editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第2回 | ホンダの最新車デザイン・性能情報をお届け

これはヤバすぎる!──シビックTYPE Rのピックアップ

1990年に登場したホンダのスーパースポーツ、初代『NSX』がドイツのニュルブルクリンク北コースで8分16秒のタイムを記録したとき、世界中が驚いたという。それから30年足らず。この初代『NSX』の記録を30秒も縮めたのが“FFのスーパーカー”とも呼ばれる『シビックTYPE R』だ。生産を行っているのはUKホンダ。そのUKホンダが『シビック タイプR』をピックアップトラックにカスタムした驚くべきコンセプトモデルを発表した。

ニュルのFF車最速タイムを持つ『シビック タイプR』がピックアップに!

CIVIC(シビック)とは「市民の」「都市の」という意味である。その名が示す通り、『シビック』はホンダを代表するコンパクトファミリーカーで、同社の歴史を語るうえで欠くことのできない存在だ。1970年に制定された悪名高きマスキー法(大気浄化法)をCVCCエンジンで真っ先にクリアし、ホンダの四輪車のなかで最初に北米市場に食い込んだ記念すべきモデルでもある。

とりわけ1983年に登場した通称“ワンダーシビック”と1989年のVTEC(ブイテック)採用モデルは『シビック』の名を一躍知らしめ、血気盛んな若者たちに絶大な人気を誇った。

『シビックTYPE R(タイプR)』は、『NSX-R』『インテグラ タイプR』に続くホンダ第三のRモデルとして、1997年に初代モデルが設定されたハイパフォーマンスカーだ。欧州車の多くが市販化前のテストを行い、また、そのタイムを競い合っているニュルブルクリンク北コースでFF車最速のタイムを持つ。2018年6月中旬には、ベルギーのスパ・フランコルシャンでも市販FF車最速のラップタイムを記録した(下の写真)。

その『シビック』が、『タイプR』が、まさかピックアップトラックになって登場するとは、いったい誰が想像できただろうか。

コードネームは“プロジェクトP”、『タイプR』の動力性能をそのまま継承

『タイプR ピックアップトラック』を製作したのは、イングランド南部にあるUKホンダのスウィンドン工場の精鋭チームで、コードネームは“プロジェクトP”。現行の5代目『シビック』の標準モデルが正式発表されたのがちょうど1年前の2017年7月だったので、製作期間もそれくらいと見ていいだろう。

このピックアップを「カッコいいだけのトラック」と侮ってはいけない。アメリカホンダには『リッジライン』という中型ピックアップがあるが、もちろんそれと同列に考えるのも間違いだ。シャレで作ったファニーカーなどではないのである。

『タイプR』は新開発の2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、最大出力320psを発生。最高速度は165mph(265.5km/h)を超え、0-100km/h加速は6秒を切る。このピックアップは、『タイプR』の動力性能をそのまま受け継いでいるのだ。

外観では、荷台のスペースを作るためにルーフのBピラーから後方を大胆にカット。ボディ剛性を確保するためにスポーツバー風の極太スチールパイプを装着した。カットされたリアフェンダーの上部は不自然さがないように見事に処理されている。

面白いのは、ハッチバックのテールゲート部分を生かし、その上部に大型のリアウイングを残していること。これによって独特なスタイリングが生まれ、ピックアップにもかかわらず、荷物の積み卸しはゲートを上に開いて行う。

UKホンダはニュルブルクリンクの「前輪駆動ピックアップ最速」挑戦も検討中

UKホンダのオフィシャルサイトには、「このプロジェクトはチームがクリエイティビティを示す素晴らしい機会でした。(中略)ニュルブルクリンクでも最速の前輪駆動ピックアップトラックを記録できるかどうかを検討しています」というプロジェクトリーダーによるコメントが掲載されている。

つまり『タイプR ピックアップトラック』は、ニュルブルクリンクでの「前輪駆動ピックアップ最速」を目指しているわけだ。ヨーロッパでは今、あらゆるセグメントのクルマがニュルの最速記録を競い合っているが、もしこのクルマがニュルを走れば、本当にピックアップ最速タイムを記録するかもしれない。

『タイプR ピックアップトラック』はワンオフのコンセプトモデルで、現時点では市販化の可能性は未知数としかいえない。とはいえ、現在の農業従事者人口がわずか1.2%程度(日本は3.7%)しかないイギリスにあっても、このクルマの反響の大きさは相当のもの。量産化への力強い働きかけになったのではないだろうか。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) HONDA MOTOR EUROPE
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
シビック TYPE R ニュルブルクリンクアタック ドキュメント動画
ピックアップ
第5回 | ホンダの最新車デザイン・性能情報をお届け

ホンダの電動化戦略に注目──Honda e、ついにデビュー

2017年の東京モーターショー。ホンダのブースでひときわ注目を集めたのが『Honda Urban EV Concept(ホンダ アーバン イーブイ コンセプト)』だ。可愛らしくて親しみやすく、どこか懐かしい感じがするのだが、なぜか近未来的な雰囲気を持ち合わせた一台だった。この『Urban EV Concept』を進化させた新型EVが『Honda e』。市販化を念頭に置いたプロトタイプとして、3月のジュネーブモーターショーで初お披露目となった。

『Honda e』は懐かしいのに新しい。ホンダが培ってきたスモールカーの知見を凝縮

なんとも愛らしいフォルムだ。それでいて、新しさも感じさせる。『Honda e』は、ホンダが初めてヨーロッパで販売するEVだ。プロトタイプではあるが、ほぼこのままの形で販売されることが予想される。

エクステリアでは、親しみやすさをシンプルかつクリーンに表現。ホンダがスモールカーで作り上げてきた走りの愉しさと愛着が伝わる。

フロントドアハンドルは欧州車に最近よく見られるポップアップ式。走行時はドアに収納されている。リアドアハンドルは、すぐには見つけられないかもしれない。よく見ると、ピラー内に埋め込まれており、なんともスタイリッシュだ。サイドミラーも廃し、カメラを利用した「サイドカメラミラーシステム」が採用された。これらの意匠により、全体に“塊感”のある雰囲気。ホンダいわく「シームレスなボディーデザイン」である。

インテリアには上質な素材を使用し、ラウンジのような心地良い空間を作り出した。インパネ周りはかなりスッキリとした印象を受ける。中央には直感的かつマルチタスクの操作が可能な大型ディスプレーが鎮座。コネクテッドサービスをはじめとする、さまざまな機能が使える。そして左右には、サイドカメラの映像が映し出されるモニターを設置している。後席には特筆すべき点はないが、シートベルトから想像すると2人がけだろう。

走行距離は200km、30分で80%の急速充電。都市で使いやすいEVコミューター

プラットフォームはEV専用に新開発された。その外観から、コンパクトなボディながらロングホイールであることがわかる。おそらく、街中での走りやすさを担保しつつ、高速道路などではしっかりとした直進安定性を実現することだろう。言い慣れた言葉を使えば、「取り回しの良さと走行性能が両立されたクルマ」といったところだ。

ユニークなのはリア駆動であること。モーターの設置場所は発表されていないが、フォルムから想像するとリア側の可能性が高い。そうなるとRR(リアエンジン・後輪駆動)となるわけだ。コンパクトモデルではかなりめずらしく、すぐに思い浮かぶのは第三世代のルノー『トゥインゴ』くらい。心なしか、フォルムも少し似ているような気がする。

モーターの出力やバッテリー容量も現時点では未発表だが、EVとしての性能は、走行距離200km以上を達成と発表されている。30分で80%までの充電が可能な急速充電にも対応しており、都市型コミューターとしての使い勝手に考慮した性能となっているようだ。

『Honda e』は今年夏に欧州の一部で販売開始。2020年には日本でも販売される?

ホンダが発表した「2019年ジュネーブモーターショー発信骨子」によると、「欧州における電動化をさらに加速させるため、2025年までに欧州で販売する四輪商品のすべてをハイブリッド、バッテリーEVなどの電動車両に置き換えることを目指す」という。

ハイブリッド車では、すでに今年初めに販売を開始した『CR-V HYBRID』があるが、EVでは『Honda e』が初となる。夏には欧州の一部の国で販売を開始するという。ホンダのEV戦略の尖兵になることは間違いないだろう。2020年に日本での販売も決定しているという一部報道もあり、日産『リーフ』一択の日本のEV市場が活性化するかもしれない。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Honda Motor Europe
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索