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第22回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

フェラーリSP38──見よ、これが跳ね馬の最新ワンオフ

『P4/5 ピニンファリーナ』『SP1』『P540 Superfast Aperta』『SUPER AMERICA 45』『SP12EC』『SP FFX』『F12 SP AMERICA』『F12 TRS』『458MM スペチアーレ』…。この車名にピンときたあなたは、立派なフェラリスタだ。これはすべて、世界に一台だけのフェラーリ。顧客のオーダーに応じてワンオフカーを手がける「ワンオフ・プログラム」で生み出された。そして今回、2016年に生産された『458MM スペチアーレ』以来、2年ぶりに唯一無二のフェラーリがお披露目された。『SP38』である。

ジェームズ・グリッケンハウスから始まったフェラーリのワンオフ・プログラム

ジェームズ・グリッケンハウスは、映画監督であり映画プロデューサーだが、カーガイにとっては、希代の自動車コレクターとしてのほうがなじみ深いだろう。フェラリスタなら、世界にたった一台のオーダメイドモデルを発注して注目された人物といえば、思い出してもらえるかもしれない。

そのクルマが『P4/5 ピニンファリーナ』だ。これをきっかけに、フェラーリは顧客のオーダーに応じてワンオフカーを手がける「ワンオフ・プログラム」をスタートさせた。その最新モデルとなるが『SP38』である。

『SP38』は、2015年登場の『488GTB』のシャーシとパワートレインをベースに開発されたロードゴーイングカー。もちろん、サーキット走行も念頭に置かれている。オーナーとなる顧客も開発に携わり、スタイリングをはじめ、インディビジュアルのカスタマイズをフェラーリとともに進めたという。

『308GTB』と『F40』からインスピレーションを受けた『SP38』のデザイン

ボディには『488GTB』の面影が残るが、デザインはまったくの新作だ。先細った鋭いフロントマスク、スリムなヘッドライトながら、前後のホイールアーチやヒップラインの膨らみはマッシブ。くだけた言い方をすれば細マッチョな印象を受ける。

このデザインを目にして、新しさとともに懐かしさを感じるのは、40代以上の世代かもしれない。『SP38』のデザインは、1975年から1985年まで製造された『308GTB』と、1987年にフェラーリが創業40周年を記念して製作した伝説のスペチアーレ、『F40』からインスピレーションを受けている。

『308GTB』は、『SP38』のベースモデルである『488GTB』もインスピレーションを得ていたのであまり驚きはないが、『F40』は故エンツォ・フェラーリが最後に新車発表を見届けた特別な一台。それだけに、どのように活かされているか期待が高まる。

3.9L V8ターボは『488GTB』への搭載時からどれくらい進化しているのか?

『308GTB』のモチーフは、おもにフロントサイドだ。特に「デイタイム ランニング ランプ(常時点灯型ライト)は、『308GTB』を参考にしてリップ部へと移されている。

『F40』のモチーフはリアサイドで顕著。大型のリアスポイラーは『F40』の象徴である大型ウイングを想起させる。また、テール周りを囲むようなスクエアなフレームも、どことなく『F40』のそれを思い起こさせる。3枚のカーボンからなる印象的なエンジンカバーも、『F40』のエンジンカバーのデザインを大胆にアレンジしたものだ。

『488GTB』は3.9L V8ターボエンジンを搭載し、最高出力670cv/8000rpm、最大トルクは760Nm(7ギア使用時)。これが『SP38』でどれだけ進化しているかは興味深いが、現時点で確実な数値が得られる情報はない。『408GTB』からの進化はないといった一部報道もあるが、その場合、最高速度330km/h、0-100km/h加速3.0秒を目安とした動力性能になるだろう。

世界にごく少数存在する超富裕層だけが手にできるフェラーリのワンオフモデル

情報が少ないのは、『SP38』がたったひとりの顧客のために製造されたワンオフモデルで、公表する義務がないからだ。もちろん、どういった人物が顧客なのかについても、まったく明かされていない。

もともとフェラーリには、ボディカラー、ストライプのデザイン、シートの素材まで、オーナーの好みに合わせて無限に近い選択肢を用意した「テーラーメイド・プログラム」がある。

無論、限られた富裕層だけが享受できるサービスだが、「ワンオフ・プログラム」はその次元をはるかに超えている。世界にごく少数だけが存在する、我々の想像を超えた超富裕層だけが恩恵に預かれるのだろう。もはや垂涎の気持ちさえ起きない一台だ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Ferrari 488 GTB オフィシャル動画
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第29回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

フェラーリP80/C──特注のサーキット専用スーパーカー

世界に一台だけのフェラーリを作るのは、コレクターにとって究極の夢だろう。それを叶えてくれるのが「フェラーリ・ワンオフ・プログラム」だ。元映画監督の自動車愛好家、ジェームス・グリッケンハウスが製作を依頼した『P4/5ピニンファリーナ』に始まり、フェラーリクラブ・ジャパン元会長がオーダーした『SP1』など、現在までに十数台のワンオフ・フェラーリが誕生している。そして先日、また一台、フェラリスタ垂涎のワンオフモデルが完成した。車名は『P80/C』。約4年の月日をかけて開発されたサーキット専用車だ。

依頼主はフェラーリ・コレクター。60年代のプロトタイプレーシングカーをオマージュ

『P80/C』をオーダーしたのは、フェラーリのエンスージアストの家に生まれ、自身も跳ね馬に対する深い知識と見識をもつフェラーリ・コレクターだ。オーナーの素性はそれ以外明かされていない。しかし、並外れた財力をもつ人物であることは間違いないだろう。

オーナーからの注文内容は、概ねこういうものだ。1966年の『330P3』、1967年の『330P4』、そして1966年の『ディーノ206 S』。これらのフェラーリから着想を得た現代版のスポーツプロトタイプを創造すること。つまり、伝説のプロトタイプレーシングカーをオマージュした、最先端で究極の性能をもったサーキット専用車を作るということである。

開発を担当したのは、チーフのフラビオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリングセンターと、エンジニアリングとエアロダイナミクス部門からなるチームだ。彼らが互いに協力し、オーナーと価値観を共有することで、世界に一台だけのフェラーリを作り上げた。製作期間は、じつに約4年間。これはワンオフ・フェラーリのなかで最長だという。

ベースモデルはレース車両の『488GT3』。自由な発想で作られたサーキット専用車

『P80/C』はガレージで鑑賞することを目的としたクルマではない。前述したとおり、往年のプロトタイプレーシングカーをモチーフにしたサーキット専用車だ。そのため、ヘッドライドは取り払われ、サーキット走行に必要なテールランプもリアセクションと一体化した独特の形状となっている。フェラーリの市販車は通常、丸型のテールランプをもつ。

ベースとなったのは、レース用車両である『488GT3』。エアロダイナミクスはベースモデルを踏襲しているが、『488GT3』のように「グループGT3」のレギュレーションに準拠する必要がないので、車体の各所に自由な発想が盛り込まれている。たとえば、なんとも大胆なリアの形状は2017年シーズンのF1マシンに採用された「T字ウイング」にヒントを得たもの。フロントリップスポイラーやリアのディフューザーなども『P80/C』のために専用設計された。それらにより、『488GT3』より空力効率がおよそ5%向上している。

エンジンフードのアルミ製ルーバーと凹型のリアウィンドウは、『330P3』『330P4』『ディーノ206 S』といったプロトタイプレーシングカーへのオマージュ。これらはひと目で『P80/C』とわかる特徴的なエクステリアだ。筋肉質なフェンダーが目を引くボディはカーボンファイバーで、フェラーリらしく「Rosso Vero」と呼ばれる赤で塗装された。

まるで戦闘機のコクピット。ロールケージ、6点式シートベルトを備えるインテリア

戦闘機のコクピットを思わせる室内にはロールケージが組み込まれ、インパネやステアリングには『488GT3』の面影を色濃く残している。しかし、ダッシュボードのサイド部分は専用デザインだ。バケットシートは鮮やかなブルー。素材については発表されていないが、アルカンターラと思われる。2座にはそれぞれ6点式シートベルトが装備された。

たったひとりのフェラーリ・コレクターのための作られたモデルなので、エンジンパワーなどのスペックは公表されていない。むろん価格もしかり。実車を目にする機会があるかどうかも定かではないが、どこかのコンクール・デレガンスでお披露目される可能性はある。いずれにせよ、間違いなくフェラーリの歴史に名を残す特別な一台となることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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