あのクルマは? ヘンリー王子とメーガン妃が乗り込んだ青いジャガーの正体
錚々たるゲストたちがウィンザー城内のセント・ジョージ礼拝堂に到着する様子から、マイケル・カリー主教による14分間に及ぶ説教、10万人以上の人々が駆けつけたウェディングセレモニー後のパレード…。あの世紀の大イベントには、印象的なシーンがいくつもあった。
しかし、少なからずクルマに興味を持つ者が目を奪われたのは、それらのセレモニーではない。
馬車に乗ってパレードを行ったヘンリー王子(結婚後の称号はサセックス公爵)とメーガン妃(同じくサセックス公爵妃)は、約800メートル離れた「フロッグモア・ハウス」で開かれるチャールズ皇太子主催のパーティーに出席するために、いったんウィンザー城に戻る。そして、ヘンリー王子はタキシード、メーガン妃はステラ・マッカートニーのシルククレープのハイネックドレスに着替え、英国らしいシルバーブルーのジャガーに乗り込むのだ。
助手席にメーガン妃を乗せてヘンリー王子が自らスポーツカーのステアリングを握る姿はこの日のハイライトといってよかった。ただ、あのジャガーはいったい…? ロイヤルウェディングを生中継で見ていたカーガイの興味は、おそらくその一点に注がれていたに違いない。
もっとも美しいスポーツカー、『Eタイプ』のパワーユニットを完全に電動化
クルマ好きなら、あの古いジャガーが『Eタイプ』であることはひと目でわかる。『Eタイプ』は1961年から1975年まで生産されていたロングノーズ・ショートデッキのスポーツモデルだ。そのエレガントなスタイリングから「もっとも美しいスポーツカー」との呼び声も高い。
ところが、青いジャガーはただの『Eタイプ』ではなかった。ケンジントン宮殿公式アカウントは、このクルマについて次のようにツイートしている。
「乗り込むのはシルバーブルーのジャガー『Eタイプ コンセプト ゼロ』。この自動車はもともと1968年に製造されたものですが、電気自動車に改造されています」
そう、ボディは「シリーズ1.5」と呼ばれる1968年型の『Eタイプ ロードスター』だが、搭載されていた直列6気筒エンジンは電気モーターに置き換えられている。つまり、完全に電動化された『Eタイプ』ということだ。
じつは、これはロイヤルウェディングのために特別に作られたクルマというわけではなく、ジャガーが2017年9月に『Eタイプ コンセプト ゼロ』として発表済みのモデルだ。しかも、左ハンドルであることを考えると、左側通行の英国ではなく、右側通行のアメリカなどに向けたモデルと考えられる。
製作したのはジャガー「クラシック・ワークス」、車両価格はおよそ4575万円!?
『Eタイプ コンセプト ゼロ』を製作したのは、ジャガーが2017年に10億円近い巨費を投じてオープンさせた「クラシック ワークス」。ヴィンテージカーのレストアやメンテナンスを行うSVO(スペシャルビークルオペレーションズ)の拠点である。
性能的には0-100km/hを5.5秒で駆け抜ける加速力を持ち、英国のタブロイド紙『デイリー・メール』によると、価格は35万ユーロ(約4575万円)。ヘンリー王子とメーガン妃が乗った車両は、この日のためだけにレンタルしたものだという。
ちなみに、『Eタイプ コンセプト ゼロ』に搭載されるバッテリーは40kWhで、航続距離は270km。一度の充電で走れる距離として長いとはいえないが、少なくともヘンリー王子が美しきプリンセスをパーティー会場のフロッグモア・ハウスに送り届けるには十分だったのだろう。
もしロイヤルウェディングを見逃した人がいるなら、下のBBCニュースの動画をチェックしてほしい。ふたりが『Eタイプ コンセプト ゼロ』に乗り込む様子を見ることができる。
Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Jaguar Land Rover Automotive PLC
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)