプションは絶対に選択すべき
『F850GS』の特徴は、最高レベルのオフロード性能を組み合わせていることだ。フロントタイヤは21インチホイールを採用し、さらにパイ43mmの倒立フロントフォーク(204mmのストローク)を装着。石畳の道だけでなく、不整地での走破性も増している。
また、6.5インチのフルカラーTFTディスプレイを新たに採用。スマートフォン用アプリの「BMWモトラッド コネクティッド」によってさまざまなアクティビティが提供される。これはライダーにとって涙ものの装備で、これを使いこなしたいがために旅に出るライダーが続出するほどの品だ。
ライディングモードは「レイン」「ロード」のほか、オプションとして「ダイナミック」「エンデューロ」、オフロード用タイヤ装着前提の「エンデューロ・プロ」の3モードが選択できるという(コーディングプラグ装着が必要)。このオプションは絶対選ぶべきだろう。
『F750GS』は、オフロード性能よりもオンロードをメインとした装備で、高速道路を使ってのロングツーリングに、そして買い物の足にと、オールラウンドでその真価を発揮するモデルとなっている。
低めのシート高(815mm)に、フロント19インチのホイール、パイ41mmの正立タイプのフロントフォークを装着し、国境をまたぐ峠越えでも安心・安全のライディングが可能。6.5インチのTFTフルカラーディスプレイを標準装備し(スタンダードモデルを除く)、ライディングモードも採用している。
『F850GS』は見栄や憧れで乗るのではなく、腕前を知るライダーが選ぶバイク
『F850GS』と『F750GS』は、群雄割拠状態にあるミドルクラスのアドベンチャーモデルにおいて、その頂きを目指すニューモデルだ。見栄や憧れで乗るのではなく、自分の腕前を知っているライダーが選ぶバイクといえるだろう。
日本国内での価格、発売時期ともに未定。しかし、ヨーロッパではすでにカタログに載っていて、『F850GS』が1万1700ユーロ(約153万円)、『F750GS』は9150ユーロ(約119万円)となっている(為替レートは2018年7月21日現在)。両モデルが日本国内でデビューするのも時間の問題ではないだろうか。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)