editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第17回 | アストンマーチンの最新車デザイン・性能情報をお届け

DBSスーパーレッジェーラ──ライバルはフェラーリ

『DBSスーパーレッジェーラ』。歴史を紐解けば、その名前だけでアストンマーティンの頂きに位置するフラッグシップモデルであることがわかる。「DBS」も「スーパーレッジェーラ」も、アストンマーティンにとっては特別な称号だ。アストンマニアにとって、興奮が抑えられなかっただろう。実車のアンベール前からさまざまな憶測を生んだのもうなずける。そして今回、ついにその姿と実力が明らかになった。『DBSスーパーレッジェーラ』。アストンマーティン史上、最強クラスの獰猛なスペックを持ちながら、ため息が漏れる美しさを併せ持つ1台だ。

アストンマーティンの旗艦モデルに冠される『スーパーレッジェーラ』の名称

『DBS』の名が初めてアストンマーティンの歴史に刻まれたのは、50年以上も昔、1967年のことだ。フラッグシップとして5年間生産され、伝説の1台となった。

復活したのは、2007年。当時の頂点である『ヴァンキッシュ』の後継モデルとして発売され、映画『007 カジノ・ロワイヤル』に登場するボンドカーとしても話題を集めた。だが、5年後の2012年、やはり生産を終了。第二世代となった『ヴァンキッシュ』にその地位を譲ることとなった。

しかし、『DBS』は三度、降臨した。しかも、『スーパーレッジェーラ』の称号を携えて。

「レッジェーラ」はイタリア語で「軽量」の意味。『スーパーレッジェーラ』を直訳すると「超軽量」となる。アストンマーティンでは、『DB4』や『DB5』、『DB6』というフラッグシップモデルに冠された名である。

最高時速340km、スーパーGTカーと評するにふさわしい最速・最強スペック

『DBSスーパーレッジェーラ』は、『ヴァンキッシュ S』の後継とされ、シャーシは『DB11』と共有。エンジンも『DB11』と同じ5.2L V12ターボを搭載する。しかし、そのスペックは、最高出力725ps/6500rpm、最大トルク900Nm/1800-5000rpmと、アストンマーティン史上、最速で最強の数値を誇る。

0-100km/h加速は3.4秒足らず、最高時速が340kmと、まさにスーパーGTカーと評するにふさわしい。

この加速を実現させたのは、『スーパーレッジェーラ』の名が示す通り、軽量化だ。『DB11』で採用された最新世代の軽量接着固定アルミニウム構造をさらに進化させるとともに、カーボンファイバー製ボディパネルも広い範囲で採用した。乾燥重量は1693kgで、ベースモデルの『DB11』より72kgほど軽くなっている。

アクセルを踏み込むと、暴力的な加速とは裏腹に、その扱いやすさに驚くだろう。これは、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム=横滑り防止装置)やアクティブダンパー、トラクションコントロールを駆使した動力性能のたまものだ。スーパースポーツではなく、スーパーGT。恐ろしく速いが過激ではないセッティングは、本物を求める余裕ある大人にピッタリといえる。

切り裂いた風の流れが見えるような『DBSスーパーレッジェーラ』のデザイン

卓越した運動能力を有した一流アスリートの肉体は、ギリシャ彫刻のように美しい。競技に必要な筋肉だけをまとったシルエットは、ある意味、機能美といってもいい。『DBSスーパーレッジェーラ』のエクステリアも同じである。

ボディサイズは全長4712×全幅2146×全高1280mm。これは、『DB11』よりもフロントが10mm、リアが20mm広い。横幅が広くなり安定したスタンスを実現した。

フロントフェイスでは、ハニカム形状のフロントグリルやボンネット・ベントが、冷却性能を高めるとともに、スポーティーな印象を醸し出している。

リアは、小尻で引き締まった印象。特徴的な4本出しのテールパイプが目を引く。アクセルに応じて最適なエキゾーストノートを愉しむことができ、踏み込んだときには『DB11』より大きな音量で奏でられるという。

個人的に好きなのは、真横の形状だ。ボンネットが長く車高が低い、いわゆるクーペデザインだが、ボンネットからルーフへと上がり、ヒップにかけて流れるように下降していくデザインは、切り裂いた風の流れが見えるようである。

風という視点では、フロントスプリッターやリアディフューザー、リアウイングによって生み出されるダウンフォースもアストンマーティン最大。フロント60kg、リア120kg、合計180kgという数値は圧倒的だ。

『DBSスーパーレッジェーラ』は速いだけでなく、快適な装備も十分に備える

インテリアは、非常にスポーティーだ。ソフトレザーとアルカンターラを採用し、赤のステッチでアクセントを加えたシートが印象的。スポーツ走行時のホールド性と長距離走行時の快適性を両立させたという。

リアラゲッジはけっして広くはないが、女性と2人で行く数泊程度の旅行には十分対応できる。

標準装備では、キーレスエントリー、タイヤ空気圧モニタリング・システム、パーキング・ディスタンス・ディスプレイ付き360度カメラ、パーキング・アシストなどを搭載。車載のインフォテインメントシステムは、セントラル・ダイヤルを操作してLCDディスプレイで制御する。速いだけでなく、快適に運転するための装備も十分だ。

強力なライバルは、フェラーリのフラッグシップ『812スーパーファースト』

日本への導入はアナウンスされていないが、欧米での希望小売価格は、イギリスで22万5000ポンド(約3350万円)、ドイツで27万4995ユーロ(約3615万円)、アメリカで30万4995ドル(3430万円)となっている。日本でも3500万円前後といったところだろう。

スーパーGTセグメントは、プラミアムなライバルがひしめき合う。あえて強力なライバルを挙げるとすれば、フェラーリのフラッグシップクーペ『812スーパーファースト』がある。価格的にもスペック的にも、強く意識していることは間違いない。

アストンマーティン社長兼CEOのDr. アンディ・パーマーも、『DBSスーパーレッジェーラ』の発売について、「ブランドとしてスーパーGTセグメントの頂点に再び君臨することも意図しています」と公言している。次世代のアストンマーティンを牽引する役割を持った注目の1台だ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) ASTON MARTIN
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Aston Martin DBS Superleggera オフィシャル動画

ピックアップ
第20回 | アストンマーチンの最新車デザイン・性能情報をお届け

名門ラゴンダ復活──これがアストンの超高級電動SUVだ

アストンマーティンのEV(電気自動車)といえば、真っ先に思い浮かぶのは『ラピードE』だろう。2018年9月、ブランド初のEVとして発表された。これは、4ドアクーペのスポーツカー『ラピードS』のEVバージョンである。そして、アストンマーティンの動向に詳しい人なら、2018年のジュネーブモーターショーで発表された4人乗りリムジンのEV『ラゴンダ・ビジョン・コンセプト』も思い出すはずだ。あれから1年。今回のジュネーブではSUVのEVである『ラゴンダ・オールテレイン・コンセプト』が発表された。

かつての超高級車メーカー「ラゴンダ」が超ラグジュアリーな電動SUVとして復活

アストンマーティン『ラゴンダ』と聞いて、すぐにそのクルマを思い出せるのは、なかなかのカーマニアだ。同名で複数の車種がリリースされているが、最も有名なのは1974年から1990年まで製造されていた大型ラグジュアリーサルーンの『ラゴンダ』である。製造台数は1000台に満たず、日本で実車を目にした機会はかなり限定されたはずだ。

もともと『ラゴンダ』は、1906年に設立された超高級車メーカーだった。ル・マン24時間耐久レースで部門優勝した経験をもつ名門。戦前はベントレーに比肩するほどの存在として名を馳せた。アストンマーティン傘下となったのは1947年。その後、『ラゴンダ』の名は、アストンマーティンのモデルとして、『ラゴンダ ラピード』『ラゴンダ』など高級4ドアサルーンに採用された。近年では、2014年に限定150台で販売された『ラゴンダ タラフ』に約1億1500万円(現在の価格換算)という超高級価格がつけられ、話題となった。

それから4年。昨年のジュネーブモーターショーで、『ラゴンダ』はEVに特化した新しい超ラグジュアリーブランドとして復活した。そのときに発表されたのが、4人乗りのリムジン『ラゴンダ・ビジョン・コンセプト』だ。当時、「今後はクーペやSUVの構想もある」と報じられたが、今年3月に開催されたジュネーブモーターショー2019で、さっそくSUVタイプの『ラゴンダ・オールテレイン・コンセプト』がお披露目となった。

フロントシートが回転して後部座席と対面になる! 近未来的な室内は一見の価値あり

『ラゴンダ・オールテレイン・コンセプト』のデザインは、「スーパーヨットの世界から初期デザイン言語の一部を取り入れた」という。一見すると『ラゴンダ・ビジョン・コンセプト』の背を高くしたようにも見える。ボディラインはリアに向かって流れるような曲線を描き、優雅でありながら力強い。まさに、超ラグジュアリーSUVだ。

バッテリーを搭載したフロアは、高い剛性を実現するために車両後方にヒンジを備えたリアドアを採用。ドアは観音開きだ。またルーフが上に開き、乗降性を高めている。リアにはさらなる驚きがある。幅広いクラムシェルを持つリアハッチには、光源を隠した薄型のライトストリップを装備。LED光源が直接見えないように、下からの反射を利用した。

インテリアは落ち着いたダークカラー。シートは4座独立のキャプテンシートだ。自動運転中にはフロントシートをリアシート側に向けて回転させることが可能だという。室内はかなりすっきりとした印象で、ベントグリルやスピーカーなどは見当たらない。

次なる100年を見据えた7モデルのうちの一台。早ければ2020年に生産開始予定

2013年に創立100周年の節目を迎えたアストンマーティンは、現在、次なる100年のための「セカンドセンチュリープラン」を進めている。この計画にもとづき、今後7年で毎年一台ずつの新型車を登場させて7モデルの基本ラインナップを構築するという。

『ラゴンダ・オールテレイン・コンセプト』は、その第6モデルだ。今回はあくまでコンセプトカーとして発表されたが、すでに量産が視野に入っており、早ければ2022年にも生産が開始される。製造を担うのは、セント・アサン工場。英国ウェールズにあるアストンマーティン第二の生産拠点で、電動車両をメインとする工場だ。少し先の未来を示唆するアストンマーティンの超高級SUVのEV。市販されるとき、どのような仕上がりになっているかが楽しみである。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) ASTON MARTIN
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索