闘争心、機能美、頑丈さ…男がミリタリーアイテムに惹かれてしまう理由とは
男たちの多くは、半ば本能的にミリタリーものに惹かれてしまう。人間が根源的に持っている闘争心に関係しているのかもしれない。機能に徹したデザイン、耐久性の高さ、それらを含めた合理性は、軍用のアイテムならではのもの。いわばファッション性と対極にあるといえるだろう。
それは、ファッション業界でミリタリーがときおり思い出したように流行するのに対し、時計やカメラなどのガジェットではジャンルとして定着していることでもよくわかる。"ミリタリーの匂い" は、美しさや優雅さとは別世界のものなのである。
そのなかでも、ロイヤルエンフィールドが発表した限定モデル、『Classic 500 Pegasus (クラシック500ペガサス)』ほどミリタリーマニアを喜ばせるアイテムはないだろう。
世界最古のオートバイメーカーが送り出すミリタリー仕様の『クラシック500』
ロイヤルエンフィールドは、世界のモーターサイクル史に燦然と輝く由緒あるイギリスのメーカーだ。自転車用の部品製造から始まったその歴史は、現存するオートバイブランドでもっとも古い。最初のモデルを市場送り出したのは1901年。二度の大戦を乗り越え、その信頼性は名声となって世界中に浸透した。
しかし、経営は苦難の連続で、業績不振から1978年に一度は事業を閉鎖している。理由は、戦後の技術革命の波に乗り遅れたことによる開発不足、そして日本メーカーの台頭だ。1995年には、子会社だったインドの工場が「ROYAL ENFIELD」の商標を獲得し、同時に社名も変更。現在のロイヤルエンフィールドはアイシャー・モーターズを有するアイシャー・グループの傘下となり、名実ともにインドのメーカーになっている。
もっとも、20年前ならともかく、現在のインド製オートバイは工業力や開発技術において驚くほどの進歩を見せている。先進国から多くの技術者を招き、信頼性は劇的に向上。全モデルがヨーロッパの排ガス規制(EURO4)をクリアしている。それは、ABSを標準装備し、電子制御の燃料噴射も当たり前に備えられていることでもわかるだろう。電装部品の多くは日本製だ。
モチーフはイギリス陸軍の空挺部隊「赤い悪魔」が大戦中に使用した軍事車両
『クラシック500ペガサス』は、レトロデザインの『クラシック500』をベースとするカスタムモデルだ。ミリタリー仕様として重要なのは、なんといってもカラーリングだろう。
ツヤ消しのアースカラーは3色を展開。いわゆる陸軍色の「バトルグリーン(ダークグリーン)」、砂漠色の「デザートストーム(サンドイエロー)」、そして空軍イメージの「スコードロンブルー(青灰色)」だ。このカラーリングは、タンクやフレームはもちろん、オイルタンク、サイドカバー、前後フェンダー、ライトケース、フォークカバーまで及んでいる。
情報は少ないが、どうやらこのモデルは、第二次世界大戦中に活躍したイギリス陸軍第16空中強襲旅団空挺部隊、通称「赤い悪魔」と呼ばれていたパラシュート連隊が使用していたロイヤルエンフィールドの軍用車両をモチーフとしているようだ。
車両後部には、往時を思わせるキャンバス製の大型サイドバックを装備。このサイドバッグとタンクには空挺部隊の赤いロゴマークがあしらわれている。タンクにステンシルで描かれた白い数字はシリアルナンバーで、一台一台すべて番号が違うという。
これで車両のどこかに部隊番号が記してあったら、雰囲気は完璧だ。
思わず泣けてくる! 古典エンジンである「OHVバーチカルシングル」を採用
エンジンはベースモデルと同じOHVバーチカルシングル。今の時代に古典的なエンジンであるOHVというバルブ方式を採用するだけでも泣けてくる。
しかもボアストロークは84×90mmというロングストロークで、そこから得られるパワーは最高出力20.3kw/5250rpm、最大トルク41.3Nm/4000rpmという期待通りのトルク重視型。ミッションはもちろんマニュアル5速である。
フレームは、アンダーパイプのないシングルダウンチューブのいわゆるダイヤモンドタイプ。フロントサスはスチールカバーのついたテレスコピックで、リアはもちろんツインショックタイプだ。
うれしいのはホイール径で、前後とも18インチになっている。そう、このルックスに17インチホイールは似合わない。スタータはセルとキックを併用し、メッキのかかった頑丈そうなキックペダルは誇らしげにも見える。
『クラシック500ペガサス』は世界限定1000台、日本での価格は80万9000円
『クラシック500ペガサス』は世界限定1000台の生産で、その内訳は本国インドが250台、イギリス190台。残り560台がそのほかの国の市場に割り当てられるという。
日本でも正規ディーラーの「ウイングフット」を通じて受注を入れることが可能で、車両価格は80万9000円(税込み)。ちなみに、日本では『クラシック500 ペガサス』ではなく、『Classic Military 500 EFI(クラシック ミリタリー500 EFI)』というモデル名が与えられている。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) Royal Enfield
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)