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第61回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

53シリーズとは何か──オールニューAMG CLSデビュー

メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスブランド、AMGの中核モデルにもハイブリッドが採用される時代がやってきたようである。1月にデトロイトでお披露目されたメルセデス・ベンツの新型『CLS』。この流麗な4ドアクーペに、メルセデスAMGによる「53シリーズ」が設定された。従来、AMGの上級車種では「63シリーズ」と「43シリーズ」が展開されてきたが、「53」は初めて導入される新しいシリーズ。いったい「63」や「43」と何が違うのか。それはパワートレインにマイルドハイブリッドシステムを採用したことにある。

大型高級車をパーソナルに乗り回したい富裕層のための流麗な4ドアクーペ

『CLS』はW211型の『Eクラス セダン』をベースに開発されたスタイリッシュな4ドアハードトップクーペである。初代モデルの登場は2005年。当初からAMGモデルがラインナップされ、その心臓部に搭載されていたのは5.5LのV8スーパーチャージドエンジンだった。

2代目は時代の要請を受け入れるかたちで大排気量エンジンのダウンサイジングをはかり、2012年にはワゴンモデルのシューティングブレークが、2015年には4気筒ディーゼルモデルがそれぞれ追加された。今回の新型『CLS』は3代目となる。

『CLS』のような4ドアクーペには、大型ラグジュアリーカーをパーソナルカーとして軽快に乗り回したい──という富裕層オーナーのニーズがある。同様のモデルには、ほかにもアウディ『A7スポーツバック』、BMW『6シリーズ グランクーペ』、フォルクスワーゲン『アルテオン』などがあるが、これらは『CLS』のヒットを受けて登場したものと考えていいだろう。

2代目に設定されていたAMGモデルは63シリーズの『CLS 63 S』と『CLS 63 S 4MATIC』。そして今回、新型『CLS』に導入されたのが、48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した53シリーズの『CLS 53 4MATIC+』である。


メルセデスの48Vマイルドハイブリッド「EQブースト」はいいことづくしだ

『CLS 53 4MATIC+』のパワーユニットは新開発の3.0L直列6気筒ターボエンジン。『CLS』をはじめ、『Eクラス カブリオレ』『Eクラス クーペ』の3タイプからなる53シリーズすべてにこのエンジンが搭載される。

最大出力435ps、最大トルク520Nmのスペック自体は、612psを発揮する4.0L V8ツインターボの『E63 S 4MATIC+』には及ばない。『E63 S 4MATIC+』は『Eクラス セダン』に設定されるAMGモデルで、メルセデス・ベンツのミッドクラスセダン最速とされるハイパフォーマンスカーだ。とはいえ、3.0L V6ツインターボを積む『E43 4MATIC』の401psは上回っており、53シリーズが63シリーズと43シリーズの中間に位置づけられていることがよくわかる。

最大の特徴は、「EQブースト」と名付けられた48Vマイルドハイブリッドシステムを採用していることだ。電動タービンとも呼べるEQブーストは、エンジンの低回転時から作動することでレスポンスを向上させ、回転数が高まったところで従来のタービンにバトンタッチする。この連携により、最大で250Nmものパワーアシストと少燃費を両立させる。燃費性能は、欧州複合モード燃費で11.5km/Lだ。

また、EQブーストは、エンジンルーム内でスペースをとってしまう直列6気筒エンジンの補機類を省スペース化し、慣性が増加しがちなフロントノーズ周りの重量配分の最適化もはかってくれる。まさにいいことづくしなのだ。

ヨーロッパの自動車メーカーではマイルドハイブリッドが流行し、最近のメルセデス・ベンツにもEQブーストを採用するモデルが増えているが、さもありなん。たしかにメルセデスを今買うならEQブースト搭載車を選びたくなる。

「4MATIC+」がつく車名でわかる通り、パワーを路面に伝えるのは「AMG Performance 4MATIC+」と「AMG SPEEDSHIFT TCT 9Gトランスミッション」。前者はメルセデス・ベンツ伝統の四輪駆動システムである「4MATIC(4マチック)」をより進化させたもので、“+”が付くゆえんである。


メルセデス・ベンツ最新の「プレデター・フェイス」となった新型『CLS 53』

エクステリアでは、ベースモデルのフルモデルチェンジに伴ってフロント部分のデザインが変更された。ノーズは、車両前部の上部分が長く、下部分が奥まった逆スラント形状。ヘッドライドはシャープに吊り上がり、メルセデス・ベンツがいうところの「プレデター・フェイス」を印象づけている。これは新型『Aクラス』にも採用されたブランドのデザイントレンドだ。

ツインブレードラジエターグリルや大きく開いたバンパーのインテークはAMGのデザインに則ったもの。リアには、控えめなカーボン製トランクスポイラーにマフラーエンドを取り巻くスタイルのディフューザー。マフラーエンドは真円タイプの4本出しである。もちろん、アーチを描くなめらかなルーフラインといった『CLS』ならではのスタイリングはそのままだ。



コクピットは、2つの12.3インチワイドスクリーンが水平方向に並んだ最近のメルセデス・ベンツでおなじみのスタイルだ。このディスプレイでは、エンジンパワー、トルク、ブースト値、タイヤのテンプ&プレッシャー(空気圧)などがリアルタイムで確認することができる。

室内の素材にはレザーとカーボンパネルを組み合わせ、そこへAMGらしくベンガルレッドのアクセントが添えられている。シートベルトやドアハンドルもレッド仕上げだ。インテリアカラーは、この「ブラック&ベンガルレッド」のほかに、「マキアートベージュ&マグマグレー」「エスプレッソブラウン&マグマグレー」のパターンもオーダーが可能。通常モデルと違い、エアコンのベンチレーターには航空機のエンジンを思わせる意匠が施されている。

また、ほかのAMGモデルと同じくショックアブソーバーの減衰をコントロールできる「AMG RIDE CONTROL」を搭載し、エアサスペンションとの組み合わせで「Comfort」「Sport」「Sport +」のドライブモードを選択可能。シチュエーションによって最適なドライビングを得ることができるわけだ。

メルセデスAMG『CLS 53』は、『Sクラス』並の安全機能や運転支援を装備

ハイパフォーマンスのAMGモデルとはいえ、最新のミッドクラスのメルセデスだけに『Sクラス』並の安全性能や運転支援システムも備えている。

アクティブブレーキアシスト、レーンキープアシスト、乗員保護システムの「PRE-SAFE」が標準装備され、さらに本国仕様では、オプションでクロストラフィックアクティブブレーキアシストやアクティブブラインドアシストなど、より先進的な運転支援システムも用意されている。ただし、ヨーロッパと日本では道路事情や交通ルールが違うので、チョイスできるかわからないが…。

価格は、ドイツ本国でのベースが8万4430ユーロ(約1070万円)。日本への導入時期はまだ未定だ。いずれにせよ、『Eクラス』をもっとパーソナルに、軽快に乗り回したいという富裕層には、上陸が待ち遠しい一台といえるだろう。


Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Mercedes-AMG CLS 53 4MATIC+ オフィシャル動画
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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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