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第42回 | 大人ライダー向けのバイク

クラシック500ペガサス──これは男心をくすぐる!

ミリタリーとは、「軍隊の」「軍用の」といった意味を持つ複合語だ。狭義では陸軍のことを指す。ミリタリーものは、いつの時代も男心をくすぐり、さまざまなジャンルに多種多様なアイテムが存在する。しかし、ロイヤルエンフィールドが発表した『Classic 500 Pegasus』は、ミリタリーアイテムというより、むかし観た戦争映画に出てくる軍事車両そのもの。多くのミリタリーマニアを喜ばせている。

闘争心、機能美、頑丈さ…男がミリタリーアイテムに惹かれてしまう理由とは

男たちの多くは、半ば本能的にミリタリーものに惹かれてしまう。人間が根源的に持っている闘争心に関係しているのかもしれない。機能に徹したデザイン、耐久性の高さ、それらを含めた合理性は、軍用のアイテムならではのもの。いわばファッション性と対極にあるといえるだろう。

それは、ファッション業界でミリタリーがときおり思い出したように流行するのに対し、時計やカメラなどのガジェットではジャンルとして定着していることでもよくわかる。"ミリタリーの匂い" は、美しさや優雅さとは別世界のものなのである。

そのなかでも、ロイヤルエンフィールドが発表した限定モデル、『Classic 500 Pegasus (クラシック500ペガサス)』ほどミリタリーマニアを喜ばせるアイテムはないだろう。

世界最古のオートバイメーカーが送り出すミリタリー仕様の『クラシック500』

ロイヤルエンフィールドは、世界のモーターサイクル史に燦然と輝く由緒あるイギリスのメーカーだ。自転車用の部品製造から始まったその歴史は、現存するオートバイブランドでもっとも古い。最初のモデルを市場送り出したのは1901年。二度の大戦を乗り越え、その信頼性は名声となって世界中に浸透した。

しかし、経営は苦難の連続で、業績不振から1978年に一度は事業を閉鎖している。理由は、戦後の技術革命の波に乗り遅れたことによる開発不足、そして日本メーカーの台頭だ。1995年には、子会社だったインドの工場が「ROYAL ENFIELD」の商標を獲得し、同時に社名も変更。現在のロイヤルエンフィールドはアイシャー・モーターズを有するアイシャー・グループの傘下となり、名実ともにインドのメーカーになっている。

もっとも、20年前ならともかく、現在のインド製オートバイは工業力や開発技術において驚くほどの進歩を見せている。先進国から多くの技術者を招き、信頼性は劇的に向上。全モデルがヨーロッパの排ガス規制(EURO4)をクリアしている。それは、ABSを標準装備し、電子制御の燃料噴射も当たり前に備えられていることでもわかるだろう。電装部品の多くは日本製だ。

Pegasus 500, Flying Flea

モチーフはイギリス陸軍の空挺部隊「赤い悪魔」が大戦中に使用した軍事車両

『クラシック500ペガサス』は、レトロデザインの『クラシック500』をベースとするカスタムモデルだ。ミリタリー仕様として重要なのは、なんといってもカラーリングだろう。

ツヤ消しのアースカラーは3色を展開。いわゆる陸軍色の「バトルグリーン(ダークグリーン)」、砂漠色の「デザートストーム(サンドイエロー)」、そして空軍イメージの「スコードロンブルー(青灰色)」だ。このカラーリングは、タンクやフレームはもちろん、オイルタンク、サイドカバー、前後フェンダー、ライトケース、フォークカバーまで及んでいる。

情報は少ないが、どうやらこのモデルは、第二次世界大戦中に活躍したイギリス陸軍第16空中強襲旅団空挺部隊、通称「赤い悪魔」と呼ばれていたパラシュート連隊が使用していたロイヤルエンフィールドの軍用車両をモチーフとしているようだ。

車両後部には、往時を思わせるキャンバス製の大型サイドバックを装備。このサイドバッグとタンクには空挺部隊の赤いロゴマークがあしらわれている。タンクにステンシルで描かれた白い数字はシリアルナンバーで、一台一台すべて番号が違うという。

これで車両のどこかに部隊番号が記してあったら、雰囲気は完璧だ。

思わず泣けてくる! 古典エンジンである「OHVバーチカルシングル」を採用

エンジンはベースモデルと同じOHVバーチカルシングル。今の時代に古典的なエンジンであるOHVというバルブ方式を採用するだけでも泣けてくる。

しかもボアストロークは84×90mmというロングストロークで、そこから得られるパワーは最高出力20.3kw/5250rpm、最大トルク41.3Nm/4000rpmという期待通りのトルク重視型。ミッションはもちろんマニュアル5速である。

フレームは、アンダーパイプのないシングルダウンチューブのいわゆるダイヤモンドタイプ。フロントサスはスチールカバーのついたテレスコピックで、リアはもちろんツインショックタイプだ。

うれしいのはホイール径で、前後とも18インチになっている。そう、このルックスに17インチホイールは似合わない。スタータはセルとキックを併用し、メッキのかかった頑丈そうなキックペダルは誇らしげにも見える。

『クラシック500ペガサス』は世界限定1000台、日本での価格は80万9000円

『クラシック500ペガサス』は世界限定1000台の生産で、その内訳は本国インドが250台、イギリス190台。残り560台がそのほかの国の市場に割り当てられるという。

日本でも正規ディーラーの「ウイングフット」を通じて受注を入れることが可能で、車両価格は80万9000円(税込み)。ちなみに、日本では『クラシック500 ペガサス』ではなく、『Classic Military 500 EFI(クラシック ミリタリー500 EFI)』というモデル名が与えられている。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Royal Enfield
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Royal Enfield Classic 500 Pegasus オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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