高級腕時計ブランド、カール・F・ブッフェラの最高級ドレスアップハーレー
カール・F・ブッフェラ(Carl F Bucherer)は、1888年にカール・フリードリッヒ・ブッフェラがスイスのルツェルンに創業した高級腕時計ブランドである。
ルーツは、時計と宝飾品を扱う名門販売店「ブッフェラ」。創業から30余年後の1919年、腕時計の販売で培った経験と審美眼を生かして文字盤にブッフェラの名前を入れたオリジナル高級腕時計の製作を開始し、その腕時計が評判を呼び、やがてスイス屈指のクロノメーターのメーカーに成長する。それが別ブランドとして立ち上げられた「カール・F・ブッフェラ」だ。
ブッフェラは現在もディーラーとして、ロレックス、ピアジェ、ショパール、IWCなどを扱っている。それゆえに、技術力や開発力で競ってきたほかの腕時計ブランドと比べると、企業としての成り立ちや存在感が異なるのも事実だろう。
そのブッフェラがなぜ最高級ドレスアップハーレーを作ったのか。
理由は明らかにされていないが、ラグジュアリーブランドにとって注目を集めることは極めて重要で、ブッフェラは高級宝飾品ディーラーとしての経験からその術も知っている。おそらく目的はそんなところにあるのではないだろうか。
有機体のような優雅な曲線を描くボディ、深海のみで輝く甲殻類のようなパーツ
まずは『Harley-Davidson BLUE EDITION』の美しいボディと各部に見入ってほしい。
ボディは、フロントホイールからタンク、シート、リアホイールまで有機体のような優雅な曲線を描き、エンジンとその周辺のパーツ類は深海のみで輝く甲殻類のようだ。モーターサイクルでありながら、汚れた外気にさらすのが憚られると感じさせるほど美しい。
車両全体を青く輝かせているのは、特殊なシルバープレーティング(銀メッキ)だ。ひと口にメッキといっても、対象となる素材や、加工に使われる薬液の調合、作業工程中の温度変化によって仕上がりは微妙に異なってしまう。タンクやフレームなどの大きなパーツはかえって目立たないが、細いパイプや小さなパーツまで寸分違わぬ色調に揃えるのは、それこそ至難の業なのだ。
デザインのアクセントとなっているのは、ガーダーフォークのスプリングやヘッドライトハウジング。ネジ類にはローズゴールドメッキが施されている。
このドレスアップハーレーの製作には、8人のチームで計2500時間を費やしたという。もはや職人技の賜物というより執念といったほうがいいかもしれない。
タンク上のガラスドームに納められたオリジナル腕時計とダイヤモンドリング
極めつきはタンク上部の2つのガラスドーム型金庫だ。
右側のドームにはブッフェラのオリジナル腕時計、左には5.4カラットの立て爪のダイヤモンドリングが納められている。腕時計もリングも、このドレスアップハーレーのオーナーだけに与えられる限定品。ドーム型金庫には青色LEDで照らされながら展示品のように回転する仕掛けが施されている。
ほかにも青色LEDで照らされるものがある。透明なエアクリーナやエンジンサイドカバーの奥に見える、スロットルのバタフライバルブやドライブギアだ。つまり、実際にエンジンが回っている様子を外から見られるわけだが、それを耐熱LEDで照らしてしまおうという発想が大胆である。しかし、この車両にはこうした仕掛けが不思議とよく似合っている。
さらに、車両の各所にはダイヤモンドがちりばめられた。その数はじつに合計360個(33カラット)にもなるという。このゴージャスさだけでも話題となるには十分だろう。
『Bucherer Harley-Davidson BLUE EDITION』の価格はなんと約2億円!
ベース車両のハーレーダビッドソン『ソフテイルスリムS(FLSS)』についても触れておこう。
排気量はブッフェラの創業年に合わせて1888ccにアップされ、最高出力は100hp。車重は388kgだ。マキシマムスピードは188.8km/hとなっているが、これはさすがに出来すぎなので、おそらく計算値か目標値だろう。
おもな車両の改造はハーレーのカスタムメイドで知られるリヒテンシュタインのBündnerbike(ビュンデネルバイケ)が担当し、モデル全体の監修と装飾部分のみをブッフェラが担ったようだ。
『Bucherer Harley-Davidson BLUE EDITION』は、一般に販売される商品としてブッフェラのブランド公式サイトでも紹介されている。ちなみに価格は約177万ドル(約2億円)である。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) Bucherer AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)