デザインは往時のままに、ひと回り大きいサイズ感となった『モンキー125』
『モンキー』は、かつてホンダが運営していた遊園地の乗り物から誕生したレジャーバイクだ。当時のレジャーブームに後押しされるかたちで、まず1964年に輸出モデルとして製造され、1967年の国内販売時に初めて「モンキー」の愛称がつけられた。
初期モデルはサスペンションのないリジッドフレームで、タイヤ径はわずかに5インチ。まるでシートにタイヤとエンジンをつけたかのようなコンパクトさだった。
その後も進化と改良が重ねられ、さまざまな派生モデルが登場した。ホンダの歴史において『モンキー』は欠くことのできない存在であり、ヨーロッパの排ガス規制強化の影響によって2017年8月に生産販売を終了した際には、なんともいえない寂しさを感じたものだ。
しかし、東京モーターショー2017に125ccのコンセプトモデルを登場させてファンを驚かせると、その後、市販モデルとなる『モンキー125』が2018年7月から日本やヨーロッパで販売されることが正式発表された。
排気量が50ccから125ccとなったことで、サイズ感はひと回り以上大きくなった印象だ。しかし、往時を彷彿とさせるタンクやシートの形状、そしてポップなカラーリングなどはそのままとなっている。
「モンキーファンを裏切ってはいけない」というホンダの開発者の思い入れ
『モンキー125』は、贅沢にも前後のブレーキを油圧ディスクにし、フロントブレーキにはなんとABSの設定もある。フロントサスペンションは倒立式だ。見た目が旧モデルのフリクションダンパー式サスに似ているために採用したかどうかはわからないが、しっかり減衰力を得られるオイルダンパーとなった。
また、前後のフェンダーにスチールを採用し、メッキ仕上げにしたあたりにも、「モンキーファンを裏切ってはいけない」というホンダ側の強い思い入れがあったことがうかがえる(同じ125ccのホンダ『GROM』がベースになっているようだが…)。
最高出力は 6.9kW(9.4ps)/7000rpmで、最大トルクは11Nm(1.1kgm)5250rpm。タンデムも十分可能なパワーを得ているが、仕様は1人乗りだ。スタータもキックではなくセルのみとなっている。
もっとも目を引くのは細部の仕上げの美しさだ。ハンドルスイッチ、メーター類、ステアリングブラケット、配線の処理、マフラーエンドの形状などが現代のバイクのそれとなり、所有する満足感も格段に向上したといえる。
タイヤサイズが12インチ(F120/80-12、R130/80-12)と大きくなってしまったのは残念だが、これは全体のバランスから考えれば仕方ないところだろう。
原付一種よりも原付二種…市場ニーズに合わせた復活した「ニューモンキー」
じつは、東京モーターショー2017でコンセプトモデルとしてお披露目された当初、『モンキー125』はホンダ社内でも市販化を危ぶむ声が多かった。
おそらく、ショーでの反応や市場調査によって、販売すべきかどうかを推し測っていて、ホンダ側関係者も「50ccじゃないモンキーなんて」と、ファンから批判を受けるのを覚悟していたに違いない。
ところが、その予想に反して『モンキー125』の反応は上々だった。いや、拍手をもって迎えられたといっても言い過ぎではないかもしれない。
実際のところ、ヨーロッパの排ガス規制に対応するには高回転域を多用する小排気量ほど不利なわけで、それゆえの排気量アップだった。しかし、はからずも『モンキー125』は国内市場のニーズと合致していたようである。
ユーザーのニーズは現在、50cc未満の原付一種から125ccまでの原付二種に移りつつある。原付一種には30km/hの制限速度や二段階右折といったわずらわしさがあり、いまや原付二種でも保険は原付特約が使える。そうしたことから、販売実績も一種と二種が逆転する勢いなのだ。
『モンキー125』の価格は約39万円から約43万円、やや高いという印象も!?
カラーバリエーションは「パールネビュラレッド×ロスホワイト」と「バナナイエロー×ロスホワイト」の2色。ヨーロッパでは、これに「パールシャイニングブラック×ロスホワイト」を加えた3色が展開される。
価格は39万9600円。ABS装備車は3万2400円プラスの43万2000円となっている(いずれも税込み)。同クラスである『GROM』の35万1000円と比べると「少し高い」という印象だが、これは予想以上に開発費がかかってしまったということだろうか。
いずれにせよ、復活する「ニューモンキー」の発売が楽しみである。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) Honda Motor Europe
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)